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四章 夏本番、近付く距離
4‐03 相談
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「よ、相棒」
すると雅玖が片手を上げ、こちらに歩いてくるのが見えた。
「……まだ帰ってなかったのか」
帰りのホームルームが終わってからカバンを摑んでどこかへ向かったため、急ぎの用でもあるのかと思ったのだ。
「帰るって言ってないのに、お前のこと置いてくかよ。まぁちょっと呼ばれてな」
廊下で他の生徒と何やら話していたようで、わざわざ戻ってきてくれたらしい。
雅玖は龍冴の前の席へ座ると、背もたれに肘を載せながら言った。
「一昨日くらいから元気無いじゃん。なんかあった?」
「まぁ……な」
まさか自分の変化に気付かれるとは思わなくて、曖昧に微笑む。
同時に大和のことを言うか迷いつつも、他の友人よりもずっと敏い親友に最後まで隠し通せる自信はなかった。
「……実は」
「あ、もしかして熱でもあんのか?」
「ぶっ!?」
龍冴が口を開こうとすると同時に放たれた言葉に、思わず机に頭を打ち付けた。
ゴン、とあまりに派手な音を立て、遅れてじんじんと額が痛む。
「おいおい大丈夫かよ」
「誰のせい、で……」
痛む額を抑えながら、涙目で親友を睨んだ。
油断していたこちらが悪いが、またその言葉を聞くとは思わなくて、別の意味で泣きそうになる。
(そんなおかしいか……? いや自覚はあるけども)
身内ならばいざ知らず、多少仲良くなった相手からでも『何を考えてるか分かりやすい』と言われる。
元より嘘を吐けないため間違ってはいないのだが、こうも頻繁に似たような事があると色々と混乱しそうだった。
けれどおかしくなっている自覚は十二分にあり、龍冴はちらりと周囲を見回す。
まだちらほらと生徒が廊下を行き来しているのが見えて、小さく息を吐くと携帯を取り出した。
「えっと、な」
震えそうになる指先でメモアプリを開き、打ち込む。
『鷹月先輩のこと、好きになったかもしれない』
ややあって画面を見せると、その羅列に雅玖は軽く目を瞠った。
「それは、まぁ……」
どう言ったものか分からないといったふうで、それでもなんとか言葉にしようと唇を開いては閉じてを繰り返しているのが見えた。
『このあと一緒に帰るんだ。普通、後輩にこんなことすると思うか』
雅玖が言い淀む間を縫って、追加で打ち込む。
この男にはすべてを話してしまいたくて、頭で考えつつではあるが、多少の気まずさがあっても信頼出来る者に聞いて欲しかった。
この気持ちを一人で抱え込むには大き過ぎて、どこかで吐き出さねばどうにかなってしまいそうなのだ。
「……確かにあんまりそういうのはない、よな。でも俺が思うに、鷹月先輩は」
「なになにー」
「俺らに隠れてなぁにこそこそ話してんの、お二人さん!」
懸命に言葉を選んで紡ごうとしてくれている雅玖に被せるように、永睦と仁の声が大きく響いた。
二人の後ろには小柄な影があり、男子生徒──羚架が顔を覗かせていた。
すると雅玖が片手を上げ、こちらに歩いてくるのが見えた。
「……まだ帰ってなかったのか」
帰りのホームルームが終わってからカバンを摑んでどこかへ向かったため、急ぎの用でもあるのかと思ったのだ。
「帰るって言ってないのに、お前のこと置いてくかよ。まぁちょっと呼ばれてな」
廊下で他の生徒と何やら話していたようで、わざわざ戻ってきてくれたらしい。
雅玖は龍冴の前の席へ座ると、背もたれに肘を載せながら言った。
「一昨日くらいから元気無いじゃん。なんかあった?」
「まぁ……な」
まさか自分の変化に気付かれるとは思わなくて、曖昧に微笑む。
同時に大和のことを言うか迷いつつも、他の友人よりもずっと敏い親友に最後まで隠し通せる自信はなかった。
「……実は」
「あ、もしかして熱でもあんのか?」
「ぶっ!?」
龍冴が口を開こうとすると同時に放たれた言葉に、思わず机に頭を打ち付けた。
ゴン、とあまりに派手な音を立て、遅れてじんじんと額が痛む。
「おいおい大丈夫かよ」
「誰のせい、で……」
痛む額を抑えながら、涙目で親友を睨んだ。
油断していたこちらが悪いが、またその言葉を聞くとは思わなくて、別の意味で泣きそうになる。
(そんなおかしいか……? いや自覚はあるけども)
身内ならばいざ知らず、多少仲良くなった相手からでも『何を考えてるか分かりやすい』と言われる。
元より嘘を吐けないため間違ってはいないのだが、こうも頻繁に似たような事があると色々と混乱しそうだった。
けれどおかしくなっている自覚は十二分にあり、龍冴はちらりと周囲を見回す。
まだちらほらと生徒が廊下を行き来しているのが見えて、小さく息を吐くと携帯を取り出した。
「えっと、な」
震えそうになる指先でメモアプリを開き、打ち込む。
『鷹月先輩のこと、好きになったかもしれない』
ややあって画面を見せると、その羅列に雅玖は軽く目を瞠った。
「それは、まぁ……」
どう言ったものか分からないといったふうで、それでもなんとか言葉にしようと唇を開いては閉じてを繰り返しているのが見えた。
『このあと一緒に帰るんだ。普通、後輩にこんなことすると思うか』
雅玖が言い淀む間を縫って、追加で打ち込む。
この男にはすべてを話してしまいたくて、頭で考えつつではあるが、多少の気まずさがあっても信頼出来る者に聞いて欲しかった。
この気持ちを一人で抱え込むには大き過ぎて、どこかで吐き出さねばどうにかなってしまいそうなのだ。
「……確かにあんまりそういうのはない、よな。でも俺が思うに、鷹月先輩は」
「なになにー」
「俺らに隠れてなぁにこそこそ話してんの、お二人さん!」
懸命に言葉を選んで紡ごうとしてくれている雅玖に被せるように、永睦と仁の声が大きく響いた。
二人の後ろには小柄な影があり、男子生徒──羚架が顔を覗かせていた。
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