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四章 夏本番、近付く距離
4‐06 傷付くのは俺だけでいい
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一度トイレへ寄って口をゆすぐと、龍冴は昇降口へ向けて足早に廊下を歩いていた。
(やべぇ、絶対待たせまくってる!)
雅玖には後でメッセージを送ると言い、永睦と仁には試験が終わってからしっかりと灸を据えると言い残した。
『お、お手柔らかにお願いします……』
『ちょっと言っただけじゃん? けどまさか他の子達に言うとは思わなくてさぁ』
永睦はその場で土下座でもする勢いで許しを乞い、仁に至っては自分のした事から完全に開き直っていた。
互いに良いところも悪いところもあるが、今回ばかりは相手が悪くて中学の頃とは勝手が違うと思う。
永睦が噂好きなのは今に始まった事ではないが、あまり首を突っ込み過ぎると逆に災難が降りかかりそうなのだ。
現に永睦が椰一の噂を話した日から返信がなくなり、この二週間で完全に見限られたと言っても過言ではないだろう。
けれど近いうちに椰一から何かしらの反応があるとして、周囲の友人らに関わろうとするのは避けたい。
(俺には嫌がらせでもなんでもしていいのに)
自分一人が傷付いて友人らの平穏を守れるのならば、易いものだ。
しかし、友人の一人である──個性の強い友人らに埋もれているだけなのだが──羚架に手を出しそうになっているとあれば、また話は変わってくる。
羚架は傍目から見ても可愛らしくて、同性でも守ってあげたくなる部類だった。
本人は『この容姿で居て嫌な時期があった』と言っていたためか、親近感が湧いたというのもある。
もっとも、羚架の場合は同性が中心だったらしく、中でも屈強な者が多かったらしい。
女のような容姿が庇護欲を擽るのか、はたまた寄ってくる相手に変な趣味があるのか分からないが、苦労したのだという。
けれどその中の一人である男と最近まで付き合っていたようで、酷い暴力を受けていたらしい。
ただし、これは高校に入学する前の、ごく短い期間の出来事だったようだ。
羚架とあまり話した事がないのは否めないが、未だに同性であっても鍛えていたり高身長の人間に対して苦手意識があるようだ。
他のクラスに友人は居るようだが、休み時間に誰かと話しているのはあまり見なかった。
むしろ授業が終われば、そそくさと帰っているのが常なように思う。
「頼ってくれるのは嬉しいけど」
龍冴はぽつりと誰にともなく呟く。
ほとんど羚架の人間関係について知らないものの、まさか椰一が距離を詰めようとしているとは思わなかった。
「……胃が痛ぇ」
キリキリと胃が痛むのはつい先程まで吐き気があったからか、もしくは周囲から不穏な気配を感じ始めているからか。
考えるたびに胃の奥が気持ち悪く、ともすれば胸が痛む。
けれど大和を待たせているとあっては、己の体調や考え事など二の次になってしまうから不思議な気持ちだった。
(やべぇ、絶対待たせまくってる!)
雅玖には後でメッセージを送ると言い、永睦と仁には試験が終わってからしっかりと灸を据えると言い残した。
『お、お手柔らかにお願いします……』
『ちょっと言っただけじゃん? けどまさか他の子達に言うとは思わなくてさぁ』
永睦はその場で土下座でもする勢いで許しを乞い、仁に至っては自分のした事から完全に開き直っていた。
互いに良いところも悪いところもあるが、今回ばかりは相手が悪くて中学の頃とは勝手が違うと思う。
永睦が噂好きなのは今に始まった事ではないが、あまり首を突っ込み過ぎると逆に災難が降りかかりそうなのだ。
現に永睦が椰一の噂を話した日から返信がなくなり、この二週間で完全に見限られたと言っても過言ではないだろう。
けれど近いうちに椰一から何かしらの反応があるとして、周囲の友人らに関わろうとするのは避けたい。
(俺には嫌がらせでもなんでもしていいのに)
自分一人が傷付いて友人らの平穏を守れるのならば、易いものだ。
しかし、友人の一人である──個性の強い友人らに埋もれているだけなのだが──羚架に手を出しそうになっているとあれば、また話は変わってくる。
羚架は傍目から見ても可愛らしくて、同性でも守ってあげたくなる部類だった。
本人は『この容姿で居て嫌な時期があった』と言っていたためか、親近感が湧いたというのもある。
もっとも、羚架の場合は同性が中心だったらしく、中でも屈強な者が多かったらしい。
女のような容姿が庇護欲を擽るのか、はたまた寄ってくる相手に変な趣味があるのか分からないが、苦労したのだという。
けれどその中の一人である男と最近まで付き合っていたようで、酷い暴力を受けていたらしい。
ただし、これは高校に入学する前の、ごく短い期間の出来事だったようだ。
羚架とあまり話した事がないのは否めないが、未だに同性であっても鍛えていたり高身長の人間に対して苦手意識があるようだ。
他のクラスに友人は居るようだが、休み時間に誰かと話しているのはあまり見なかった。
むしろ授業が終われば、そそくさと帰っているのが常なように思う。
「頼ってくれるのは嬉しいけど」
龍冴はぽつりと誰にともなく呟く。
ほとんど羚架の人間関係について知らないものの、まさか椰一が距離を詰めようとしているとは思わなかった。
「……胃が痛ぇ」
キリキリと胃が痛むのはつい先程まで吐き気があったからか、もしくは周囲から不穏な気配を感じ始めているからか。
考えるたびに胃の奥が気持ち悪く、ともすれば胸が痛む。
けれど大和を待たせているとあっては、己の体調や考え事など二の次になってしまうから不思議な気持ちだった。
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