【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華

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五章 離れたくない、そう思った

5‐07 初めての感情

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(けどそうか、二人が……)

 ふと考えるのは、幸と雅玖の事だ。

 未だに幸とは少しギクシャクしているが、もはや過去の事は完全に吹っ切れたのか、楽しそうな雅玖を見ていると時々思う。

 こういうのを『幸せ』というのだと。

 もはや龍冴にとって縁の無いものになってしまったが、もう一度誰かを好きになって付き合ったら、と思うとその後が怖くなっている節があった。

 一番は嫌われる事が、そして愛想を尽かされて振られる事が何よりも怖い。

 思い思いにキッチンから持ってきたジュースを飲んでは菓子を摘みながら、龍冴はひっそりと心の中で呟く。

(鷹月先輩から返信、来ないかな)

 つい数日前、大和にメッセージを送った。

 久しぶり、という言葉から始めようとしたが、硬くなりそうな気がして『元気ですか』とだけ送信したのだ。

 以降は何をするでもなく、ただ待っている日々は少し窮屈で、ともすれば不安になってくる。

 椰一と付き合っている時も思ったが、どうやら自分から好きになった相手に対しては圧倒的に『待つ側』らしい。

 他の人間であればこうは思わず、むしろ待たせる側で申し訳なく思う時もあった。

 ──早く返信が欲しい、って思うのは相手の事が好きだからだよ。

 夏休みに入ってすぐ入院し、無事に手術が成功したらしい華月かげつに『おめでとう』と言った後に相談すると、そう返ってきた。

 以降は大和のことが──こちらの不用意な言葉で気まずくなる前より──気になってしまい、意を決して催促をしてみたのだ。

『時間が合えば話したいです』

 ぼんやりとメッセージアプリを開いても、また無意識に大和との会話履歴を開いても、既読はおろかなんの反応もない。

 自分が送った文面が物悲しく、そして催促をした日から丁度二日が過ぎていた。

 メッセージアプリを交換し、最後に大和から送られてきた日から数えて一ヶ月も経っていない。

 ここまで自分が文章一つでやきもきする事は、実のところあまりなかった。

 話す相手を無意識に選んでいるのか、メッセージアプリを交換してもすぐに会話が終わる場合がほとんどだったからだ。

 かすかな苛立ちこそあれ、待っている間はこうして過ぎていく時間すら惜しく思う。

 けれど短期間でいくつも催促をすると面倒がられるため、どう足掻いてもこちらが我慢するしかないのだ。

 そもそもこういう時の心情は、今の今まで自分が相手に与えてきたものに外ならない。

 待たせた相手に対してどういう態度を取ればいいのか、またなんと返すのが正解かはよく知っている。

 けれど待つ側になるとその経験も無いに等しく、感情とは逆の事をしようとしてしまうのが虚しい。

 だから何も反応できず、良い文面を考えても『面倒な男』という言葉がまとわりつき、結果的に堂々巡りになってしまうのだが。
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