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五章 離れたくない、そう思った
5‐09 真意を知りたい
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「んー、俺の予想だけどいい?」
すると永睦が小さく手を上げ、神妙な顔付きで口を開いた。
龍冴がかすかに頷くのを見ると、『多分だけど』と前置きする。
「寂しいからだと思うんだよな」
「は……?」
「寂しがりで性欲高い、って言われてるウサギが言っても説得りょ……モゴゴッ!」
仁が間に入ろうとしたため、龍冴は素早く口を塞ぐと震えそうな唇をゆっくりと動かす。
「だから誰かに愛されたいって? 告白した言葉が嘘で、後から振るって決めてても?」
尚も言い募ってしまうのは、心のどこかでは少なからず情があるからだと思う。
そうでなければ椰一の名前はもちろん、顔とて一切視界に入れたくないだろう。
「そこまでは本人じゃないからなんとも言えないなぁ。……って、龍冴さん? 貴方、佐野さんとお別れしたんじゃありませんこと?」
「……気色悪い声出すな!」
永睦のわざとらしいほど高い声はもちろん、くねくねと身体をよじらせる仕草にぞわりと寒気を覚え、無意識に腕を擦る。
永睦としては張り詰めた空気を和ませようとしているのかもしれないが、こうなった時の永睦が胡散臭いのは否めない。
加えて仁が黙っているのが不気味で、ちらりと仁の方に視線を向ける。
「じ、仁……!?」
あろうことか仁は柔らかなラグに仰向けに倒れ、伸びていた。
ご丁寧に両手を胸の前で組み、しかし一向に起きる気配はない。
場所が場所なだけに怪我はないだろうが、それでもなぜ気絶しているのか。
「大丈夫か? ちょ、怪我は」
慌てて仁を抱き起こし、永睦が呆れたように溜め息を吐くのが見えた。
「さっき口塞いでたろ。それだよそれ」
「あ、っ……」
指摘されてようやく気付く。
思っていた以上に口を塞いでいた手に力がこもっていたようで、知らず窒息させる一歩手前だったらしい。
運よく龍冴が手を離したため事なきを得たが、あとほんの数秒でも遅ければと思うと恐怖で身震いが止まらない。
「ご、ごめん仁……」
仁の側に手を突いて、か細い声で呟く。
このまま目を覚まさなければ、最悪の事態になるかもしれない──というところまで考えると、ふっとかすかな笑い声が聞こえた。
「──いや、勝手に殺される手前の話するのやめてくれん?」
同時に仁がよろよろと起き上がる。
「いい迷惑だよほんと」
はぁ、と心底迷惑そうな表情で龍冴の背後──永睦の方を睨む。
「ごめんて、まさかここまで騙されると思わなくてさぁ」
すると永睦はどこ吹く風で、のんびりとした口調で言った。
「けどこれが雅玖だったら地獄だろ? 龍冴は顔に出やすいしイジりやすいわぁ」
「まぁ確かに。りょーちゃん、グッジョブ」
ぐっと親指を立ててくる仁に、つい今しがたのような嫌悪らしい色はなく、あるのはただ『騙してやった』という優越感だけだろう。
「ドッキリコーナー出られるレベルっしょ」
ははは、と永睦の紡ぐ穏やかな声音に呆れてものも言えないのはもちろん、もはや怒りすら湧かない。
「お前ら……」
頬の引き攣りを抑えつつ、なんとかそれだけを絞り出す。
けれど頭のどこかでは、己に笑って欲しくて──こちらとしては振る舞いが本気過ぎて笑えなかったが──した事だと理解している。
(俺って二人の間じゃそんなキャラなのか……)
なんであれこうして気を遣ってくれるのは嬉しく思うが、金輪際こういう事はしてほしくなかった。
ある程度は常識があると自負しているものの、大切な友人ともう話せなくなると思うと堪えるものがある。
「……悪い、気ぃ遣ってもらって」
せめて礼を言いたくて、無意識に下げていた目線を上げる。
「──え、ここ安くね?」
「そうだろー? 翔哉と出掛けた時、たまたま見つけたんよ」
今度行こうぜ、と何やら二人でわいわいと騒がしい。
ともすれば仲間外れにされた気がして、しかしこれがこの二人のペースなのだ。
悲しい事があれば笑わせてくれ、少しでも気持ちが晴れるようにと色々と考えてくれる。
(俺は恵まれてる方、かもしれない)
他の友人がどうかは分からないが、こうして気心の知れた相手と話すのは楽しかった。
龍冴は小さく息を吐き、二人に混ざろうとした。
すると携帯が振動し、何かの通知を知らせてくれるのは同時だった。
すると永睦が小さく手を上げ、神妙な顔付きで口を開いた。
龍冴がかすかに頷くのを見ると、『多分だけど』と前置きする。
「寂しいからだと思うんだよな」
「は……?」
「寂しがりで性欲高い、って言われてるウサギが言っても説得りょ……モゴゴッ!」
仁が間に入ろうとしたため、龍冴は素早く口を塞ぐと震えそうな唇をゆっくりと動かす。
「だから誰かに愛されたいって? 告白した言葉が嘘で、後から振るって決めてても?」
尚も言い募ってしまうのは、心のどこかでは少なからず情があるからだと思う。
そうでなければ椰一の名前はもちろん、顔とて一切視界に入れたくないだろう。
「そこまでは本人じゃないからなんとも言えないなぁ。……って、龍冴さん? 貴方、佐野さんとお別れしたんじゃありませんこと?」
「……気色悪い声出すな!」
永睦のわざとらしいほど高い声はもちろん、くねくねと身体をよじらせる仕草にぞわりと寒気を覚え、無意識に腕を擦る。
永睦としては張り詰めた空気を和ませようとしているのかもしれないが、こうなった時の永睦が胡散臭いのは否めない。
加えて仁が黙っているのが不気味で、ちらりと仁の方に視線を向ける。
「じ、仁……!?」
あろうことか仁は柔らかなラグに仰向けに倒れ、伸びていた。
ご丁寧に両手を胸の前で組み、しかし一向に起きる気配はない。
場所が場所なだけに怪我はないだろうが、それでもなぜ気絶しているのか。
「大丈夫か? ちょ、怪我は」
慌てて仁を抱き起こし、永睦が呆れたように溜め息を吐くのが見えた。
「さっき口塞いでたろ。それだよそれ」
「あ、っ……」
指摘されてようやく気付く。
思っていた以上に口を塞いでいた手に力がこもっていたようで、知らず窒息させる一歩手前だったらしい。
運よく龍冴が手を離したため事なきを得たが、あとほんの数秒でも遅ければと思うと恐怖で身震いが止まらない。
「ご、ごめん仁……」
仁の側に手を突いて、か細い声で呟く。
このまま目を覚まさなければ、最悪の事態になるかもしれない──というところまで考えると、ふっとかすかな笑い声が聞こえた。
「──いや、勝手に殺される手前の話するのやめてくれん?」
同時に仁がよろよろと起き上がる。
「いい迷惑だよほんと」
はぁ、と心底迷惑そうな表情で龍冴の背後──永睦の方を睨む。
「ごめんて、まさかここまで騙されると思わなくてさぁ」
すると永睦はどこ吹く風で、のんびりとした口調で言った。
「けどこれが雅玖だったら地獄だろ? 龍冴は顔に出やすいしイジりやすいわぁ」
「まぁ確かに。りょーちゃん、グッジョブ」
ぐっと親指を立ててくる仁に、つい今しがたのような嫌悪らしい色はなく、あるのはただ『騙してやった』という優越感だけだろう。
「ドッキリコーナー出られるレベルっしょ」
ははは、と永睦の紡ぐ穏やかな声音に呆れてものも言えないのはもちろん、もはや怒りすら湧かない。
「お前ら……」
頬の引き攣りを抑えつつ、なんとかそれだけを絞り出す。
けれど頭のどこかでは、己に笑って欲しくて──こちらとしては振る舞いが本気過ぎて笑えなかったが──した事だと理解している。
(俺って二人の間じゃそんなキャラなのか……)
なんであれこうして気を遣ってくれるのは嬉しく思うが、金輪際こういう事はしてほしくなかった。
ある程度は常識があると自負しているものの、大切な友人ともう話せなくなると思うと堪えるものがある。
「……悪い、気ぃ遣ってもらって」
せめて礼を言いたくて、無意識に下げていた目線を上げる。
「──え、ここ安くね?」
「そうだろー? 翔哉と出掛けた時、たまたま見つけたんよ」
今度行こうぜ、と何やら二人でわいわいと騒がしい。
ともすれば仲間外れにされた気がして、しかしこれがこの二人のペースなのだ。
悲しい事があれば笑わせてくれ、少しでも気持ちが晴れるようにと色々と考えてくれる。
(俺は恵まれてる方、かもしれない)
他の友人がどうかは分からないが、こうして気心の知れた相手と話すのは楽しかった。
龍冴は小さく息を吐き、二人に混ざろうとした。
すると携帯が振動し、何かの通知を知らせてくれるのは同時だった。
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