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五章 離れたくない、そう思った
5‐12 告白の返事
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揃って店に入ると景観の通り、店内もポップな雰囲気で可愛らしい。
客層は女性を中心に、それ以外だとカップルがほとんどを占めていた。
「……俺ら、場違いじゃないですか」
席についてしばらくして、そんな本音がぽろりと零れる。
ちらほらと男性の姿はあるものの、それは普通のカップルや家族連れに居るくらいだ。
同性でも男同士で、加えて二人ともパフェを頼んでいるのは、きっと自分達以外にいない。
文字通り異質極まりなく、意識すればするほどいたたまれない気持ちにさせられる。
注文はテーブルのタッチパネル式のため、既に頼んでしまっていた。
大和はオススメのシャインマスカットのパフェ、龍冴はショーケースで見たチョコストロベリーパフェだ。
取り消せないとは分かっているが、頼むとしたら軽めの軽食にしたらよかったと思う。
龍冴が重ねて口を開こうとしたところで、ふと大和と視線が交わった。
「せっかく来たのにそんな事考えない」
幼い子供を諭すような口調は、兄としてのそれだ。
つい今しがた一息に水を二杯呷っていたとは思えないほど、滑らかな声だった。
(連れてきたのはアンタですけど)
そう言ってしまいたいのをぐっと堪え、龍冴は頬に無理矢理笑みを浮かべる。
大和が言うことはもっともで、こうして誘ってくれた手前でネガティブになってはいけないと思い直す。
「……でも意外でした。甘いもの、好きなんですね」
話題を、と思って紡がれた言葉は店の前でも思ったことだ。
相手の好きなものを否定するつもりは一切無いが、なぜ龍冴を連れてきてくれたのか、いまいち分からなかった。
単に自分が好きだから、という至極単純な理由かもしれないが、大和のことだからそれだけではない気がしてしまう。
(まぁ全部俺の思い過ごしかもだけど)
たとえ嘘でもそう言い聞かせなければ、勘違いしてしまうのだ。
自分以外とも──特に龍冴と同じ学年や年下と──、こうしてどこかへ出掛けているのだと思うと、少し複雑な気持ちだった。
何も付き合っている訳でも、また告白の返事をはっきりと聞いた訳でもないというのに。
大和はぱちぱちと瞬きを繰り返すと、そっと瞼を伏せた。
「たまーに無性に甘いもの食べたくなるんだよな。身体動かした時とか、頭使った時とか余計に」
伏せられた睫毛が頬に柔らかな陰を落とし、そのさまにとくりと心臓が音を立てた。
(ん……?)
なぜ胸が高鳴ったのか分からず、けれど大和の言葉は不思議と落ち着いて、段々と周囲が気にならなくなっていく。
それは龍冴が目の前の男を好きだからか、また違う感情からなのか。
両方かもしれないし、もっと別な理由があるのかもしれなかった。
「甘いの食べると嫌なこと忘れて、幸せな気持ちになるだろ。そうじゃなくても、たまには糖分摂った方がいいしな」
言いながら肩に掛けていた小ぶりなバッグから出したのは、可愛らしい缶だった。
蓋は小花柄で、大和の手の平より少し小さめのサイズだ。
きゅっと小さな音を立てて開けると、色とりどりの飴が入っている。
「シロ……弟がこういうの持っとけって。他にも色々持ってるみたいなんだけど、一番マシなのにした」
聞けば弟である茉白はクッキーを始めとしたお菓子の缶を集めるのが好きで、中でも動物や花をあしらったものが好きらしい。
「好きなものを好き、って言えるのってすごいよなぁって。……だから」
そこで大和は言葉を切ると、伏せていた瞼を押し上げる。
「っ」
テーブルを挟んではいるものの、真摯な黒い瞳と真正面から視線がぶつかり、無意識に声が漏れた。
「雨宮と、一緒に来たかった……って言ったら、怒る?」
客層は女性を中心に、それ以外だとカップルがほとんどを占めていた。
「……俺ら、場違いじゃないですか」
席についてしばらくして、そんな本音がぽろりと零れる。
ちらほらと男性の姿はあるものの、それは普通のカップルや家族連れに居るくらいだ。
同性でも男同士で、加えて二人ともパフェを頼んでいるのは、きっと自分達以外にいない。
文字通り異質極まりなく、意識すればするほどいたたまれない気持ちにさせられる。
注文はテーブルのタッチパネル式のため、既に頼んでしまっていた。
大和はオススメのシャインマスカットのパフェ、龍冴はショーケースで見たチョコストロベリーパフェだ。
取り消せないとは分かっているが、頼むとしたら軽めの軽食にしたらよかったと思う。
龍冴が重ねて口を開こうとしたところで、ふと大和と視線が交わった。
「せっかく来たのにそんな事考えない」
幼い子供を諭すような口調は、兄としてのそれだ。
つい今しがた一息に水を二杯呷っていたとは思えないほど、滑らかな声だった。
(連れてきたのはアンタですけど)
そう言ってしまいたいのをぐっと堪え、龍冴は頬に無理矢理笑みを浮かべる。
大和が言うことはもっともで、こうして誘ってくれた手前でネガティブになってはいけないと思い直す。
「……でも意外でした。甘いもの、好きなんですね」
話題を、と思って紡がれた言葉は店の前でも思ったことだ。
相手の好きなものを否定するつもりは一切無いが、なぜ龍冴を連れてきてくれたのか、いまいち分からなかった。
単に自分が好きだから、という至極単純な理由かもしれないが、大和のことだからそれだけではない気がしてしまう。
(まぁ全部俺の思い過ごしかもだけど)
たとえ嘘でもそう言い聞かせなければ、勘違いしてしまうのだ。
自分以外とも──特に龍冴と同じ学年や年下と──、こうしてどこかへ出掛けているのだと思うと、少し複雑な気持ちだった。
何も付き合っている訳でも、また告白の返事をはっきりと聞いた訳でもないというのに。
大和はぱちぱちと瞬きを繰り返すと、そっと瞼を伏せた。
「たまーに無性に甘いもの食べたくなるんだよな。身体動かした時とか、頭使った時とか余計に」
伏せられた睫毛が頬に柔らかな陰を落とし、そのさまにとくりと心臓が音を立てた。
(ん……?)
なぜ胸が高鳴ったのか分からず、けれど大和の言葉は不思議と落ち着いて、段々と周囲が気にならなくなっていく。
それは龍冴が目の前の男を好きだからか、また違う感情からなのか。
両方かもしれないし、もっと別な理由があるのかもしれなかった。
「甘いの食べると嫌なこと忘れて、幸せな気持ちになるだろ。そうじゃなくても、たまには糖分摂った方がいいしな」
言いながら肩に掛けていた小ぶりなバッグから出したのは、可愛らしい缶だった。
蓋は小花柄で、大和の手の平より少し小さめのサイズだ。
きゅっと小さな音を立てて開けると、色とりどりの飴が入っている。
「シロ……弟がこういうの持っとけって。他にも色々持ってるみたいなんだけど、一番マシなのにした」
聞けば弟である茉白はクッキーを始めとしたお菓子の缶を集めるのが好きで、中でも動物や花をあしらったものが好きらしい。
「好きなものを好き、って言えるのってすごいよなぁって。……だから」
そこで大和は言葉を切ると、伏せていた瞼を押し上げる。
「っ」
テーブルを挟んではいるものの、真摯な黒い瞳と真正面から視線がぶつかり、無意識に声が漏れた。
「雨宮と、一緒に来たかった……って言ったら、怒る?」
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