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五章 離れたくない、そう思った
5‐13 自惚れ
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そう言った大和の顔は心做しか耳の縁が赤く染まっており、けれどしっかりと紡がれた言葉は『答え』に近かった。
(先輩、は……)
もしかしてこのことを言うためにわざわざ誘ってくれたのか、と自惚れてしまいそうだった。
先に気まずい雰囲気にしたのは自分で、あれから龍冴の『好き』という言葉を考えてくれていたのか。
── 雨宮の言う『好き』はまだ分かんねぇんだ。
そう教えてくれたのに、校内で顔を合わせないのはもちろん、以降はメッセージアプリでもやり取りをしていなかった。
あまり考えたくはなかったが、既に呆れられたかブロックされたと思っていたのだ。
(昨日、どんな思いで誘ってくれたんだろう)
こちらから問い掛ければ、大和は龍冴が疑問に思うことすべてに答えてくれるだろう。
ただ、どんな理由があったとしても話さない間、大和が真剣に考えてくれたのは変わらない。
なのに唇は震えるばかりで、言葉を成そうとしなかった。
まるで針と糸で頑丈に縫い付けられたかのように、ぴくりとも動かない。
いや仮に声になったとしても、周囲の喧騒で掻き消されてしまうはずだ。
何も言えずまっすぐに見つめていると、ふいと大和が堪えきれないというように顔を逸らした。
「……や、何言ってんだろ。ごめん、意味わかんねぇよな」
はは、と大和が力なく笑う。
こちらがうかうかしているから、はぐらかされた──そして、少なからず大和を傷付けてしまったと自覚する。
「っ、ちが」
「──季節のマスカットパフェのお客様~」
否定しようと口を開いたのと同じくして、タイミングよく店員の声が聞こえた。
どうやら大和が頼んでいたパフェが来たようで、続いて龍冴が頼んでいたチョコストロベリーパフェがテーブルに置かれる。
「……食べよっか」
にこりと大和が淡い笑みを浮かべたのが視界に映り、龍冴もつられて口角を上げた。
「……です、ね」
正直なところ、パフェが来る前に本音を言ってしまえたらよかったが、これ以上話を続けるのは気が引ける。
加えて不用意なことを言って、更に傷付けてしまうのだけは避けたい。
(俺のこと、どう思ってるんですか)
龍冴は先程言おうとした言葉を呑み込み、スプーンを手に取った。
ホイップクリームとチョコレート、そしてイチゴが乗ったところをそっと掬う。
見た目から甘くて美味しいものだと分かってはいるが、どうしてかほとんど味がしない。
それでもせっかく頼んだ手前、残してしまうのは嫌で無理矢理口に運ぶ。
しかし龍冴が目の前のパフェを黙々と食べている間、大和の瞳が緩やかに細められたのには気付いていなかった。
(先輩、は……)
もしかしてこのことを言うためにわざわざ誘ってくれたのか、と自惚れてしまいそうだった。
先に気まずい雰囲気にしたのは自分で、あれから龍冴の『好き』という言葉を考えてくれていたのか。
── 雨宮の言う『好き』はまだ分かんねぇんだ。
そう教えてくれたのに、校内で顔を合わせないのはもちろん、以降はメッセージアプリでもやり取りをしていなかった。
あまり考えたくはなかったが、既に呆れられたかブロックされたと思っていたのだ。
(昨日、どんな思いで誘ってくれたんだろう)
こちらから問い掛ければ、大和は龍冴が疑問に思うことすべてに答えてくれるだろう。
ただ、どんな理由があったとしても話さない間、大和が真剣に考えてくれたのは変わらない。
なのに唇は震えるばかりで、言葉を成そうとしなかった。
まるで針と糸で頑丈に縫い付けられたかのように、ぴくりとも動かない。
いや仮に声になったとしても、周囲の喧騒で掻き消されてしまうはずだ。
何も言えずまっすぐに見つめていると、ふいと大和が堪えきれないというように顔を逸らした。
「……や、何言ってんだろ。ごめん、意味わかんねぇよな」
はは、と大和が力なく笑う。
こちらがうかうかしているから、はぐらかされた──そして、少なからず大和を傷付けてしまったと自覚する。
「っ、ちが」
「──季節のマスカットパフェのお客様~」
否定しようと口を開いたのと同じくして、タイミングよく店員の声が聞こえた。
どうやら大和が頼んでいたパフェが来たようで、続いて龍冴が頼んでいたチョコストロベリーパフェがテーブルに置かれる。
「……食べよっか」
にこりと大和が淡い笑みを浮かべたのが視界に映り、龍冴もつられて口角を上げた。
「……です、ね」
正直なところ、パフェが来る前に本音を言ってしまえたらよかったが、これ以上話を続けるのは気が引ける。
加えて不用意なことを言って、更に傷付けてしまうのだけは避けたい。
(俺のこと、どう思ってるんですか)
龍冴は先程言おうとした言葉を呑み込み、スプーンを手に取った。
ホイップクリームとチョコレート、そしてイチゴが乗ったところをそっと掬う。
見た目から甘くて美味しいものだと分かってはいるが、どうしてかほとんど味がしない。
それでもせっかく頼んだ手前、残してしまうのは嫌で無理矢理口に運ぶ。
しかし龍冴が目の前のパフェを黙々と食べている間、大和の瞳が緩やかに細められたのには気付いていなかった。
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