【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華

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六章 本当の終わりと始まり

6‐12 今はただ

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 未だ自分以外の温もりが残る唇をそっと開く。

「好き……です」

 そこで龍冴が言葉を切るのと同じくして、手首はもちろん唇からもじわじわと熱を持っていくのが分かった。

 心臓が先程よりもわずかに速く脈打ち、痛いほどだ。

「……俺が言えたことじゃないけど、変なとこ鈍感で……なのにはっきりしないから悪いんですよ」

 先輩、と紡いだ声は、心做こころなしか震えていた。

 ともすれば酷く掠れており、最後まで聞こえていたかどうかも怪しい。

 傍目から見れば冷静を装っているように見えるが、龍冴の頭の中は自身の行動を読み解こうと必死だった。

(なんでキスなんかしたんだ……!)

 なぜこんな事をしてしまったのか、なぜこんな事を言っているのかはっきりと分からず、文字通り困惑してしまう。

 見方を変えれば上から目線に取られる可能性もあり、最悪の場合嫌悪されるかもしれない。

 そもそも取り消したくても、既に後の祭りなのだ。

 身体が勝手に動いたとでも言えば許してくれるのかもしれないが、ここで自分の気持ちに嘘を吐くのはもちろん、大和の言葉を笑って聞き流せるほど強くはない。

「……ね、鷹月先輩」

 龍冴は羞恥心を押し殺し、そろりと大和の肩に己の両手を乗せる。

 自分の行動を考えるのは、反省するのは一人になってからでも出来る。

 今はこのまま、己の気持ちに素直になりたかった。

「っ、おま……」

 無意識に後退あとずさろうとしたのか、または龍冴の唐突な行動に面食らったのか、大和が一歩二歩とたたらを踏む。

(……真っ赤だ)

 少し背伸びをして真正面から見た大和の顔は、これ以上ないほど赤くなっていた。

 ほんの少し頬に触れでもしたら、きっと火傷しそうなほど熱いだろう。

「ちゃんと言って。……俺のこと、どう思ってるか」

 あくまで大和の口から聞きたいのだ──そう、言外に含ませる。

 大和は何度か目を瞬かせたかと思えば逸らし、けれど龍冴の行動を止めるような仕草はしなかった。

 こちらの言葉の意図を懸命に考えてくれているのが伝わり、不思議といじらしくなる。

(もう両想いなのは分かってるけど)

 先程に比べて意地悪をしたくなるのは、ひとえに大和の言動が初々しいからだ。

 それに気付いているのかいないのか、はたまたそんな事を言われるとは思わなかったのか、大和はまだ口を開いては閉じてを繰り返している。

 ちらちらと周囲を見回すように視線を向けたかと思えば、こちらを見てくる瞳は困惑に染まっており、端から見れば挙動不審極まりないだろう。

 昼過ぎだからか、または車道からずっと離れているため住宅地の人通りは少ない。

 それを幸いに思っていたのに、返答してくれないのはまだ大和の中で結論が出ていないからだろうか。

(全部、聞きたい。いくらでも待つから)

 内なる願いが届いたのか、不意に軽く胸を押された。

「っ、先輩?」

 龍冴はその反動のまま一歩後ろに下がり、もう一度大和を見上げる。
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