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Epilogue 穏やかな日常
7‐05 その後のデート
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◆◆◆
幸の家を出る頃には十四時を回っており、龍冴はやや急ぎ足で雑踏の中を進む。
滞在こそ一時間に満たないものの、今日ばかりは早く着いておきたかったのだ。
大和との待ち合わせは十五時だったが、今すぐに会いたいという衝動に駆られていた。
それもこれも、幸と打ち解けられたからだろうか。
もしくは自身の気持ちをやっと吐露出来て、心身ともに身軽になったからだろうか。
幸の前では掻い摘んでしまったが、椰一のその後には少し続きがある。
改心したのかは分からないが、永睦を始めとした噂好きな生徒らの間で写真投稿アプリのアカウントを作り、こっそりと椰一を監視していたらしい。
聞いた話によると、椰一はどんなに『話したいです』と言っても誘いに乗ってこないだけでなく、返信が来たと思っても塩対応か既にブロックされているという。
『こりゃあ絶対懲りたんだ、なんでかは知らんが!』
自分達が嗅ぎ回っているからだと合点がいったらしく、この話をしてきた時の永睦は嬉しそうだった。
『大事な大事なりょーがが泣かされたんだ、休み中でも黙って見てる訳にはいかないだろ?』
そう言っていたが、実際のところは本人のみしか分からない。
こちらから確かめようにも、既に連絡先は消している。
たとえ繋がっていたとしても、もう話す気はもちろん顔を合わせる気も無いのだ。
だから一旦は経過観察中だが、何かあれば心強い友人らが居るため、そう大事にはならないだろう。
いい友人に恵まれたものだ、と思いつつ龍冴の脚は待ち合わせ場所へ向かっていた。
(先に着いてたらきっと驚くだろうな)
待ち合わせをする時、必ずといっていいほど先に着いているのは大和の方なのだ。
付き合うようになってからは夏休みというのもあり、ほとんど毎日のように会っている。
しかし、ものの一度も自分が先に着いていた試しはなく、いつも大和ばかり待たせてしまうのが申し訳なかった。
待っている時は携帯を見て時間潰しをしているのがお決まりらしく、龍冴が遅れても『大丈夫』と言ってくれる。
なのに、内心では怒っているのではないか、と不安でならなかった。
だから今日こそは先に着く、と懸命に脚を動かしていたのだが。
「確かここらへんだった、はず……あ、っ」
きょろきょろと周囲を見回していると、某ブランドショップの前に見慣れた男が一人居た。
なぜか熱心に携帯を見ているのが視界に入り、けれど龍冴はそれが何か考えるよりも先に小走りになっていた。
(今日も遅かった……!)
焦りか嬉しさか分からないが、脚を動かす度に心臓が大きく音を立てる。
「おいおい、そんな急がなくても逃げないって」
それでも龍冴が遠くから走ってきているのにすぐ気付いてくれ、携帯から顔を上げた大和が柔らかく微笑むのが見えた。
「も、もしかして遅かった……?」
時刻はまだ十五時になっていないはずだが、不安になって携帯を見ようとする。
けれどそれよりもわずかに早く大和の手が己のそれに触れ、きゅうと握り締められる。
「っ」
「いや、大丈夫。むしろめちゃくちゃ早い。俺が早く会いたくて、先に着いてるだけだから」
反射的に小さく声を漏らしてしまったが、大和はいつになく真剣な瞳でこちらを見つめていた。
その瞳には戸惑った己が映っており、なのにすぐに見えなくなる。
大和がさも愛おしそうに笑ったからだ。
「……これ、龍冴の写真見てるだけなんだ。いつも早く来ないかなぁって、ずっと待ってた」
言いながら、大和が携帯の画面をこちらに向けてくれる。
幸の家を出る頃には十四時を回っており、龍冴はやや急ぎ足で雑踏の中を進む。
滞在こそ一時間に満たないものの、今日ばかりは早く着いておきたかったのだ。
大和との待ち合わせは十五時だったが、今すぐに会いたいという衝動に駆られていた。
それもこれも、幸と打ち解けられたからだろうか。
もしくは自身の気持ちをやっと吐露出来て、心身ともに身軽になったからだろうか。
幸の前では掻い摘んでしまったが、椰一のその後には少し続きがある。
改心したのかは分からないが、永睦を始めとした噂好きな生徒らの間で写真投稿アプリのアカウントを作り、こっそりと椰一を監視していたらしい。
聞いた話によると、椰一はどんなに『話したいです』と言っても誘いに乗ってこないだけでなく、返信が来たと思っても塩対応か既にブロックされているという。
『こりゃあ絶対懲りたんだ、なんでかは知らんが!』
自分達が嗅ぎ回っているからだと合点がいったらしく、この話をしてきた時の永睦は嬉しそうだった。
『大事な大事なりょーがが泣かされたんだ、休み中でも黙って見てる訳にはいかないだろ?』
そう言っていたが、実際のところは本人のみしか分からない。
こちらから確かめようにも、既に連絡先は消している。
たとえ繋がっていたとしても、もう話す気はもちろん顔を合わせる気も無いのだ。
だから一旦は経過観察中だが、何かあれば心強い友人らが居るため、そう大事にはならないだろう。
いい友人に恵まれたものだ、と思いつつ龍冴の脚は待ち合わせ場所へ向かっていた。
(先に着いてたらきっと驚くだろうな)
待ち合わせをする時、必ずといっていいほど先に着いているのは大和の方なのだ。
付き合うようになってからは夏休みというのもあり、ほとんど毎日のように会っている。
しかし、ものの一度も自分が先に着いていた試しはなく、いつも大和ばかり待たせてしまうのが申し訳なかった。
待っている時は携帯を見て時間潰しをしているのがお決まりらしく、龍冴が遅れても『大丈夫』と言ってくれる。
なのに、内心では怒っているのではないか、と不安でならなかった。
だから今日こそは先に着く、と懸命に脚を動かしていたのだが。
「確かここらへんだった、はず……あ、っ」
きょろきょろと周囲を見回していると、某ブランドショップの前に見慣れた男が一人居た。
なぜか熱心に携帯を見ているのが視界に入り、けれど龍冴はそれが何か考えるよりも先に小走りになっていた。
(今日も遅かった……!)
焦りか嬉しさか分からないが、脚を動かす度に心臓が大きく音を立てる。
「おいおい、そんな急がなくても逃げないって」
それでも龍冴が遠くから走ってきているのにすぐ気付いてくれ、携帯から顔を上げた大和が柔らかく微笑むのが見えた。
「も、もしかして遅かった……?」
時刻はまだ十五時になっていないはずだが、不安になって携帯を見ようとする。
けれどそれよりもわずかに早く大和の手が己のそれに触れ、きゅうと握り締められる。
「っ」
「いや、大丈夫。むしろめちゃくちゃ早い。俺が早く会いたくて、先に着いてるだけだから」
反射的に小さく声を漏らしてしまったが、大和はいつになく真剣な瞳でこちらを見つめていた。
その瞳には戸惑った己が映っており、なのにすぐに見えなくなる。
大和がさも愛おしそうに笑ったからだ。
「……これ、龍冴の写真見てるだけなんだ。いつも早く来ないかなぁって、ずっと待ってた」
言いながら、大和が携帯の画面をこちらに向けてくれる。
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