【完結】聖女ディアの処刑

三月

文字の大きさ
19 / 55

閑話前編/信者絶賛募集中!

しおりを挟む
これは、女神ディアマンティアナが人間界に降りる前のお話。




「やっほ~!豊穣と癒しの女神、ディアマンティアナだよ!今日は業務用マーケットで爆買いしてみました!『上半期買ってよかったグッズ・ベストテン』も一緒に発表するから、最後まで動画見てね~!」

そこまで喋り、ディアマンティアナは押し黙った。

ここは天の国の一角。
ディアマンティアナ神の居住区域である。

ディアマンティアナは、ひとりで巨大な水盤に向かって話しかけていたのだが、途中で止めてしまった。

「う~ん、なんか迷走してる気がする……信者ってこういうので増えるんだっけ?」

彼女は今、信者フォロワーの伸び悩みに直面していたのだ。

ディアマンティアナは、わりと新しい女神だった。

そして、人の子たち――いわゆる人間のことが大好きな女神でもあった。

人間は、姿形が神々に似ているけれど、小さくて、賢くて、とても可愛い生き物だ。

そんな生き物が、どうやら自分たちのことをすごく好いてくれている。自分たちを褒め称える教会や聖堂を建ててくれて、カッコいい彫像とか絵画の題材にしてくれて、もちろん武勇伝を語り継いでくれて、立派な本にまとめてくれる。

ただ、その本――大聖典と呼ばれる本には、ディアマンティアナのことはちょっぴりしか載っておらず、それが信者獲得のネックになっているみたいなのだ。

「だって、こんなに分厚くて上巻・中巻・下巻まであるのに、わたしの名前は3回くらいしか出てこないもん。こんなにネームバリュー低かったら、みんな信仰フォローしてくれないよね……」

大聖典が出版されてから、ディアマンティアナの主神パパや、バベルニアに眠る七柱の怪物たちや、永遠を統べる不死の君主あたりの信仰は爆発的に増えた。

増えた理由は、大聖典でたくさんページが割かれているとか、男心をくすぐるカッコいいエピソードがあるからだ。いいなあ。

ディアマンティアナはそれが羨ましかった。

大好きな人間に、わたしももっと好かれたい。もっと信仰してほしい。そう思っていたのだ。

「どうしたらいいのかな。キャラ被ってる同業者もいるし、豊穣や癒しっていう強みなら精霊を信仰してる国の方が多いし。わたしだって頑張ってるんだけどな~。新しい草花を作ったり、お天気を微調整したりしてるのにな~。誰かが『シン・大聖典』とか作って、わたしのこといっぱい載せてくれないかな~」

そんなとき、ディアマンティアナは見つけてしまった。自分をメインに信仰してくれている人間の国を。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね

猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」 広間に高らかに響く声。 私の婚約者であり、この国の王子である。 「そうですか」 「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」 「… … …」 「よって、婚約は破棄だ!」 私は、周りを見渡す。 私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。 「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」 私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。 なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。

男の仕事に口を出すなと言ったのはあなたでしょうに、いまさら手伝えと言われましても。

kieiku
ファンタジー
旦那様、私の商会は渡しませんので、あなたはご自分の商会で、男の仕事とやらをなさってくださいね。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

聖女の証を義妹に奪われました。ただ証だけ持っていても意味はないのですけどね? など 恋愛作品集

にがりの少なかった豆腐
恋愛
こちらは過去に投稿し、完結している作品をまとめたものになります 章毎に一作品となります これから投稿される『恋愛』カテゴリの作品は投稿完結後一定時間経過後、この短編集へ移動することになります ※こちらの作品へ移動する際、多少の修正を行うことがあります。 ※タグに関してはおよそすべての作品に該当するものを選択しています。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

処理中です...