31 / 55
辺境伯の正論 ※王子主軸
しおりを挟む
昨日の中途半端な眠りが祟って、舟をこいでいたユースレスはビクッと辺境伯を見た。
顔の下半分を覆う、獅子のたてがみのような髭の上で、小さな目が険しく光っている。怒りで元々大柄な身体がさらに膨れ上がっているようだ。
「どなた様もご指摘めされないなら、私が先陣切りましょう!そもそも此度の騒動はユースレス殿下とイルミテラ嬢が引き起こしたこと!にも関わらず、先ほどから見ておればまるで他人事!謝罪すらない!」
ユースレスは怯えたように身を縮めた。
「もちろん、息子は自分の招いた事態を分かっておる。しかし、まだ成人前で――」
辺境伯は、王の言葉を遮るように円卓を叩いた。
「それがなんだと言うのです!成人前なら、なお恐ろしいと思いませぬか!結果的に、聖女をもうひとり見つけたのは良しとしましょう!しかし、今の今まで支えてくれ、間違いなく癒しの力を持っている平民の聖女を!一方的に偽物と糾弾し!取り調べなどもなく!国務院や議会貴族に連絡もなく!すぐさま処刑台に引っ立てていくなど子供の考えることではない!あまりにも傲慢な蛮行!もし女神でなければ、あの乙女は!聖女ディアは!なんの申し開きもできず、首を落とされていたんですぞ!」
小さく反論する。
「ち、ちがう……本当は、処刑なんてするつもりなくて……」
「はあ!?」
ユースレスは、ごくりと喉を鳴らした。
「う……彼女を偽物にすれば、婚約者をイルミテラに変えてもらえるんじゃないかと……」
辺境伯の顔色が、見る間にどす黒くなった。大きく見開き、血走った眼球はユースレスを捉えたまま。みちみちと音がするほど強く拳を握り締めている。
「で、でも!この案はイルミテラが考えたんだ!私は最初反対を――」
「このッ……み、見下げ果てたクズめが……ッ!」
まさに、吐き捨てるというのがふさわしい罵倒だった。
顔の下半分を覆う、獅子のたてがみのような髭の上で、小さな目が険しく光っている。怒りで元々大柄な身体がさらに膨れ上がっているようだ。
「どなた様もご指摘めされないなら、私が先陣切りましょう!そもそも此度の騒動はユースレス殿下とイルミテラ嬢が引き起こしたこと!にも関わらず、先ほどから見ておればまるで他人事!謝罪すらない!」
ユースレスは怯えたように身を縮めた。
「もちろん、息子は自分の招いた事態を分かっておる。しかし、まだ成人前で――」
辺境伯は、王の言葉を遮るように円卓を叩いた。
「それがなんだと言うのです!成人前なら、なお恐ろしいと思いませぬか!結果的に、聖女をもうひとり見つけたのは良しとしましょう!しかし、今の今まで支えてくれ、間違いなく癒しの力を持っている平民の聖女を!一方的に偽物と糾弾し!取り調べなどもなく!国務院や議会貴族に連絡もなく!すぐさま処刑台に引っ立てていくなど子供の考えることではない!あまりにも傲慢な蛮行!もし女神でなければ、あの乙女は!聖女ディアは!なんの申し開きもできず、首を落とされていたんですぞ!」
小さく反論する。
「ち、ちがう……本当は、処刑なんてするつもりなくて……」
「はあ!?」
ユースレスは、ごくりと喉を鳴らした。
「う……彼女を偽物にすれば、婚約者をイルミテラに変えてもらえるんじゃないかと……」
辺境伯の顔色が、見る間にどす黒くなった。大きく見開き、血走った眼球はユースレスを捉えたまま。みちみちと音がするほど強く拳を握り締めている。
「で、でも!この案はイルミテラが考えたんだ!私は最初反対を――」
「このッ……み、見下げ果てたクズめが……ッ!」
まさに、吐き捨てるというのがふさわしい罵倒だった。
591
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!
柊
ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」
卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。
よくある断罪劇が始まる……筈が。
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね
猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」
広間に高らかに響く声。
私の婚約者であり、この国の王子である。
「そうですか」
「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」
「… … …」
「よって、婚約は破棄だ!」
私は、周りを見渡す。
私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。
「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」
私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。
なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる