【完結】幼馴染に裏切られたので協力者を得て復讐(イチャイチャ)しています。

猫都299

文字の大きさ
14 / 60
一章

14 キス

しおりを挟む
 頬に伝わる沢西君の体温が心地いい。
 必死な私はありったけの理性を以て口走る。

「や、やめとく」

 沢西君の復讐に協力すると昨日決めたばかりだったのに。いざするとなると怖気付いてしまう。

「何でですか? オレとじゃ嫌ですか?」

 すぐ近くから問われる。

「ち、違うのっ」

 誤解されそうになって急いで否定した。目を大きく左に逸らした。恥ずかしくて。ゴニョゴニョと密かに危惧していた考えを白状する。

「一回だけじゃ済まなくなりそうだからっ……! 本で読んだ事があるけど、キスって気持ちいいもの……なんだよね? 引かれちゃうと思って……」

「えっ、そっち? オレじゃなくて先輩が済まなくなりそうなの? ハハハ……」

 それまで暗かった沢西君の声が一転した。明るい笑い声。

「先輩?」

 呼ばれて相手の目を見た。意志の強そうな眼差しで言われた。

「望むところです」

 えっ……と思った時には唇同士が触れていた。ファーストだったキスがすぐにファーストじゃなくなる。少しだけ離れて直後にまた合わさるから。行為に感情が追いついていない。どこかフワフワした気分だ。

 沢西君が私の両肩に手を置いて俯いた。

「あー。先輩の言ってた事が分かりました。確かに一回じゃ終われませんね。……引きました?」

 沢西君へ首を横に振って見せる。

「じゃあ何で目を逸らすんですか」

 彼の不服そうな物言いへ返答する。

「や、やっぱりこういうのは両想いの人とするものでしょ。沢西君は私の事、好きじゃないでしょ」

 キスしていても沢西君の心が私にないという現実に納得できない部分があって、つい捻くれた事を言ってしまった。それなのに手を放してほしくなくて彼のシャツの胸元を握り締めていた指に力が籠もる。その左右の手を沢西君に片手で掴まれた。顔を上げた私は真剣な目をした彼に尋ねられた。

「オレはしたい。坂上先輩と。先輩は?」

 一拍、言葉に詰まった。昨日の決意は必要なかったのだと思った。私の進みたい方向に彼がいるのだから。心に従って答えた。

「私もしたい。……沢西君と」

 沢西君の左手に引き寄せられた。私の両手は彼の右手の下で心臓の響きを聴いていた。



「先輩、オレ……っ」

 沢西君が何か言い掛けた時、戸が開けられる音がした。

「内巻先輩も人使いが荒いよねー。『ハンカチ忘れたかも』って……自分で取りにくればいいじゃんねーっ」

「シッ! 誰かに聞かれたらどーすんのっ! あの人は私たちの憎悪を上手くコントロールしてくれてるんだから文句言うのは筋ちが……っ」

 女子二人が喋りながら室内に入って来た。びっくりしたような彼女たちと目が合う。直前に沢西君から慌てて離れたけど間に合ったかな?

「先輩行きましょう」

 沢西君に促され手早く荷物を持って廊下へ出た。手を引かれて後に続く。
 先程、第二図書室にやって来た女子たちは晴菜ちゃんの話をしていたような……。

「ねぇ、沢西君」

 前を行く彼に呼び掛けるけど返事がない。そう言えばさっき……彼は何か言い掛けていた。その事も聞きたいけど聞ける雰囲気じゃなさそうな気配。だけど意を決して問う。

「沢西君? 何か怒ってる?」

「何で怒ってると思うんです?」

 反応してくれたのでホッとしたけど、やはり怒っているような言い草だ。

「私……何かした?」

「先輩は本当に復讐したいと思ってます?」

 鋭く言及されてハッと目を開く。足を止めた彼が振り向いた。

「オレたちの今の関係って何なんです?」

「恋……人……」

 自分では満点の答えを返したと思った。

「そうですよね。オレ、そう言いましたもんね。ちゃんとそのつもりでいてくれていいんですけど、いやよくないのか? ……とにかく。恥ずかしかったのは分かりますけど、さっきはチャンスだったのに。相手方に知らしめる絶好の。人づてに聞くのもジワジワ傷に響くと思うんですよね」

 沢西君が何を言いたいのか分かった。さっき……第二図書室に人が来たので慌てて彼を押しのけてしまった。その事を言っているんだ!

「ご、ごめん! そっか。そうだよね! 見せ付けるいい機会だったのに私ったら……」

「…………いえ。オレの方こそ、すみません。本当は違う理由なのにちゃんと言えなくて。何でもないです。……あっ! もしよかったら今日、帰りに商店街に寄ってもいいですか? ちょっと行きたい所があって」

「う、うん分かった」

 途中、話をはぐらかされたような気もするけど無理に聞き出さなくてもいいかと思って沢西君に合わせた。



 塾へ行く道を辿った先に商店街はある。昨日も同じ道を沢西君と一緒だったけど昨日の今日でこんなに、この恋が進展しているとは思わなかった。

 数歩分前を歩く彼の手を握った。ぎゅっと握り返してくれる。凄く凄く幸せな気持ちになる。

 これがただの……復讐が終わるまでの「フリ」だとしても。
 せっかくの満たされた心情がしぼんでしまいそうな気がしたので、それ以上考えるのはやめた。



 商店街の通りに入った。「沢西君はどこへ行くのかな?」とワクワクしてきた。

 でもこの日は結局、目的の場所には行かなかった。何故かというと偶然……知り合いと遭遇して沢西君が「オレの用事は今度で大丈夫です」と言い出したからだ。

 商店街の中程を歩いていたら前方右側の建物から出て来た二人と鉢合わせした。足を止めて見ていた私と沢西君に、あちらも気付いたようで二人とも顔を強張らせて動きを止めた。

 朔菜ちゃんと……ほとりちゃん。組み合わせに違和感がある。

 あれ? 二人は確か対立していなかったっけ?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

処理中です...