いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛

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結婚したのか……俺以外の奴と

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翌々日。
僕とアレックスが王城に呼び出されている日の朝。


「アレックス~…おきなぁ?」

「やだ……」

「やだじゃないよ。起きなさい」


カーテンを開けて、眩しい朝日を浴びながら、同じベッドで眠るアレックスを揺する。


「まだねむい……」

「お仕事の時どうしてたの」

「…………気合い」

「起きれるんじゃないか!ほら、甘えてないで起きて」


アレックスの身体をより朝日が当たる箇所に移動してやろうと画策していると、その瞼がようやく開いて碧眼が顔を出す。
まだ眠たげなその眼はなんだか少し大人っぽくて動揺してしまったが、朝に起きれないよぉとぐずっているのはこどもである。


「……もう少し一緒にいよ……だめ?」


気怠げな筈なのに何処か甘い声でそう言ったアレックスは僕の腰に腕を回す。
その筋肉質な腕がすがるように、拒否権を残したような力で回されるとその健気さにときめきが天元突破した。


「ーーーぅうう」


バクバクというのか、ギュンギュンと表現するのか痛む胸を抑えて、内なる愛しさを抱えながらベッドに横たわると、その身体を抱きしめた。


「し、仕方ないなぁ!少し、少しだけ」

「うんうん。少しだけね」


分かっているのかいないのか少々投げやり気味にアレックスはそう言って僕の頭を抱え込んだ。
筋肉量が多いせいか熱い身体に包まれるとそのあまりの心地良さに身体から力が抜けていく。
母親に抱かれて眠る赤子の気分とはこういうものか。
確かにこれは大人の僕でも抗いがたい魅惑の心地良さだ。
などと考えていたと思ったら……













「坊っちゃま」

「ん……」

「坊っちゃま、そろそろ支度を始めませんと間に合いませんわ」


聞きなれた姉のように感じている声に反射的に返事をするが、ぬくぬくと気持ちが良い重量感のある布団が僕を手放しそうにない。


「ふぁい……」

「支度が間に合わなければどうしましょうと、メイドが泣いております」

「ぁい……すまない…今起きる…」



そこまで言って覚醒した意識は現実を思い出させて血の気が引いた。
次期国王である王太子をお待たせするなどあってはならない。
アレックスのあまりの可愛さに少しだけだからと許してしまったのが間違いだった。
いや。アレックスのせいにするのは違う。
僕がうっかり眠りこけてしまったのが悪いのだ。
断じてアレックスのせいでは無い。
要因と結果を一緒にしてはいけない。


「アレックスは!?」

反射的に飛び上がろうとしたけれど重たい掛け布団が退かなかったので顔を上げた時満足げなアレックスが視界に入ってきた。


「おはようにぃに。今日のにぃには仔兎のような寝顔だったよ」

「起きてるの!?アレックス!にぃにの寝顔みてないで起こしなさい。少しだけって言ったよね!」

「少しだよ?まだ一時間くらいしか経ってない」


あまりのアレックスのルーズさに寒気がした。
この時間感覚は正さねば、一時間待たされても全然待ってないよとか言ってしまう都合の良い子になってしまう。


「一時間は一時間も、なの。待ち合わせでもそんなに遅れてくる人には怒らないとダメだよ。全く……いい子過ぎるのも考えものだ」

「このままボイコットしようと思っていたのに……」

「早く準備しないと!」


何とかアレックスの腕をひっぺがすと不満げながらも起き上がり僕の額にキスしてきた。
そんな可愛いことしても許さないんだからな。
と思っていたのに僕はアレックスの頬っぺたに返礼キスをしていた。
己の自制心の無さに頭を抱える。


「アレックス様、ウィルバート様はお召し換えなされます。どうぞご退出ください」

「法的関係にある、最愛の新婚夫の着替えを見て誰が咎めようか」


粛々と大層貫禄のある口調と声音でそう反論するアレックスの背中に両手を置くと嬉しそうに満面の笑みを浮かべた彼と目が合った。
大変愛い。


「僕が咎めるよ。最愛の旦那様。ほら、アレックスも着替えてきなさい」

「…………分かったよ、ウィル……」


悲しそうな声音で最後まで名残惜しそうに髪にキスをした彼の視線をドアで物理的に阻み、それに背を預けた瞬間ふと口をついてでる言葉。


「………また…ウィル…と呼ばれたな」

「あら、お気に召しませんか?ウィルバート様とアレックス様はご夫婦なのですから。愛称で呼びあっていらっしゃっても何もおかしくありません」

「……胸痛い!メリー!なにこれ!!!病気かもしれない!」

「まぁまぁ………坊っちゃま、まずナイトウェアを脱ぎませんと。お胸にあるお手てはパーにして楽にしていてくださいね」

「メリー!僕の話聞いてる!?心臓痛いんだよ!絶対病気だ!」

「大変お上手ですわ。自分が大変な時でも下の者の声に耳を傾ける、誰にでもできることではございません」


メリーは時々全然僕と会話をしてくれないことがある。
今はこんなに命の危険に晒されているというのに呑気なメリーにも困ったものだ。


「メリー……僕の話聞いてよ……」


くすくすと抑えきれない笑いを零しているメイドたちの声にムスッとしながらもシャキッと背筋を伸ばし世話のしやすいように姿勢を整える。


「では坊っちゃま、その胸の痛みはウィルバート様に報告された方が良いですわ」 


「やっぱり!病気かもしれないもんね……」

「ええ、ええ……アレックス様もそのお言葉にお喜びになられますわ」


病気を喜ぶ?と疑問には思ったものの過去に風邪であることを言わずにいた際には『俺にはどんなに小さいこともちゃんと報告して』と怒られたことを思い出す。
つまりメリーもそれを覚えていたのだろう。
出来る侍女である。



「そうだよね、アレックスは僕のことなんでも知りたがるからな……相談した方が喜ぶよね」

「ああでも、そうですわ……今すぐではなく、殿下とお話された後の方がよろしいかも知れません。きっとお話どころではないでしょうから」

「そうだね。心配でそれどころじゃなくなってしまうかもしれない。アレックスは僕のこと大好きだからね」

「それはもう」


それはもう。声の力に他人から見てもアレックスは僕のことを大好きなんだと実感して愛しさが込み上げてきた。
用意が出来たら抱きしめよう。
そして僕が準備の終わったアレックスの晴れ着姿に愛しさを大爆発させて条件反射的に駆け寄って抱きしめたのは言うまでもない。







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