没落令嬢は僻地で王子の従者と出会う

ねーさん

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 オリビアの父であるヒューゴ・エバンス侯爵は、この国の第一王子の一つ年下、第二王子と同い年で生まれて来た娘を見て、
「この子を王妃にしよう」
 と、思ったと言う。
 何故なのか、その娘であるオリビアが昔ヒューゴに聞いた時には「意地だ」と言ったが、母ナタリーには曖昧に笑って誤魔化された。

 それでもオリビアが9歳の頃には第一王子パリヤは同い年の公爵令嬢との婚約が決まり「娘を王妃にする」という希望は断たれた。
 その後も王家に嫁がせる事を切望していたが、第二王子セルダも学園に入る直前には侯爵令嬢との婚約が決まった。
 オリビアはセルダの婚約が整った時「これで父も諦めるだろう」と思った。
 が、父は諦めず、生涯独身を公言している王弟ハリジュへオリビアを娶るよう働きかけた。
 そのため侯爵令嬢であるオリビアは、高位貴族の令息令嬢は通常十代前半には婚約を整えているにも関わらず、17歳になっても誰とも婚約していなかった。

 オリビアは、ハリジュは随分前から「結婚はしない」と公言をしているし、時間が経てば父も諦めるだろうと思っていた。
 周りの年の近い貴族令息は既に婚約しており、父が諦めた頃には、いやもう今現在、自分の嫁げる相手は身近にはいない。
 もしかしたら年の離れた相手への後妻や、他国の貴族などが結婚相手になるのか、と漠然と考えていた。

 しかし、オリビアが学園の三年生の時、運命が狂った。

 学園は15歳で入学し、四年間学び18歳で卒業する。貴族の令息令嬢は15歳までは家庭教師に学び学園へ入学するが、貴族でない者は家の都合により5歳から10歳には初等教育校へ入学し、数年間字や計算などを学び、成績優秀者やお金のある商家の子供などが15歳で学園へと入学する。

 学園は一学年が春期、秋期、冬期の三月期制で、春期と秋期の間に約二ヶ月の夏季休暇、秋期と冬期の間、冬期と春期の間にそれぞれ約二週間の休暇がある。
 春期の終わりには夏季休暇に入る前の舞踏会があり、冬期の終わりには卒業パーティーがあるので、貴族の令息令嬢は社交を学び、貴族でない者も貴族社会との繋がりを作ろうと励む場となる。

 オリビアが三年生の春期の終わりの舞踏会で、王太子となっていたパリヤが皆の前で運命の言葉を放った。

「私、パリヤ・ルーセントはアリシア・ウィルフィスとの婚約を破棄する!」

 当然、舞踏会の会場にいたオリビアは驚いた。
 パリヤの婚約者である公爵令嬢はその場で倒れ、パリヤは会場から連れ出された。

 その時のオリビアは驚いただけであったが、そこから事態は急展開を見せる。
 男爵令嬢と恋愛関係となり、一方的に婚約破棄を宣言したパリヤの廃太子、王位継承権の剥奪、王家からの排斥が決まり、セルダの立太子が決まり、セルダと侯爵令嬢との婚約が解消されたのだ。

「どうしてセルダ殿下の婚約が解消されたの?」
 ヒューゴに聞くと
「どうやら、セルダ殿下には妃に迎えたい令嬢がいるらしい。立太子式までにその令嬢が妃になる事を承諾すれば、その令嬢と婚約するが、承諾しなければ改めて婚約者を選定する、という事らしい」
 と言う。
「婚約解消された侯爵令嬢はどうなるの?」
「さあ。隣国の王族にでも嫁がせるんじゃないか?」
 オリビアの質問にヒューゴはにべもなく答える。
「それより」
 とオリビアに向き合うと、強い眼差しで言った。
「お前にも風が向いてきたぞ」

 オリビア自身には特に王妃、王太子妃になりたい、王族に嫁ぎたいと言った願望はないのだ。
 ヒューゴの言葉にオリビアは軽く目眩がした。

 秋期が始まり、すぐにオリビアはセルダが生徒会長を務める生徒会の行事の手伝いをするサポートメンバーにねじ込まれた。
「セルダ殿下と親交を深めつつ、殿下の意中の令嬢が誰かを探れ」
 とヒューゴに言われたが、オリビアにはセルダと親交を深める気持ちも、意中の令嬢を探る気もない。
 それでもヒューゴはいつの間にかセルダの意中の令嬢を絞り込んでいた。

「バーストン伯爵家の令嬢、名はリネット。この令嬢が殿下の意中の令嬢である可能性が一番高い。オリビアお前と同級生だろう?」
 リネットは隣のクラスで話した事はなかったが、同級生なのは間違いないので、オリビアは頷いた。
「はい」
「機会を窺って、その令嬢に『醜聞』を起こせ」
 ヒューゴの言葉に一瞬固まる。

 父は娘に「伯爵令嬢を陥れろ」と言ったのだ。

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