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番外編2-5
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オスカー編5
「これから?」
「このままここで働きたいならメグの戸籍を新たに作る事もできる。クロムウェル家の戸籍を正して伯爵令嬢として貴族と結婚する事もできる。…海外へ行く事だってできる」
オスカーがそう言うと、メグが目を見開く。
「戸籍を作る事ができるのですか?」
「貴族の戸籍でなければそんなに厳密ではないからな」
「そうなんですか…」
メグが俯く。
「メグ、どうした?」
「…いえ。何でもありません」
俯いたまま首を横に振る。
「いずれにせよ、領主様の正体は口外しない事は約束してもらわないといけないが…」
「それはもちろん!」
メグがパッと顔を上げた。赤い瞳と視線が合う。
「メグ」
オスカーが呼ぶと、メグは小首を傾げる。
「はい?」
「俺はメグが好きだ」
メグが真っ直ぐにオスカーを見た。
「駄目です。私は…」
「…そうか。…これからについては直ぐに決める事はない。少し考えてみれば良い」
オスカーは目を伏せ席を立った。
-----
「オスカー様、意外と小心者ですね」
「…シオ。お前遠慮をどこへやった?」
自室に現れたシオに開口一番そう言われて、オスカーは机に突っ伏す。
「元々そう言う物はそんなに持ち合わせていません。もっと押した方が良いのでは?」
「そんな事したら…怖がらせる」
シオは苦笑いをすると、クロムウェル伯爵家に関する報告を始めた。クロムウェル伯爵は「パリスの秘密を漏らせば国家転覆の疑いで王宮へ突き出す」「監視を着ける」「今後メグが望むなら戸籍を正す」「それ以外で二度とメグには関わらない」と約束させられ、領地へ送還されたそうだ。
「メグ」
オスカーが廊下で膝を着いて壺の乾拭きをしているメグに声を掛けると、メグはビクンと肩を震わせた。
「済まない。驚かせたな」
「いえ…」
メグは視線を彷徨わせる。
「最近、厨房に来ないから気になって…俺は厨房へ行かないからメグはジョンとニクスに料理を習うと良い」
「え?」
メグがオスカーの顔を見上げる。目が合った。
「俺も執務も忙しくなって来て、なかなか厨房にも行けないんだ。それに…俺の言った事は忘れて良いから」
オスカーは自分に出来る限りの優しい微笑みを浮かべる。
「じゃあ」
オスカーが踵を返すと、メグがオスカーの服の裾を掴んだ。
「メグ?」
振り向くと、メグが目に涙を溜めてオスカーを見ている。
「…どうした?」
オスカーはメグと目線の高さを合わせるように跪く。
「オスカー様…」
「うん?」
ポロポロと涙が溢れた。
「私も…オスカー様が…好きなんです。でも」
「…メグ、抱きしめて良いか?『でも』から後はそれから聞く」
オスカーはメグの言葉を遮って両手を広げる。
メグは無言でオスカーの胸に額を着けた。
ゆっくりと片手を背中に回し、片手で頭を押さえ髪を撫でた。
「…『でも』の前にもう一度俺の事好きって言って」
「オスカー様…意外と我儘ですね…好きですけど」
拗ねたように言うメグに思わず笑いが漏れた。
「はは。そうだな。『でも』の後に何を言われても、もうメグを離す気もないしな」
ぎゅうっとメグを抱きしめる。
「…オスカー様、私…ご存知の通り、処女じゃありません」
「うん」
「…家から逃げた後、本当に妊娠していたらどうしようって不安で不安で…馬車に酔っても『もしかして悪阻なんじゃ』って思ったり…その時にこんな事で悩む自分がすごく汚れているように…感じて…」
声が震える。オスカーはメグの背中を撫でた。
「ただでも『忌み子』なのに…こんな…汚れて…生きてる意味があるのか…死んだ方が…あのまま父に殺された…方が、良かったんじゃないかって…」
涙がオスカーの膝に落ちる。
「メグが生きててくれて良かった」
「う…うう…」
メグがオスカーの服を強く握る。肩が震えて、嗚咽が漏れた。
「メグ、声を出して泣いて良いんだ」
「…う…ああああ」
泣きじゃくるメグを改めて抱きしめた。
「…オスカー様、私…伯爵令嬢に戻っても、戸籍を作ってもらって平民になっても、子爵家の跡取りであるオスカー様とは結婚できませんよ」
泣いて、落ち着いたメグはそう言い出す。まだオスカーの腕の中だ。
下位貴族である子爵家が上位貴族である伯爵令嬢を娶る事は通常あり得ない。子爵家が平民を娶る事も同じだ。
「…結婚、しないつもりならどうでも良いでしょうけど」
拗ねた口調がかわいらしい。オスカーはメグの頭の上に自分の顎を乗せた。
「…重いです」
「そんな事、どうにでもするさ。俺の父だって侯爵家の嫡男だったのに子爵家の母と結婚したしな」
「喋ると顎が刺さって痛いです…そうなんですか?」
「メグ、上向いて?」
「…今、顔ぐちゃぐちゃなので嫌です」
「ん?聞こえない」
オスカーは両手でメグの頬を包んで自分の方を向かせた。
「オスカー様…狡い」
涙で赤くなった目尻、頬も耳も赤くなるメグに思わず微笑む。
「言っただろ?もう離す気ないって」
そのままゆっくりと口付けた。
「オスカー様、愛の告白は廊下ではない方が良かったのでは?」
「シオ…見てたのか?」
「影ですので、多少は。それにダグラス様とオリビア様もこっそり覗いてましたよ」
「…何やってんだ」
オスカーは机に突っ伏す。
「ところで、メグの戸籍を作った後、セヴァリー家の養子にするという手はいかがでしょう?」
「ん?」
「子供のいない家が男子も女子も養子を取り、養子同士を結婚させる話、割と聞きますし」
「…そうだな。俺の事を考えてくれたのか?ありがとうシオ」
信頼関係ができて来たのか、と思うオスカーに、シオは言う。
「いえ。オスカー様、面白いのもので」
そんなシオに「信頼関係ってこういうのじゃないだろ!」と叫ぶオスカーなのであった。
ー完ー
「これから?」
「このままここで働きたいならメグの戸籍を新たに作る事もできる。クロムウェル家の戸籍を正して伯爵令嬢として貴族と結婚する事もできる。…海外へ行く事だってできる」
オスカーがそう言うと、メグが目を見開く。
「戸籍を作る事ができるのですか?」
「貴族の戸籍でなければそんなに厳密ではないからな」
「そうなんですか…」
メグが俯く。
「メグ、どうした?」
「…いえ。何でもありません」
俯いたまま首を横に振る。
「いずれにせよ、領主様の正体は口外しない事は約束してもらわないといけないが…」
「それはもちろん!」
メグがパッと顔を上げた。赤い瞳と視線が合う。
「メグ」
オスカーが呼ぶと、メグは小首を傾げる。
「はい?」
「俺はメグが好きだ」
メグが真っ直ぐにオスカーを見た。
「駄目です。私は…」
「…そうか。…これからについては直ぐに決める事はない。少し考えてみれば良い」
オスカーは目を伏せ席を立った。
-----
「オスカー様、意外と小心者ですね」
「…シオ。お前遠慮をどこへやった?」
自室に現れたシオに開口一番そう言われて、オスカーは机に突っ伏す。
「元々そう言う物はそんなに持ち合わせていません。もっと押した方が良いのでは?」
「そんな事したら…怖がらせる」
シオは苦笑いをすると、クロムウェル伯爵家に関する報告を始めた。クロムウェル伯爵は「パリスの秘密を漏らせば国家転覆の疑いで王宮へ突き出す」「監視を着ける」「今後メグが望むなら戸籍を正す」「それ以外で二度とメグには関わらない」と約束させられ、領地へ送還されたそうだ。
「メグ」
オスカーが廊下で膝を着いて壺の乾拭きをしているメグに声を掛けると、メグはビクンと肩を震わせた。
「済まない。驚かせたな」
「いえ…」
メグは視線を彷徨わせる。
「最近、厨房に来ないから気になって…俺は厨房へ行かないからメグはジョンとニクスに料理を習うと良い」
「え?」
メグがオスカーの顔を見上げる。目が合った。
「俺も執務も忙しくなって来て、なかなか厨房にも行けないんだ。それに…俺の言った事は忘れて良いから」
オスカーは自分に出来る限りの優しい微笑みを浮かべる。
「じゃあ」
オスカーが踵を返すと、メグがオスカーの服の裾を掴んだ。
「メグ?」
振り向くと、メグが目に涙を溜めてオスカーを見ている。
「…どうした?」
オスカーはメグと目線の高さを合わせるように跪く。
「オスカー様…」
「うん?」
ポロポロと涙が溢れた。
「私も…オスカー様が…好きなんです。でも」
「…メグ、抱きしめて良いか?『でも』から後はそれから聞く」
オスカーはメグの言葉を遮って両手を広げる。
メグは無言でオスカーの胸に額を着けた。
ゆっくりと片手を背中に回し、片手で頭を押さえ髪を撫でた。
「…『でも』の前にもう一度俺の事好きって言って」
「オスカー様…意外と我儘ですね…好きですけど」
拗ねたように言うメグに思わず笑いが漏れた。
「はは。そうだな。『でも』の後に何を言われても、もうメグを離す気もないしな」
ぎゅうっとメグを抱きしめる。
「…オスカー様、私…ご存知の通り、処女じゃありません」
「うん」
「…家から逃げた後、本当に妊娠していたらどうしようって不安で不安で…馬車に酔っても『もしかして悪阻なんじゃ』って思ったり…その時にこんな事で悩む自分がすごく汚れているように…感じて…」
声が震える。オスカーはメグの背中を撫でた。
「ただでも『忌み子』なのに…こんな…汚れて…生きてる意味があるのか…死んだ方が…あのまま父に殺された…方が、良かったんじゃないかって…」
涙がオスカーの膝に落ちる。
「メグが生きててくれて良かった」
「う…うう…」
メグがオスカーの服を強く握る。肩が震えて、嗚咽が漏れた。
「メグ、声を出して泣いて良いんだ」
「…う…ああああ」
泣きじゃくるメグを改めて抱きしめた。
「…オスカー様、私…伯爵令嬢に戻っても、戸籍を作ってもらって平民になっても、子爵家の跡取りであるオスカー様とは結婚できませんよ」
泣いて、落ち着いたメグはそう言い出す。まだオスカーの腕の中だ。
下位貴族である子爵家が上位貴族である伯爵令嬢を娶る事は通常あり得ない。子爵家が平民を娶る事も同じだ。
「…結婚、しないつもりならどうでも良いでしょうけど」
拗ねた口調がかわいらしい。オスカーはメグの頭の上に自分の顎を乗せた。
「…重いです」
「そんな事、どうにでもするさ。俺の父だって侯爵家の嫡男だったのに子爵家の母と結婚したしな」
「喋ると顎が刺さって痛いです…そうなんですか?」
「メグ、上向いて?」
「…今、顔ぐちゃぐちゃなので嫌です」
「ん?聞こえない」
オスカーは両手でメグの頬を包んで自分の方を向かせた。
「オスカー様…狡い」
涙で赤くなった目尻、頬も耳も赤くなるメグに思わず微笑む。
「言っただろ?もう離す気ないって」
そのままゆっくりと口付けた。
「オスカー様、愛の告白は廊下ではない方が良かったのでは?」
「シオ…見てたのか?」
「影ですので、多少は。それにダグラス様とオリビア様もこっそり覗いてましたよ」
「…何やってんだ」
オスカーは机に突っ伏す。
「ところで、メグの戸籍を作った後、セヴァリー家の養子にするという手はいかがでしょう?」
「ん?」
「子供のいない家が男子も女子も養子を取り、養子同士を結婚させる話、割と聞きますし」
「…そうだな。俺の事を考えてくれたのか?ありがとうシオ」
信頼関係ができて来たのか、と思うオスカーに、シオは言う。
「いえ。オスカー様、面白いのもので」
そんなシオに「信頼関係ってこういうのじゃないだろ!」と叫ぶオスカーなのであった。
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