王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん

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 執務室に籠ったレイモンド、グレッグ、ジーン、ネイハム、今日はジーンとネイハムも珍しく主人と同じソファの向かいに座っている。
 グレッグが話を切り出した。
「アリシアに恋人を作りましょう」
「…それで王家からの要請を断ると?」
 レイモンドが言うと、グレッグは頷く。
「王太子妃になる者には何より清廉である事が求められますから」
「…だが、それだけではまだ弱いな。それにパリヤ殿下と婚約していた頃から恋人がいたと思われては、今度はアリシアに不義の疑惑がかかる」
 レイモンドが言うとグレッグは
「パリヤ殿下が『真実の愛』と言い出したのを利用して、アリシアも婚約解消された事で『真実の愛』に気付いた、というのは?」
「悪くないが、相手はどうする?下手な男では辻褄が合わんぞ」
「俺は、ジーンが良いと思います」
 グレッグが言うと、ネイハムが瞠目する。
「ジーンを?アリシア様のお相手に?」
「ジーンはアリシアと幼なじみで、ウィルフィス家の執事の息子で兄の執事です。以前から好意は持っていたが、公爵家の令嬢と使用人、自分には婚約者がいて、当然その王子に嫁するため、好意は心に秘めていた。という設定で」
 レイモンドが「うむ」と頷く。
「ジーンは?それで良いのか?」
 レイモンドに問いかけられて、ジーンは頷いた。

 それでは明日からこの話を広めよう。と話し合いを終えて、ジーンとネイハムが執務室を出る。
 レイモンドはグレッグに
「…この設定では、アリシアとジーンが恋人同士なるだけでは話は終わるまい?」
 と言う。
「ばれましたか」
 グレッグは苦笑いをする。
 アリシアとジーンが恋人同士になったと知れば、父公爵としては「使用人と恋愛などあり得ない」と激怒し、秘密裏に仲を裂こうとしなければ不自然なのだ。
 つまり、この話が外に漏れるとすると、正式に父が二人を認めたから、という事になる。
 ジーンはどう考えているか分からないが、少なくともグレッグは二人を本当の恋人同士にしたいと、そして父に認めさせたいと考えている、とレイモンドは悟っていた。
「…アリシアの想い人はジーンなのか?」
「正直、分かりません。俺の企み通りになるかどうかも…父上、反対しますか?」
 レイモンドは大きなため息を吐いた。
「アリシアが…幸せになってくれるなら…それで良い」

-----

 結果、パリヤは王位継承権剥奪、王家から廃籍、将来的な王位継承への影響を避けるため、子供を作れないよう処置をされた上、少しの領地を与えられ爵位のない領主として僻地へ送られる事となった。
 マリーナは男爵家から勘当され、修道院へ入る事に。
 この修道院は一定の期間まじめに勤め、更に寄付金を収めれば出る事が出来るので、パリヤが領地で寄付金を貯め、数年~十年後くらいにはマリーナを娶ることができるだろう。

「いつか二人が結ばれると良いな」
 アリシアが呟くと、テーブルを挟んで向かいに座ったホリーが苦笑いする。
「アリシア、案外お人好しね」
「そうかしら?」
「私は正直甘い処分だなと思うし、二人が結ばれるとしても何年も先だし、二人が結ばれなくても『そりゃそうよね』としか思わないわ」
 ホリーが肩を竦める。
 するとノックの音がして、アリシアが返事をするとグレッグと、後に続いてジーンが部屋に入って来る。
「アリシア、話があるんだ」
 グレッグがアリシアをホリーの隣に移動するよう促し、二人の向かいのソファにグレッグが座り、ジーンはグレッグの後ろに立つ。
「お兄様お話って?」
「うん。アリシアを王太子妃にって王宮からの要請を、できるだけ穏便に断る方法を考えたんだ」
「穏便に?」
「そう。王命が出てしまう前に。アリシア」
「はい」
 アリシアは背筋を伸ばす。
「お前、ジーンと結婚しろ」
「……」
「……」
「……」
 グレッグ以外の三人が思わず黙り込む。まず口を開いたのはホリーだった。
「…どういう事ですか?」
 その次は
「はあ!?グレッグ、結婚って、どういう事だ!?」
 大きく目を開き驚愕の表情を浮かべたジーンがグレッグに迫る。
「まあまあまあ、ジーン、ちょっと待って。アリシアに順を追って説明を…アリシア?」
 アリシアは固まったまま身動き一つしない。ホリーがアリシアの名を呼びながら腕に触れる。
「…グレッグ様、アリシア、目を開けたまま気を失ってます」

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