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「スコット・ロンダムが釈放される事になりました」
マルセル家の応接室で、ネイト様が申し訳なさそうな表情で父と私に頭を下げた。
「そうか。まあ仕方のない事だ。君が頭を下げる必要はないよ」
お父様が言う。
そうよね。私が攫われた事を表に出さないとなると、犯人であるロンダム先生にも表立った罰は与えられないのよね。
それからネイト様はお父様と私に、ロンダム先生には監視を付けるし、私にも護衛を付けて、先生を私には近寄らせないようにすると仰った。
それを聞いてからお父様は退出し、応接室には私とネイト様の二人だけになる。
もちろん扉は開いていて、アンが部屋の外で待機しているけど。
すっかりネイト様が好きって自覚してしまった私は目の前のネイト様にドキドキしてしまって、ついつい視線が泳いでしまう。
「クラリッサ嬢、もう一つ申し訳ないのですが」
二人だけになって、少し沈黙した後、ネイト様がそう切り出した。
ネイト様を見ると、本当に申し訳なさそうで、何を言われるのかと思わず身構える。
「…なんでしょう?」
「実は、王太子妃殿下が明日から二週間、ご実家の領地へ里下がりをされます。私も…その警護の任に就く事になりました」
「……」
つまり、ネイト様はレオノーラ殿下に付いて領地へ行かれるのね。
「私が王都に戻るまでどうにかロンダムを釈放させないよう交渉したのですが…力及ばす申し訳ありません」
膝に手をついて頭を下げるネイト様に、私はブンブンと首を横に振った。
「いえ。私にも護衛をつけてくださるんですし、心配ないですよ」
ネイト様は頭を上げて私を見ると、眉を顰める。
「妃殿下の護衛を他の者に代える事も考えたんですが、どうしてもできなくて…」
「……」
レオノーラ殿下の護衛を、他の人に任せる事はできないって…事よね…
……でも、乗り掛かった船とはいえ、本当はネイト様が私の事を心配する筋合いもないんだわ。殿下の護衛の交代だって、考えてみてくださっただけでもありがたい事よ。うん。そうよ。
「私は大丈夫ですから」
私はネイト様にニッコリと笑って見せた。
-----
レオノーラ殿下一行が王都をたった二日後、ロンダム先生が釈放されたと私に知らせに来てくださったのはジョーンズ様とザウル様という紺色の髪に青い瞳の近衛騎士様だった。
「俺はシルベストと同級です。あいつ怖いから話した事はないですけどね」
そう言って笑うザウル様とジョーンズ様が主に私に護衛として付いてくださるらしい。もちろん他の方たちと交代で。
「ダンヴァーズ分団長はロンダムを学園の教師を辞めさせて王都から追放できないかと上へ掛け合ってましたけど、結局それもすぐには難しいみたいで、継続して要求していく方針らしいです」
我が家の応接室でジョーンズ様が言うと、ザウル様も頷く。
「表向き、ロンダムは『なにもしていない』事になっているからなあ…下手に処罰して、周りに何故処罰されたのかを勘繰られても困るし、扱いが難しいですよね」
「…この短期間にクラリッサ嬢を諦めたとも思えないしな」
あの嫌な感じの視線と、話の通じなさを思い出して少し寒気がした。
「まあ俺たち第四分団があの男をクラリッサ嬢に近付けさせませんから」
ザウル様が力強く言ってくださる。
ジョーンズ様もその言葉に頷いた。
「分団長、出立前に俺たちにも『偏執狂者がそう簡単に諦めるとは思えない。気を抜くな。絶対にクラリッサ嬢を護れ』って何度も何度も言ってましたからね」
「あの、ネイト様が偏執狂者を許せないと、私の事も護ろうとしてくださるのは…過去何かがあったからなんですか?ご自分が何かをされた訳ではないとは仰ってましたけど…」
私がそう言うと、二人は首を傾げる。
「さあ…?俺は聞いた事はありませんよ」
ジョーンズ様がニコリと笑った。
「貴族社会では今回のように秘匿される事も多いですから、表に出ない何かがあったのかもしれませんね。『自分が何かされた訳でない』と言うなら、誰かに何かがあったのかな?…例えば家族、友人、恋人…」
恋人。
ザウル様の言葉で胸が騒めく。
「ザウル、憶測で物を言うなよ」
「あー…そうですね。すみません」
ジョーンズ様に嗜められて、ザウル様がバツが悪そうに頭を掻いた。
「スコット・ロンダムが釈放される事になりました」
マルセル家の応接室で、ネイト様が申し訳なさそうな表情で父と私に頭を下げた。
「そうか。まあ仕方のない事だ。君が頭を下げる必要はないよ」
お父様が言う。
そうよね。私が攫われた事を表に出さないとなると、犯人であるロンダム先生にも表立った罰は与えられないのよね。
それからネイト様はお父様と私に、ロンダム先生には監視を付けるし、私にも護衛を付けて、先生を私には近寄らせないようにすると仰った。
それを聞いてからお父様は退出し、応接室には私とネイト様の二人だけになる。
もちろん扉は開いていて、アンが部屋の外で待機しているけど。
すっかりネイト様が好きって自覚してしまった私は目の前のネイト様にドキドキしてしまって、ついつい視線が泳いでしまう。
「クラリッサ嬢、もう一つ申し訳ないのですが」
二人だけになって、少し沈黙した後、ネイト様がそう切り出した。
ネイト様を見ると、本当に申し訳なさそうで、何を言われるのかと思わず身構える。
「…なんでしょう?」
「実は、王太子妃殿下が明日から二週間、ご実家の領地へ里下がりをされます。私も…その警護の任に就く事になりました」
「……」
つまり、ネイト様はレオノーラ殿下に付いて領地へ行かれるのね。
「私が王都に戻るまでどうにかロンダムを釈放させないよう交渉したのですが…力及ばす申し訳ありません」
膝に手をついて頭を下げるネイト様に、私はブンブンと首を横に振った。
「いえ。私にも護衛をつけてくださるんですし、心配ないですよ」
ネイト様は頭を上げて私を見ると、眉を顰める。
「妃殿下の護衛を他の者に代える事も考えたんですが、どうしてもできなくて…」
「……」
レオノーラ殿下の護衛を、他の人に任せる事はできないって…事よね…
……でも、乗り掛かった船とはいえ、本当はネイト様が私の事を心配する筋合いもないんだわ。殿下の護衛の交代だって、考えてみてくださっただけでもありがたい事よ。うん。そうよ。
「私は大丈夫ですから」
私はネイト様にニッコリと笑って見せた。
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レオノーラ殿下一行が王都をたった二日後、ロンダム先生が釈放されたと私に知らせに来てくださったのはジョーンズ様とザウル様という紺色の髪に青い瞳の近衛騎士様だった。
「俺はシルベストと同級です。あいつ怖いから話した事はないですけどね」
そう言って笑うザウル様とジョーンズ様が主に私に護衛として付いてくださるらしい。もちろん他の方たちと交代で。
「ダンヴァーズ分団長はロンダムを学園の教師を辞めさせて王都から追放できないかと上へ掛け合ってましたけど、結局それもすぐには難しいみたいで、継続して要求していく方針らしいです」
我が家の応接室でジョーンズ様が言うと、ザウル様も頷く。
「表向き、ロンダムは『なにもしていない』事になっているからなあ…下手に処罰して、周りに何故処罰されたのかを勘繰られても困るし、扱いが難しいですよね」
「…この短期間にクラリッサ嬢を諦めたとも思えないしな」
あの嫌な感じの視線と、話の通じなさを思い出して少し寒気がした。
「まあ俺たち第四分団があの男をクラリッサ嬢に近付けさせませんから」
ザウル様が力強く言ってくださる。
ジョーンズ様もその言葉に頷いた。
「分団長、出立前に俺たちにも『偏執狂者がそう簡単に諦めるとは思えない。気を抜くな。絶対にクラリッサ嬢を護れ』って何度も何度も言ってましたからね」
「あの、ネイト様が偏執狂者を許せないと、私の事も護ろうとしてくださるのは…過去何かがあったからなんですか?ご自分が何かをされた訳ではないとは仰ってましたけど…」
私がそう言うと、二人は首を傾げる。
「さあ…?俺は聞いた事はありませんよ」
ジョーンズ様がニコリと笑った。
「貴族社会では今回のように秘匿される事も多いですから、表に出ない何かがあったのかもしれませんね。『自分が何かされた訳でない』と言うなら、誰かに何かがあったのかな?…例えば家族、友人、恋人…」
恋人。
ザウル様の言葉で胸が騒めく。
「ザウル、憶測で物を言うなよ」
「あー…そうですね。すみません」
ジョーンズ様に嗜められて、ザウル様がバツが悪そうに頭を掻いた。
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