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ゴルディ侯爵邸を久しぶりに訪ねて来たチャールズは、白いカバーを掛けた一冊の本をセドリックの前に置きながら言った。
「セドリック、リネットをリリアの『隠れ蓑』にする気なら私は婚約は許さないからな」
「チャールズ兄さん?」
「とにかく、この本を読め。もしお前がリリアに対して少しでもこのような…気持ちがあるなら、正直に言え」
そう言い残して帰って行った。
セドリックは訳が分からないまま、本を持って自室に戻る。
そして本を読み、チャールズの言いたい事を悟った。
今度はセドリックが本を持ってバーストン伯爵邸を訪ねる。
「つまりチャールズ兄さんは、俺がリリアにそういう気持ちを持っていて、リネットとの結婚をリリアとの関係のカムフラージュに利用しようとしているのでは、と思ったと言う事ですか?」
応接室のソファで足を組んで「そうだ」とチャールズは言った。
「…そんなに俺はシスコンに見えますか?」
セドリックが困ったように言うと、チャールズは
「見える、じゃなく、紛うことなくシスコンだ」
と答える。
確かにリリアはかわいいし、年頃になれば心配も増えるだろう。
それでもセドリックにとって妹は妹で、それはリネットとは全然違う存在なのだった。
「それで、本を返そうとしたら『リリアはまだ10歳だ。成長するにつれてそういう気が起こってはいけないから戒めに持っておけ』と…多分、あの頃、チャールズ兄さんも結婚したばかりで、本の置き場所に困るから受取りを拒否されたんだと思う」
苦笑いをすると、セドリックは自分の髪の毛を掻きむしるようにクシャクシャにする。
「俺も置き場所に困って引き出しに仕舞っていたんだ。…まさかよりによってリネットに見つかるとは思わなかった」
「セドリック…」
リネットはそっと手を伸ばし、セドリックの背中に触れた。
ゆっくりと振り向いたセドリックに背中に触れた手を取られ、軽く引かれてそのまま抱き締められる。
「リネット」
甘い声で名前を呼ばれて、頬が熱くなるのを感じながらリネットもセドリックの背に腕を回す。
「リネットが小さい頃からずっと好きなんだ。とんだ変態に好かれて災難だろうが、リネットは誰にも渡さない」
きっぱりと言われて強く抱き込まれる。
「災難じゃないわ」
リネットはセドリックの胸に頬を摺り寄せる。
「私もずっとセディが好きだもん…」
すると、セドリックは腕を緩めてリネットの顔を覗き込んで来た。セドリックの瞳は少し潤んでいる。
「…本当に?」
微かに震える声でそう問われて、リネットはセドリックの目を見ながら頷く。
そのまま、唇が重なった。
-----
「私の醜聞はどうでも良いけれど、オリビア様のために穏便に済ませる事はできないかしら?」
翌日、まだ安静に、と言われていたリネットはベッドのヘッドボードにもたれて座りながら言った。
「まあリネット、どうでも良くはないでしょう?」
リリアがベッドサイドに置いた椅子に座って言う。
「でもオリビア様はエバンス侯爵に強要されただけなのよ」
「それでもエバンス侯爵を処罰しない訳にいかないから、オリビア様も今まで通りとはいかないわ。はいこれ美味しいわよ」
リリアがリネットにカップケーキを渡してくれる。
「そうなんだけど」
リネットは渡されたカップケーキを一口齧る。行儀は悪いが、気心知れた幼なじみの間柄なのでどちらも気にしない。
「本当に美味しいわね」
「そうでしょ?これハリジュ殿下のお手製なのよ」
「ハリジュ殿下!?」
「気分転換にお菓子をお作りになるらしいわ。お菓子作りって、測って混ぜて…薬品の調合と似ているんですって。たまに届けてくださるの」
これも子供扱いなのかしら、とリリアは笑った。
チャールズとセドリックは報告や事後処理のため、王宮に行っている。
「リネットがいなくなった事、学園の先生たちは知っているし、今日はリネットも私もオリビア様もお休みしているから、生徒間でも何かしら噂にはなっているでしょうね」
リリアは紅茶を飲みながらため息混じりに言う。
「そうよね…」
リネットもため息を吐く。
「これでセルダ殿下の求婚もなかった事になるのかしら」
「…そうね。そうなると思うわ」
「リネットが穏便に済ませたいのは、セルダ殿下のためじゃないの?そうしないと殿下の求婚を受けられないから」
リリアが目をキラリと光らせてリネットに迫る。
リネットはぶんぶんと首を振った。
「殿下には、お断りするつもりだったの。本当よ」
「そうか…残念だな」
男性の声が聞こえて来て、リネットとリリアはドアの方へ向く。
ドアの外に立っていたのはセルダだった。
ゴルディ侯爵邸を久しぶりに訪ねて来たチャールズは、白いカバーを掛けた一冊の本をセドリックの前に置きながら言った。
「セドリック、リネットをリリアの『隠れ蓑』にする気なら私は婚約は許さないからな」
「チャールズ兄さん?」
「とにかく、この本を読め。もしお前がリリアに対して少しでもこのような…気持ちがあるなら、正直に言え」
そう言い残して帰って行った。
セドリックは訳が分からないまま、本を持って自室に戻る。
そして本を読み、チャールズの言いたい事を悟った。
今度はセドリックが本を持ってバーストン伯爵邸を訪ねる。
「つまりチャールズ兄さんは、俺がリリアにそういう気持ちを持っていて、リネットとの結婚をリリアとの関係のカムフラージュに利用しようとしているのでは、と思ったと言う事ですか?」
応接室のソファで足を組んで「そうだ」とチャールズは言った。
「…そんなに俺はシスコンに見えますか?」
セドリックが困ったように言うと、チャールズは
「見える、じゃなく、紛うことなくシスコンだ」
と答える。
確かにリリアはかわいいし、年頃になれば心配も増えるだろう。
それでもセドリックにとって妹は妹で、それはリネットとは全然違う存在なのだった。
「それで、本を返そうとしたら『リリアはまだ10歳だ。成長するにつれてそういう気が起こってはいけないから戒めに持っておけ』と…多分、あの頃、チャールズ兄さんも結婚したばかりで、本の置き場所に困るから受取りを拒否されたんだと思う」
苦笑いをすると、セドリックは自分の髪の毛を掻きむしるようにクシャクシャにする。
「俺も置き場所に困って引き出しに仕舞っていたんだ。…まさかよりによってリネットに見つかるとは思わなかった」
「セドリック…」
リネットはそっと手を伸ばし、セドリックの背中に触れた。
ゆっくりと振り向いたセドリックに背中に触れた手を取られ、軽く引かれてそのまま抱き締められる。
「リネット」
甘い声で名前を呼ばれて、頬が熱くなるのを感じながらリネットもセドリックの背に腕を回す。
「リネットが小さい頃からずっと好きなんだ。とんだ変態に好かれて災難だろうが、リネットは誰にも渡さない」
きっぱりと言われて強く抱き込まれる。
「災難じゃないわ」
リネットはセドリックの胸に頬を摺り寄せる。
「私もずっとセディが好きだもん…」
すると、セドリックは腕を緩めてリネットの顔を覗き込んで来た。セドリックの瞳は少し潤んでいる。
「…本当に?」
微かに震える声でそう問われて、リネットはセドリックの目を見ながら頷く。
そのまま、唇が重なった。
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「私の醜聞はどうでも良いけれど、オリビア様のために穏便に済ませる事はできないかしら?」
翌日、まだ安静に、と言われていたリネットはベッドのヘッドボードにもたれて座りながら言った。
「まあリネット、どうでも良くはないでしょう?」
リリアがベッドサイドに置いた椅子に座って言う。
「でもオリビア様はエバンス侯爵に強要されただけなのよ」
「それでもエバンス侯爵を処罰しない訳にいかないから、オリビア様も今まで通りとはいかないわ。はいこれ美味しいわよ」
リリアがリネットにカップケーキを渡してくれる。
「そうなんだけど」
リネットは渡されたカップケーキを一口齧る。行儀は悪いが、気心知れた幼なじみの間柄なのでどちらも気にしない。
「本当に美味しいわね」
「そうでしょ?これハリジュ殿下のお手製なのよ」
「ハリジュ殿下!?」
「気分転換にお菓子をお作りになるらしいわ。お菓子作りって、測って混ぜて…薬品の調合と似ているんですって。たまに届けてくださるの」
これも子供扱いなのかしら、とリリアは笑った。
チャールズとセドリックは報告や事後処理のため、王宮に行っている。
「リネットがいなくなった事、学園の先生たちは知っているし、今日はリネットも私もオリビア様もお休みしているから、生徒間でも何かしら噂にはなっているでしょうね」
リリアは紅茶を飲みながらため息混じりに言う。
「そうよね…」
リネットもため息を吐く。
「これでセルダ殿下の求婚もなかった事になるのかしら」
「…そうね。そうなると思うわ」
「リネットが穏便に済ませたいのは、セルダ殿下のためじゃないの?そうしないと殿下の求婚を受けられないから」
リリアが目をキラリと光らせてリネットに迫る。
リネットはぶんぶんと首を振った。
「殿下には、お断りするつもりだったの。本当よ」
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