24 / 30
23
しおりを挟む
23
「ああ、リリア嬢、ここにいて。リネットもそのままで」
セルダは部屋を出ようと立ち上がったリリアを制する。
リリアはそのまま椅子に座り直した。確かにここでリネットとセルダを二人きりにする事はできない。
「リネット、怖い思いをさせてすまなかった」
頭を下げようとするセルダに、リネットは慌てて手を振る。王族に頭を下げさせる訳にはいかないのだ。
「殿下のせいではありませんから!」
「それでも私の婚約者騒動のせいだ」
セルダが苦しげに言うと、リネットは肩を竦める。
「…伝染するのかしら?」
「え?」
「ん?」
リネットの言葉に、リリアとセルダが首を傾げる。
「『真実の愛』って伝染するのかしら、と思ったんです」
「「伝染?」」
リリアとセルダの声が重なる。
リネットは頷いた。
「パリヤ殿下が『真実の愛』を見つけたら、アリシア様も『真実の愛』を貫くと言われて…セルダ殿下も…」
リネットが眉を寄せて言うと、リリアがクスクスと笑う。
「確かにそうね。伝染しているわ」
セルダもふと表情を緩めた。
「そうだな」
リリアは立ち上がってセルダに向けて礼を取る。
「セルダ殿下、私も『真実の愛』を見つけましたわ。もっとも相手はそう思っておられないかも知れませんが」
「叔父上か…」
リリアはにっこりと笑う。
「殿下にも『真実の愛』が見つかるようにお祈りしております」
つまり、セルダにとってのリネットは「そう」ではない、と言う事だ。
「…リネット」
セルダは俯いてふう~と息を吐くと、顔を上げて真っ直ぐにリネットを見る。
「はい」
「諦めきれなくて、リネットの気持ちを確認したくて、来てしまった。リネットの気持ちが私にあるなら、反対意見など、どうとでもしようと」
リネットが困ったように眉を寄せるのを見て、セルダは続けた。
「…君も、見つけたのかい?」
リネットは背筋を伸ばし、はっきりと「はい」と答えた。
-----
エバンス侯爵家は爵位を剥奪され、取り潰される事となった。
リネットがセルダの婚約者候補であった事は公表されないままだったが、諸々の事柄を繋ぎ合わせ、そうであった事は薄っすらと悟られているようだ。
リネットとリリアはしばらく学園を休んだが、何事もなかったかのように復帰し、表立っては誰も何も言わなかった。
オリビアは退学し、家族で親戚のいる遠い領地へ旅立ったそうだ。
「リネット!聞いて!」
リリアがリネットの寮の部屋へ駆け込んで来る。満面の笑みだ。
「どうしたのリリア」
「ハリジュ殿下が卒業パーティーにドレスを贈ってくださるって!」
リリアがリネットの手を取り、上下にぶんぶんと振る。
ドレスを贈られるという事は、ハリジュはリリアをパートナーに選んだという事だ。
「許さないぞ!リリア」
リリアの後からセドリックが入って来る。
「あんなおっさんがリリアの相手だなんて冗談じゃない!」
「セディ」
さすがに王族に「おっさん」は不敬だろう。
「兄様は誰であろうと気に入らないだけでしょう!?」
リリアがそっぽを向く。
「そんな事はない。リリアの相手は若くて有能で見目麗しくて家柄も良くてリリアを大切にしてくれて…」
「『若い』以外は当てはまってるわ」
リネットがボソッと呟く。
「リネット!?」
「そうよね。さすがリネット!」
相変わらずの賑やかさだ。
「セディは私にドレスを贈ってくれないの?」
「!」
リネットが上目遣いでセドリックを見ながら言うと、セドリックは言葉に詰まる。
「…色は青で、装飾は金だ」
そして絞り出すように言った。
考えていたらしい。青はセドリックの瞳の色。金は髪の色だ。
「独占欲丸出しね。兄様」
「うるさい!」
リリアに揶揄われてセドリックは怒っているが、耳が赤くなっていて、リネットはくすぐったいような気持ちになる。
じゃあ私はセディにクラバットを贈ろうかな。
新しいリボンも良いかも。
今日もセドリックの髪に結ばれているリボンを見て、リネットはそっと微笑んだ。
色はもちろんオレンジだ。
「ああ、リリア嬢、ここにいて。リネットもそのままで」
セルダは部屋を出ようと立ち上がったリリアを制する。
リリアはそのまま椅子に座り直した。確かにここでリネットとセルダを二人きりにする事はできない。
「リネット、怖い思いをさせてすまなかった」
頭を下げようとするセルダに、リネットは慌てて手を振る。王族に頭を下げさせる訳にはいかないのだ。
「殿下のせいではありませんから!」
「それでも私の婚約者騒動のせいだ」
セルダが苦しげに言うと、リネットは肩を竦める。
「…伝染するのかしら?」
「え?」
「ん?」
リネットの言葉に、リリアとセルダが首を傾げる。
「『真実の愛』って伝染するのかしら、と思ったんです」
「「伝染?」」
リリアとセルダの声が重なる。
リネットは頷いた。
「パリヤ殿下が『真実の愛』を見つけたら、アリシア様も『真実の愛』を貫くと言われて…セルダ殿下も…」
リネットが眉を寄せて言うと、リリアがクスクスと笑う。
「確かにそうね。伝染しているわ」
セルダもふと表情を緩めた。
「そうだな」
リリアは立ち上がってセルダに向けて礼を取る。
「セルダ殿下、私も『真実の愛』を見つけましたわ。もっとも相手はそう思っておられないかも知れませんが」
「叔父上か…」
リリアはにっこりと笑う。
「殿下にも『真実の愛』が見つかるようにお祈りしております」
つまり、セルダにとってのリネットは「そう」ではない、と言う事だ。
「…リネット」
セルダは俯いてふう~と息を吐くと、顔を上げて真っ直ぐにリネットを見る。
「はい」
「諦めきれなくて、リネットの気持ちを確認したくて、来てしまった。リネットの気持ちが私にあるなら、反対意見など、どうとでもしようと」
リネットが困ったように眉を寄せるのを見て、セルダは続けた。
「…君も、見つけたのかい?」
リネットは背筋を伸ばし、はっきりと「はい」と答えた。
-----
エバンス侯爵家は爵位を剥奪され、取り潰される事となった。
リネットがセルダの婚約者候補であった事は公表されないままだったが、諸々の事柄を繋ぎ合わせ、そうであった事は薄っすらと悟られているようだ。
リネットとリリアはしばらく学園を休んだが、何事もなかったかのように復帰し、表立っては誰も何も言わなかった。
オリビアは退学し、家族で親戚のいる遠い領地へ旅立ったそうだ。
「リネット!聞いて!」
リリアがリネットの寮の部屋へ駆け込んで来る。満面の笑みだ。
「どうしたのリリア」
「ハリジュ殿下が卒業パーティーにドレスを贈ってくださるって!」
リリアがリネットの手を取り、上下にぶんぶんと振る。
ドレスを贈られるという事は、ハリジュはリリアをパートナーに選んだという事だ。
「許さないぞ!リリア」
リリアの後からセドリックが入って来る。
「あんなおっさんがリリアの相手だなんて冗談じゃない!」
「セディ」
さすがに王族に「おっさん」は不敬だろう。
「兄様は誰であろうと気に入らないだけでしょう!?」
リリアがそっぽを向く。
「そんな事はない。リリアの相手は若くて有能で見目麗しくて家柄も良くてリリアを大切にしてくれて…」
「『若い』以外は当てはまってるわ」
リネットがボソッと呟く。
「リネット!?」
「そうよね。さすがリネット!」
相変わらずの賑やかさだ。
「セディは私にドレスを贈ってくれないの?」
「!」
リネットが上目遣いでセドリックを見ながら言うと、セドリックは言葉に詰まる。
「…色は青で、装飾は金だ」
そして絞り出すように言った。
考えていたらしい。青はセドリックの瞳の色。金は髪の色だ。
「独占欲丸出しね。兄様」
「うるさい!」
リリアに揶揄われてセドリックは怒っているが、耳が赤くなっていて、リネットはくすぐったいような気持ちになる。
じゃあ私はセディにクラバットを贈ろうかな。
新しいリボンも良いかも。
今日もセドリックの髪に結ばれているリボンを見て、リネットはそっと微笑んだ。
色はもちろんオレンジだ。
7
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので、その場から逃げたら時間が巻き戻ったので聖女はもう間違えない
aihara
恋愛
私は聖女だった…聖女だったはずだった。
「偽聖女マリア!
貴様との婚約を破棄する!!」
目の前の婚約者である第二王子からそう宣言される
あまりの急な出来事にその場から逃げた私、マリア・フリージアだったが…
なぜかいつの間にか懐かしい実家の子爵家にいた…。
婚約破棄された、聖女の力を持つ子爵令嬢はもう間違えない…
婚約者を取り替えて欲しいと妹に言われました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ポーレット伯爵家の一人娘レティシア。レティシアの母が亡くなってすぐに父は後妻と娘ヘザーを屋敷に迎え入れた。
将来伯爵家を継ぐことになっているレティシアに、縁談が持ち上がる。相手は伯爵家の次男ジョナス。美しい青年ジョナスは顔合わせの日にヘザーを見て顔を赤くする。
レティシアとジョナスの縁談は一旦まとまったが、男爵との縁談を嫌がったヘザーのため義母が婚約者の交換を提案する……。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
【完結】髪は女の命と言いますが、それよりも大事なものがある〜年下天才魔法使いの愛には応えられません〜
大森 樹
恋愛
髪は女の命。しかし、レベッカの髪は切ったら二度と伸びない。
みんなには秘密だが、レベッカの髪には魔法が宿っている。長い髪を切って、昔助けた男の子レオンが天才魔法使いとなって目の前に現れた。
「あなたを愛しています!絶対に絶対に幸せにするので、俺と結婚してください!よろしくお願いします!!」
婚約破棄されてから、一人で生きていくために真面目に魔法省の事務員として働いていたレベッカ。天才魔法使いとして入団してきた新人レオンに急に告白されるが、それを拒否する。しかし彼は全く諦める気配はない。
「レベッカさん!レベッカさん!」とまとわりつくレオンを迷惑に思いながらも、ストレートに愛を伝えてくる彼に次第に心惹かれていく…….。しかし、レベッカはレオンの気持ちに答えられないある理由があった。
年上訳あり真面目ヒロイン×年下可愛い系一途なヒーローの年の差ラブストーリーです。
【完結】婚約破棄されたらループするので、こちらから破棄させていただきます!~薄幸令嬢はイケメン(ストーカー)魔術師に捕まりました~
雨宮羽那
恋愛
公爵令嬢フェリシア・ウィングフィールドは、義妹に婚約者を奪われ婚約破棄を告げられる。
そうしてその瞬間、ループしてしまうのだ。1年前の、婚約が決まった瞬間へと。
初めは婚約者のことが好きだったし、義妹に奪われたことが悲しかった。
だからこそ、やり直す機会を与えられて喜びもした。
しかし、婚約者に前以上にアプローチするも上手くいかず。2人が仲良くなるのを徹底的に邪魔してみても意味がなく。いっそ義妹と仲良くなろうとしてもダメ。義妹と距離をとってもダメ。
ループを4回ほど繰り返したフェリシアは思った。
――もういいや、と。
5回目のやり直しでフェリシアは、「その婚約、破棄させていただきますね」と告げて、屋敷を飛び出した。
……のはいいものの、速攻賊に襲われる。そんなフェリシアを助けてくれたのは、銀の長髪が美しい魔術師・ユーリーだった。
――あれ、私どこかでこの魔術師と会ったことある?
これは、見覚えがあるけど思い出せない魔術師・ユーリーと、幸薄め公爵令嬢フェリシアのラブストーリー。
※「小説家になろう」様にも掲載しております。
※別名義の作品のストーリーを大幅に改変したものになります。
※表紙はAIイラストです。(5/23追加しました)
妹の身代わりの花嫁は公爵様に溺愛される。
光子
恋愛
お母様が亡くなってからの私、《セルフィ=ローズリカ》の人生は、最低なものだった。
お父様も、後妻としてやってきたお義母様も義妹も、私を家族として扱わず、家族の邪魔者だと邪険に扱った。
本邸から離れた場所に建てられた陳腐な小さな小屋、一日一食だけ運ばれる質素な食事、使用人すらも着ないようなつぎはぎだらけのボロボロの服。
ローズリカ子爵家の娘とは思えない扱い。
「お義姉様って、誰からも愛されないのね、可哀想」
義妹である《リシャル》の言葉は、正しかった。
「冷酷非情、血の公爵様――――お義姉様にピッタリの婚約者様ね」
家同士が決めた、愛のない結婚。
貴族令嬢として産まれた以上、愛のない結婚をすることも覚悟はしていた。どんな相手が婚約者でも構わない、どうせ、ここにいても、嫁いでも、酷い扱いをされるのは変わらない。
だけど、私はもう、貴女達を家族とは思えなくなった。
「お前の存在価値など、可愛い妹の身代わりの花嫁になるくらいしか無いだろう! そのために家族の邪魔者であるお前を、この家に置いてやっているんだ!」
お父様の娘はリシャルだけなの? 私は? 私も、お父様の娘では無いの? 私はただリシャルの身代わりの花嫁として、お父様の娘でいたの?
そんなの嫌、それなら私ももう、貴方達を家族と思わない、家族をやめる!
リシャルの身代わりの花嫁になるなんて、嫌! 死んでも嫌!
私はこのまま、お父様達の望み通り義妹の身代わりの花嫁になって、不幸になるしかない。そう思うと、絶望だった。
「――俺の婚約者に随分、酷い扱いをしているようだな、ローズリカ子爵」
でも何故か、冷酷非情、血の公爵と呼ばれる《アクト=インテレクト》様、今まで一度も顔も見に来たことがない婚約者様は、私を救いに来てくれた。
「どうぞ、俺の婚約者である立場を有効活用して下さい。セルフィは俺の、未来のインテレクト公爵夫人なのですから」
この日から、私の立場は全く違うものになった。
私は、アクト様の婚約者――――妹の身代わりの花嫁は、婚約者様に溺愛される。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。魔法あり。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
宝石精霊に溺愛されていますが、主の命令を聞いてくれません
真風月花
恋愛
嘘でしょう? 王女であるわたくしが婚約を破棄されるだなんて。身分違いの婚約者から、あろうことか慰謝料代わりに宝石を投げつけられたアフタル。だがその宝石には精霊が宿っていて、アフタルに「俺を選べ」と主従関係を命じる。ちゃんと命令を聞いてくれない、強引な精霊にふりまわされるアフタルが、腐敗した王家を立て直す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる