シスコン婚約者の最愛の妹が婚約解消されました。

ねーさん

文字の大きさ
30 / 30

番外編 5

しおりを挟む
5

 リリアの泣き腫らした顔を誰にも見せたくなくて、ハリジュは薬学研究所の来客室へリリアを招き入れた。
 リリアは泣き止んだが、まだ赤い眼をしてハリジュの淹れた紅茶を一口飲む。
「殿下は」
「名前で呼んで」
 そう言うと、リリアは少し頬を赤くする。
「…ハリジュ様は先程、私の事『そういう眼で見られない』っておっしゃられてましたよね」
「ちょっと意味が違うな。『そういう眼で見る事はできない』って言ったんだよ。ああ、畏まった話し方しなくて良いよ」
「意味が…?違うんですか?」
 リリアは小首を傾げる。
「いつかのお茶会で、セルダが通った所をじっと見ていたろう?だから、リリアはまだセルダを好きなんだろうと思ったんだ。リリアが私に懐いているのはセルダと顔立ちが似ているからで恋愛感情などじゃないんだろうし、だから…リリアがセルダとまた婚約するのなら、私がリリアをそういう眼で見てはいけないな。と、思っていたんだ」
「…あの時は『リネットは良いなあ』と思って見てました。それはセルダ殿下に愛されたい訳じゃなく、ただ誰かに一途に愛されて…それが羨ましいなあって」
 リリアは俯く。
「それに、セルダ殿下とハリジュでんっ、あの、ハリジュ様は似てませんよ」
「そうかな?」
「私は似ていると思った事はありません。それに私は…あの…ハリジュ様が、好き…なんです…よ」
 俯いたまま語尾が段々小さくなる。ハリジュはリリアの俯いた頬や、耳が赤くなるのが見えて微笑む。
「先に言わせてごめんね。…私もリリアが好きだよ」

「はいはいはいはい。上手く話がまとまったようで何よりですが、殿下!棚卸しに戻ってくださ~い」
 リリアが赤くなった顔をパッと上げ、ハリジュと目が合った所で来客室へダドリーが入って来る。
「えっあの、聞いて…?」
 リリアが赤くなった頬を両手で抑える。ハリジュはガックリと膝に手を突いた。
「ダドリー…せめてあと五分…」
「殿下、色呆けするなら仕事終わってからにしてください!ってゆーか、羨ましいので邪魔します!」
 ダドリーは腰に手を当てて言い切った。

-----

「セドリック殿が妹を溺愛する気持ちがわかるな…」
 王宮のハリジュの自室の厨房で、ハリジュは自作のクロテッド・クリームとブルーベリージャム、スコーンを皿に並べながらながら呟いた。
「ハリジュ様!?」
 ポットにティーコゼーを掛け、砂時計を返したリリアが驚いてハリジュを見る。
「セドリック殿とリリアが言い争ってるとヒマラヤンとペルシャが喧嘩しているみたいだよね」
 ハリジュはそう言いながらスコーンの乗ったお皿をワゴンに置く。
「子供扱いの次は猫扱いですか?」
 リリアが紅茶のカップを準備しながらハリジュを軽く睨む。
「ふふふ。今日は天気も良いし、テラスでお茶にしよう」
「…まあ子供扱いでも猫扱いでも良いですが…妹扱いだけはやめてくださいね」
 リリアがワゴンにシュガーポットを置きながら「兄は一人で充分です」と言うと、ハリジュが後ろからリリアの腰に手を回す。ハリジュの背が高いのでリリアをすっぽり抱き込む形になる。
「ハリジュ様!?」
 リリアが赤くなりながらハリジュを見上げるように振り向くと、ハリジュはリリアの額にキスをする。
「妹とは結婚できないものね」

 テラスのテーブルでリリアは紅茶を一口飲むと「渋い…」と呟いた。
「スコーンにジャムをたっぷり付ければちょうど良いよ」
 ハリジュが言うと、リリアはハリジュを軽く睨んでから顔を背ける。
「ハリジュ様が離してくれないから時間が経ちすぎたんですよ。折角リネットに習って美味しい紅茶を淹れる練習してるのに」
「それはすまない。でも、リリアがかわいいから仕方ない」
 ハリジュが真顔で言うと顔を赤くしながら「もう」と言う。
「リネット嬢と言えば、セドリック殿とリネット嬢はまだ結婚しないの?」
「地方へ学校を作るお話が何個も重なっているみたいで、兄様が忙し過ぎるらしいです」
「…このままじゃ、私たちの方が先に結婚しそうだね」
 ハリジュがテーブルに肘を着き、頬に手を当ててリリアを見る。また赤くなるリリアがかわいい。
「春から4年生だね。リリアが卒業したらすぐに結婚できるように、これから色々と段取りをしないとね」
 ハリジュは楽しそうに笑った。

 ハリジュとリリアが婚約して二年が経つ。
 その間に、セルダと少し遠い国の王女との婚約が整い、準備期間を経てこの夏前には婚礼の儀が行われることとなっていた。
 セルダは「王女と一緒に『真実の愛』を築いていく」と言っている。仲は良好だ。

 ちなみにリリア曰く「ジャグリングのボールの素材はメイドのエプロンの生地が一番」らしく、今では四個同時に投げられるようになったそうだ。


ーーFin



しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

ゆー
2021.08.31 ゆー
ネタバレ含む
2021.08.31 ねーさん

ありがとうございます。
とても嬉しいです!

解除

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので、その場から逃げたら時間が巻き戻ったので聖女はもう間違えない

aihara
恋愛
私は聖女だった…聖女だったはずだった。   「偽聖女マリア!  貴様との婚約を破棄する!!」  目の前の婚約者である第二王子からそう宣言される  あまりの急な出来事にその場から逃げた私、マリア・フリージアだったが…  なぜかいつの間にか懐かしい実家の子爵家にいた…。    婚約破棄された、聖女の力を持つ子爵令嬢はもう間違えない…

婚約者を取り替えて欲しいと妹に言われました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ポーレット伯爵家の一人娘レティシア。レティシアの母が亡くなってすぐに父は後妻と娘ヘザーを屋敷に迎え入れた。 将来伯爵家を継ぐことになっているレティシアに、縁談が持ち上がる。相手は伯爵家の次男ジョナス。美しい青年ジョナスは顔合わせの日にヘザーを見て顔を赤くする。 レティシアとジョナスの縁談は一旦まとまったが、男爵との縁談を嫌がったヘザーのため義母が婚約者の交換を提案する……。

異母妹にすべてを奪われ追い出されるように嫁いだ相手は変人の王太子殿下でした。

あとさん♪
恋愛
リラジェンマは第一王女。王位継承権一位の王太女であったが、停戦の証として隣国へ連行された。名目は『花嫁として』。 だが実際は、実父に疎まれたうえに異母妹がリラジェンマの許婚(いいなずけ)と恋仲になったからだ。 要するに、リラジェンマは厄介払いに隣国へ行くはめになったのだ。 ところで隣国の王太子って、何者だろう? 初対面のはずなのに『良かった。間に合ったね』とは? 彼は母国の事情を、承知していたのだろうか。明るい笑顔に惹かれ始めるリラジェンマであったが、彼はなにか裏がありそうで信じきれない。 しかも『弟みたいな女の子を生んで欲しい』とはどういうこと⁈¿? 言葉の違い、習慣の違いに戸惑いつつも距離を縮めていくふたり。 一方、王太女を失った母国ではじわじわと異変が起こり始め、ついに異母妹がリラジェンマと立場を交換してくれと押しかける。 ※設定はゆるんゆるん ※R15は保険 ※現実世界に似たような状況がありますが、拙作の中では忠実な再現はしていません。なんちゃって異世界だとご了承ください。 ※拙作『王子殿下がその婚約破棄を裁定しますが、ご自分の恋模様には四苦八苦しているようです』と同じ世界観です。 ※このお話は小説家になろうにも投稿してます。 ※このお話のスピンオフ『結婚さえすれば問題解決!…って思った過去がわたしにもあって』もよろしくお願いします。  ベリンダ王女がグランデヌエベ滞在中にしでかしたアレコレに振り回された侍女(ルチア)のお話です。 <(_ _)>

【完結】髪は女の命と言いますが、それよりも大事なものがある〜年下天才魔法使いの愛には応えられません〜

大森 樹
恋愛
髪は女の命。しかし、レベッカの髪は切ったら二度と伸びない。 みんなには秘密だが、レベッカの髪には魔法が宿っている。長い髪を切って、昔助けた男の子レオンが天才魔法使いとなって目の前に現れた。 「あなたを愛しています!絶対に絶対に幸せにするので、俺と結婚してください!よろしくお願いします!!」 婚約破棄されてから、一人で生きていくために真面目に魔法省の事務員として働いていたレベッカ。天才魔法使いとして入団してきた新人レオンに急に告白されるが、それを拒否する。しかし彼は全く諦める気配はない。 「レベッカさん!レベッカさん!」とまとわりつくレオンを迷惑に思いながらも、ストレートに愛を伝えてくる彼に次第に心惹かれていく…….。しかし、レベッカはレオンの気持ちに答えられないある理由があった。 年上訳あり真面目ヒロイン×年下可愛い系一途なヒーローの年の差ラブストーリーです。

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話

彩伊 
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。 しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。 彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。 ............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。 招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。 送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。 そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。 『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』 一日一話 14話完結

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

宝石精霊に溺愛されていますが、主の命令を聞いてくれません

真風月花
恋愛
嘘でしょう? 王女であるわたくしが婚約を破棄されるだなんて。身分違いの婚約者から、あろうことか慰謝料代わりに宝石を投げつけられたアフタル。だがその宝石には精霊が宿っていて、アフタルに「俺を選べ」と主従関係を命じる。ちゃんと命令を聞いてくれない、強引な精霊にふりまわされるアフタルが、腐敗した王家を立て直す。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。