隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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60.後悔

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そのまま散歩を楽しむ気分になど、とてもではないがなれなかった。
アリーチェはそのままクロードとともに自室へと引き返してきた。
部屋の前まで来たとき、クロードは「用事を思い出した」と言ってアリーチェが部屋に入るのを見届けると、さっさと踵を返して戻っていってしまった。

ルドヴィクの怒りを買ってしまったクロードのことが心配だったが、ジネーヴラらに促され、アリーチェは後ろ髪を引かれる思いで、扉を閉めた。

どうして、こんなことになってしまったのだろう。
アリーチェは唇を強く噛み締めた。
時間が経つにつれてアリーチェの胸に押し寄せてきたのは、強い後悔と、罪悪感だった。
あのとき、アリーチェが余計な事を尋ねなければ、ルドヴィクとクロードが仲違いをすることはなかっただろうと思うと、つくづく自分の軽はずみな言動が、悔やまれた。

アリーチェは冷たくなって震える指先で、魔石のネックレスを外した。
魔石がアリーチェの肌から離れるのと同時に、ゆっくりと瞳が、髪が、本来の色を取り戻していく。

「………折角支度をしてくれたのに、悪いことをしたわね」
「いいえ。そんなことを気にされる必要などありませんのに………」

遠慮がちに首を振る彼女たちに向かって、アリーチェは無理矢理笑顔を浮かべてみせた。
上手く笑えているのかすらも分からなかったが、涙が溢れてこないだけマシだろう。

沈んでいくアリーチェの心とは正反対に、すっかり元の輝きを取り戻したアッシュブロンドの髪を解いてもらい、軽いモスリン生地のドレスに着替えた。
かっちりとした女官服とは比較にならないほどに軽い服装だというのに、アリーチェの心は重苦しかった。

アリーチェの身支度を整えながら有能な侍女たちは、何が起きたのかを尋ねようとはしなかったが、アリーチェが早々に戻ってきたという事実と、クロードとのやり取り、そしてアリーチェの表情から、何があったのか薄々感づいているようだった。

彼女たちがアリーチェに向かって気遣わしげな視線を送ってくるこことで、より一層いたたまれない気持ちになる。
アリーチェは椅子に腰をおろしたまま、静かに目を伏せる。

「翼を失った鳥は、どんなに望んでも、結局は空を飛べないのね…………」

誰に語りかけるわけでもなくアリーチェが一人そう呟くと、控えていたジネーヴラがはっと目を見開き、悲しそうに顔を歪めたのが分かった。
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