隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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200.信じるもの

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「パトリス………」

 テレーゼの声は、酷く悲しげに聞こえた。

 パトリスが、魔石の魔力を全て無効化する特異体質、というのは当然ながら母親であるテレーゼは知っているのだろう。
 何より、その体質のせいで大切な我が子が夫に『役立たずの無能』として冷遇され続けてきたのだ。
 それが夫を救う唯一の手立てになるかもしれないとは、何とも皮肉な気がした。

「父上の体内に入り込んだ、核になっている魔石に触れる事が出来れば………」
「パトリス」

 半ば無意識に呟いたパトリスを嗜めるように、テレーゼが彼の名を呼んだ。

「いくらあなたが魔石の魔力を無効化する力があるとしても、近付くこと自体が危険だわ。………もし、あなたに何かあれば………」
「ええ、その通りです。我が王からあなたがたを守るようにと命じられておりますので、御身を危険に晒すような事は出来かねます」

 心配そうなテレーゼを援護するように、クロードが言葉を被せる。
 アリーチェも、二人に賛同するように頷いた。

 ルドヴィクが危険な目に遭うのは見たくないが、彼は強い。
 たった今剣技を見ただけだが、アリーチェの知る誰よりも剣の扱いに長けていて、身のこなしが軽やかだった。
 そんなルドヴィクとは違い、パトリスはここ数ヶ月の間、セヴランによって幽閉されており、剣の練習どころか、まともな人間の生活すら遅れておらず、自力で歩くのがやっとの状態だ。
 いくら魔石の力を無効化出来るとはいえ、どのような攻撃を仕掛けてくるかも分からないセヴランに闇雲に近付くのは危険しかないだろう。

「………しかし………」

 己の無力さを嘆くように、パトリスは悔しそうにセヴランを見つめると、唇を噛んだ。

「………ルドヴィク様は、大丈夫です」

 アリーチェは戦うルドヴィクを見つめたまま、静かな微笑みを浮かべたながらそっとそう呟いた。
 何の根拠もないのに、何故かアリーチェはそう信じられる気がした。

「アリーチェ、王女?」
「ルドヴィク様は、大丈夫です。負けるはずがありませんわ」

 少し驚いたように、パトリスがアリーチェの方を見たが、アリーチェは視線を動かさないまま、もう一度繰り返した。

 (………彼は、必ずセヴランを倒して、無事に戻ってきて下さるわ。わたくしと約束したもの。………全てを話してくださるって………)

 心の中で付け足したその言葉は、どこか祈りにも似た強い感情がこもっていた。
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