隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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321.ティルゲルの最期(2) ※残酷描写あり

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「あ…………」

自分は大丈夫だとルドヴィクに訴えかけようと顔を上げると、ルドヴィクの深いエメラルド色の隻眼が心配そうに揺らぐ。
そして無言のまま、静かに首を横に振った。

もう、頑張らなくていいと言われている気がして、アリーチェは口を噤んだ。

アリーチェが責務を果たそうとすればするほど、ルドヴィクとアンジェロがアリーチェの心配をする。
アリーチェとて二人に負担を掛けるの本意ではないが、きちんとティルゲルの最期を見届け、迷いを断ち切る事を決意したのだから、最後まで成し遂げたいという気持ちも捨て切れない。

「ティルゲルの出血量を見る限り、布の下は昨日以上に見るに耐えない状態になっているだろう。それを見て、あなたが傷付くのを私は、見たくない」

ルドヴィクにしては珍しく、はっきりとした言い方だった。

「そもそも奴が本当に死んだかを確認するのは、そのような場に慣れた私の部下たちや知識のあるアンジェロ殿の方が適格だろう。それは、あなたのすべき事ではない」

重ねられた言葉は正論以外の何物でもなく、アリーチェはただ黙ってルドヴィクを見つめることしか出来なかった。

「昨日の刑執行だけでなく、今日この場に足を運び、刑を見届けたのだから、確認をしなかったからといってあなたを責める人間など誰もいないし、そんな事は私が許さない。それでもあなたの気が済まないと言うのであれば、死亡が確認された後に、奴の遺骸と向き合えばいい」

まるでアリーチェの心の中を覗いたのかと思う程正確に、揺らぐ感情を言い当てる。
そして、険しかった顔にほんの僅かな笑みを浮かべた。

石打の刑は罪人が死亡した後、二度と同じ罪を犯す者が出ないように、掘り起こした躰全体をミイラのように白布でぐるぐると巻き、そのまま炎で焼き尽くすのだという。
おそらくルドヴィクは、石礫でぐちゃぐちゃに潰れた顔を見てもティルゲルだと分からないのだから、それならば焼かれる直前の時に遺体と向き合い、ティルゲルの死を受けとめても同じではないかと言っているのだろう。

あくまでもアリーチェの気持ちを尊重しつつも、アリーチェが傷付かないように最大限の配慮をしてくれるルドヴィクの深い愛に、アリーチェは僅かに涙ぐみながらゆっくりと頷くと、ルドヴィクの広い胸に顔を埋める。
するとルドヴィクは一瞬だけ固まり、それから穏やかな表情を浮かべると、愛おしそうにアリーチェを両腕で抱きしめたのだった。
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