物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

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物理系魔法少女、もう逃げません

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 ゴーレムの魔石だけで6万の収入を得た。

 明日は紗奈ちゃんとゆっくりすると言う最も重要な日である。

 「星夜さんは明日、どこか行きたいところとかないの?」

 「無いな。これと言って。動物にも魚にも興味無い」

 「かと言って歴史的なモノにも興味は無いし、観光地にも興味は無い⋯⋯昔と変わらないね」

 「そうか?」

 昔の方が金にも時間にも余裕があったと言う謎現象。

 今はどうだろうか? 考えるまでもないか。

 今の生活の方が贅沢だ。

 「もう少し良い場所に引っ越したいし、道具も良い物にしたい⋯⋯だけど家電製品って高いんだよなぁ」

 軽く十万とか行くのが本当に恐ろしい。かと言って長く使いたいので妥協はできない。

 「探索者ってもっと稼げるイメージがあった」

 「ラノベ脳かよ。イレギュラーが起きてもダンジョンのランク帯を大幅に超える事はできないから対処できるし、できるからこそ報酬もそこそこ」

 「レアアイテムやら魔物やらがドーンって来る訳でもないしな」

 広告だって、一ヶ月は活動して、最低ラインをしっかりと超えないといけない。

 それで色んな人に見てもらわないといけない。

 「そして次に来るのが税金か。ダンジョンで手に入ったモノくらい、税金引かなくても良いのに」

 「昔の探索者みたい⋯⋯でもさ、そろそろ引っ越せる程のお金は貯まってるよね?」

 「貯まってるよ。だけど、その後の家賃が不安でね。別に安定している訳じゃないし、探索者って言っても、レベル2だからフリーターと変わらん」

 社会的地位が無いのだ。

 レベル3からだと、派遣社員程度の地位を受けると聞く。

 中身を開けば、普通にこっちの方が稼げる。

 今のところ、命の危険を感じたのは全部紗奈ちゃん関係なので、ダンジョン関係ないし。

 「星夜さん。そこでウィンウィンな提案があるんですよ!」

 「却下」

 「なんで?!」

 「紗奈ちゃんが敬語な時は、怖い事の前触れだからだ」

 「酷いな~」

 そう言いながら、俺に近寄って来る。凍らせないでね?

 紙を擦る音が聞こえるので、何かしらのチラシでも持っているのだろう。

 読みは当たり、俺に差し出されたのは物件の下見の広告だった。

 「いやまだ引っ越しの事は考えて⋯⋯」

 「だからの下見だよ。それに、一緒に暮らすんだから一緒に見たいしね~」

 「そっか⋯⋯」

 ⋯⋯⋯⋯ん?

 あれおかしいな。

 俺の耳がついにイカれてしまったか。

 「なぜに一緒に暮らす? ルームシェア?」

 「⋯⋯別に同棲でも良いよ?」

 上目遣いはキツい。可愛いがすぎる。

 って、そうじゃない。

 「まず、一緒に暮らす前提がおかしい。互いに独身なんだぞ?」

 「⋯⋯はぁ。アホかよ」

 いきなりの罵倒!

 「まぁ良いんだけどね。別にさ」

 ぷりぷり怒ってる。

 「ご飯作ったり、一緒に仕事場ギルド行ったり⋯⋯一緒に暮らした方が早くないですか?」

 「そうだけどそうじゃない気がする」

 「私も同棲するなら魔法は控えるし、今の私の家みたいにはならないよ。家賃だって折半だから問題ないしね」

 同棲になってるし。

 「それで紗奈ちゃんに彼氏ができなくなったら怖いので却下」

 「⋯⋯欲しいと思わないので問題ないね。それに口説いてくるウザイ探索者共が寄って来なくなるかも」

 それらのヘイトが俺に向かいそうなんだけど。

 紗奈ちゃんが俺に背を預けて来る。鼻に髪の毛がふわりと当たり、くすぐったくなる。

 「くしゃみは我慢してね」

 気づいているなら少しは距離を取って欲しい。⋯⋯いや、やっぱ無し。

 全力で我慢する。これじゃ紗奈ちゃんの匂いも嗅げないよ。

 だけど柔らかい太ももとお尻の感触があるので全然良しだ。

 スマホで色々と見ている。

 「私は便利になるし、星夜さんを監視⋯⋯管理? しやすくなるからしたいんだけど⋯⋯星夜さんは嫌?」

 管理って⋯⋯てか監視ってなんだよ。

 嫌かと聞かれたら当然、嫌じゃない。むしろ嬉しいって言う気持ちがある。

 だけど即答できない自分がいる。

 「私に彼氏ができなくなるとか、年の差云々とか、おこがましいとか、そんなくだらない理由は願い下げだよ?」

 「⋯⋯んー」

 「星夜さんは生声で私に『おはよう』から『おやすみ』を聞けて、美人なタイプの女性をプライベートでも拝めるんだよ?」

 「なんだよそれ。間違っては無いけど。無いけどさ、それでもやっぱり同棲って話にはならないでしょ。付き合っている訳じゃないし、何よりも今の紗奈ちゃんの家よりも良い場所は行けん」

 紗奈ちゃんは俺にデメリットは無く、メリットしかない事をしっかり把握している。

 だが、紗奈ちゃんにとってのメリットは俺の管理がしやすくなるだけだ。

 それでプライベートを侵食され、今よりもグレードを下げた家はデメリットだ。

 なんでそこまでするのやら。

 紗奈ちゃんが小さな手で俺の顔を挟み、目を合わせられる。

 「じゃあ、その。付き合う?」

 「いやなんでよ」

 「そうすれば問題解決⋯⋯年の差だって実際あんまりない。容姿を気にしているのは星夜さんだけだよ」

 「⋯⋯」

 「周りを気にしているのもさ。勝手に『私のため』とか理由つけてさ」

 グッ。

 「私達の想いしか関係ないと思うのに⋯⋯どうして言い訳ばかりして逃げるのさ」

 やめてくれ。

 図星すぎて心が痛い。

 さっきから俺のHPはマイナス記録を更新しているよ。

 「星夜さん。昔の返事、聞かせて。忘れてるってのは、無しね。星夜さんの気持ちが知りたいの。⋯⋯私は星夜さんが好きだよ。昔と変わらない。うんうん。会えなかった分膨らんだ想いがあるから、昔よりも好きが強い」

 「こ⋯⋯」

 強く顔を挟まれる。逃げたくなるような真剣な目。

 「言い訳はしない。質問で返さない。⋯⋯お願いだから、逃げないで」

 顔が真っ赤だよ。目尻に涙も溜めている。

 最低だな俺。こんな可愛い人を悲しませているんだから。

 いや、容姿なんて関係ない。泣かすのは良くない。

 「星夜さんは私を⋯⋯独占したくない?」

 どれだけの勇気を振り絞ったのか⋯⋯俺には分からない。

 こんな大人になっても、変わらないモノはあるんだな。

 大学時代に紗奈ちゃんに告白され、適当に言い訳やらして、逃げたんだよな。

 紗奈ちゃんの想いや勇気を踏みにじった行為だ。

 ⋯⋯怖かったんだよ。これ以上踏み込んで彼女を不幸にしてしまわないか。

 根拠の無い不安。

 ⋯⋯これも言い訳か。素直に答えるだけで良いんだ。

 なのに言葉が出ない。出せない。

 魔法にでもかかったかのように。⋯⋯いや、苦しい?

 苦しいぞ?

 精神的に苦しかったから気づかなかったけど、物理的にも苦しい。

 「み⋯⋯」

 「⋯⋯み? はっ! 緊張して冷気出た。水ね!」

 喉が乾燥して死ぬかと思った。

 「⋯⋯なんか緊張解けたわ。うん。正直に言うね。俺は昔も今も紗奈ちゃんの事が──」
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