物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

文字の大きさ
68 / 179

音の使徒と緑風の魔法少女

しおりを挟む
 「買い出しも終わりましたし、後は帰るだけですね」

 独り言を誰に聞かれる事も無く呟き、音の使徒である音羽おとはは家に向かう。

 (ん? 後ろから見られている気配がする)

 人気のなく、広い場所に移動して視線の正体を探ろうとする。

 音羽が声をかけるまでもなく、その犯人は姿を現す。

 コスプレにしては随分と力を入れてオリジナルでもある魔法少女の衣装。

 だが、そんな服装よりも目立つのが、彼女の持っている切れ目の入った剣である。

 「探索者の武器はギルドで保管される、常識と言うか、法律で決められてますよ。ミドリさん」

 本来東京に住んでいるミドリが星夜達の住んでいる場所に居る。

 彼女は音羽の質問に答える様子は見せず、剣先を向ける。

 その目は一瞬の動きも許さない程の剣幕を持っている。

 「生の使徒の本体はどこだ? それと感情を司る悪魔は?」

 「はて? どちらも知りませんね。いけませんよ、人様に剣を向けては。だいたい、高校生でそんな⋯⋯」

 横に振るわれる剣から風の斬撃が飛来する。

 「フー」

 圧縮した音で衝撃を生み、相殺する。

 「やれやれ。彼女が負けた相手にわたしが勝てる訳無いでしょうね」

 「答えろ。命は取らない、だが奴は別だ」

 「堕ちた者だからですか?」

 「お前に関係ない。答えないなら、少し痛い目をみてもらう」

 少し、と言いながら胴体を真っ二つにする勢いで剣を振るう。

 それだけで全然全力じゃない事は音羽は見抜いている。

 (応援は呼んでみましたが、来てくれるでしょうか? いえ、⋯⋯間に合うのでしょうか?)

 少しでも会話で時間を稼ぎたい音羽だが、相手がそれを許さない。

 「目的は悪魔と奴を殺す事だ。関係の無いお前はさっさと退場しろ。戦う必要は無いだろ」

 「確かに。いきなり使徒と言う役目を与えられました。わたしに魔法少女や天使と戦う意味はぶっちゃけると存在しません。世界とかスケールでかすぎて興味もありません」

 「ならなぜ、奴を庇う? この世に奴が何億体存在すると思っているんだ? 危険やっ」

 音羽も反撃のように攻撃を仕掛けるが、ミドリには届かない。

 「あの方は庇う程弱くないですよ。わたしが戦う理由は一つだけです」

 「⋯⋯」

 「長女と同い年だからですよ、魔法少女が。そんな若い人達が命を賭けてまでやる事では無いと思うんです。偽善と笑うならそれでも構いません。ですが、一人の父として、子供に世界を背負って欲しくない」

 「⋯⋯そう。悪魔の場所を言う気は?」

 「そもそもそれらは知りませんよ」

 嘘では無いのかもしれないが、嘘かもしれない。

 だからミドリの殺気は衰える事はない。

 「だいたい、感情を司る悪魔を倒してしまったらどうなるか分かっているでしょう?」

 「ええ。でもそれで良い。感情を失えば欲を失う。欲を失えば悪は潰える。それで良い」

 「それで全人類死ぬとしても?」

 「その時にはもう、辛くも悲しくもない」

 覚悟の決まりすぎているミドリに対して音羽は静かに、荷物を置いた。

 彼女がどうしてこうなってしまったのかは音羽には分からない。

 だけど、彼女の思想が危険なのは理解した。

 力は及ばないだろうが、時間は稼ぐ。

 その思い一つで拳を構える。

 「君の考えは間違っている。周りは悲しむよ」

 「いずれそんな悲しみも無くなるから問題ない。戦うと言うのなら容赦はしない。アオイちゃん達を殴ったぶん、うちがお前を斬る」

 「使命だけで動く天使とは違うんですね」

 スピードもパワーもミドリの方が圧倒的に上であった。

 防御も攻撃も一方的である。

 身体に切り傷が増え、打撃も入る。

 「言え。楽になるぞ」

 「言える訳、ないでしょ。無音」

 「音は振動だ。空中に出る。空中には空気がある。空気が風を作る。そしてうちが風を操る。能力的優位であるのにレベルも上。お前に勝ち目はないよ」

 「それでもね、関係ないんですよ。子供を巻き込む天使は間違っている。君は、間違ってる。わたしはそう言い続ける」

 拳に纏わせた衝撃波も風で流される為に届かない。

 自分の十八番が全く通じない音羽は己の弱さを自覚する。

 説得はできない。力でも負けている。

 だけど音羽には少しだけ分かっている事がある。

 彼女は自分を殺さない、と。

 踏み込んだ質問ができるのもそれが分かっているからだ。

 想定よりも違うのは、ミドリが自分の想像以上に強い事だろう。

 ダンジョンの中で本気で戦っていても、音羽にはミドリの本気を引き出せない。

 「⋯⋯そこまで口を割らないか。しかたない。腕の1、2本切り落とすか」

 彼女が剣を振り上げたと同時に、刀身は分解されて彼女の服の内側に入る。

 変身を解除して、私服のミドリが音羽の前に現れる。

 (時間切れ? そもそも時間制限が?)

  考え込む音羽だったが、彼女の変身が解けた理由が分かる。

 「あ、パパだ!」

 呼ばれて向き直ると、小3の次女と妻が居た。

 「帰りが遅いから探したんですよ。電話も出ないし」

 「あ、ごめん」

 子供が離れようとしたミドリを掴む。

 「緑髪のお姉ちゃんだ!」

 「え?」

 「さっきは風船を取ってくれてありがとう」

 ゆっくりと振り向き、子供の頭に手を置く。目線を合わせるように膝を折っている。

 さっきまでの強ばった顔が嘘のように、明るく元気な笑みを浮かべているミドリ。

 「ええよ。だけどなぁ、手は離しちゃならんよ? 気いつけやー」

 「うん!」

 「その節はありがとうございます。娘も風船を大切にしてて⋯⋯」

 「礼はいりまへんよ。うちはできる事しかしてないから」

 トントン、ステップを踏んで彼女は風のように消えた。

 「って、アナタ、凄い怪我じゃないの! 今日の探索そんなに辛かったの? ごめんなさいね、買い物頼んで」

 「問題ないですよ。それより帰りましょうか」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...