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おとな!
しおりを挟む桜の花が、舞い降りる。
白峰高校の制服に身を包んだ遥斗は、高校生になった。
幼稚園のときにあこがれていた、立派な大人になりました──!
なってみると、びっくりする。身体は幼稚園のときの2倍? 3倍? くらいになったけれど、中身はちっとも変わらない。
ずっと、ずっと、りょーくんが、だいすきだ。
それ以外もまあまあ子どもっぽい。というか、かなり子どもっぽい。いつもピンチなお財布をかかえて、おかあさんにお小遣いをおねだりしてしまうのに、あと3年でもう成人だなんて、信じられない。
それでも学ランを脱いで、真新しいブレザーに袖を通すと、大人になった気がする。
白地に藍のラインが入るブレザーに藍のパンツは、近隣の高校ではかっこかわいー制服として有名だ。
「僕、かっこいー?」
くるりと回った遥斗に、両親が拍手してくれた。
「かわいー!」
ちょっと違う。
おかしい。
ぷっくり遥斗はふくれた。
「もう高校生だよ!」
「お兄さんになったねえ!」
ふくれた頬を、おかあさんに、つんつんされた。
ますます、ぷっくりした。
高校も、一緒に登下校してくれるかも!
はじめての電車通学だ。りょーくんといっしょにできたら、とびきりうれしい!
どきどきしながら、遥斗は涼真の家の前に立つ。
「りょーくん、おはよー。いっしょに学校いかない?」
いつものとおり声をかけたら、扉が開いた。
夜空の髪が、さらさら揺れる。
長い手足を包む白峰高校の制服が、春の陽にきらめいた。
ほそく引きしまる腰を強調するように藍のパンツのラインが流れる。
おんなじ制服を着ているはずなのに、まるで全然別次元の、コレクションでモデルさんが着て歩いてくるような服に思えるくらい、びっくりするほど似合っていた。
「りょーくん、すごい……! 大人だ──!」
ぴょこぴょこ跳ねてしまった遥斗に、夜空の瞳を瞬いた涼真が、ほんのり唇の端をあげる。
「ハル、おちつけ」
「お、落ちついてるよ! りょーくんが大人すぎなんだよ」
ぷくりとふくれたら、ちいさく涼真が笑う。
幼稚園のときと同じに見える桜の花びらが舞い降りる。
あのとき、繋いだ手は、なんてちいさかったのだろう。
あのとき、ぎゅうぎゅう胸をくるしくさせた切なさは、今も遥斗の胸にせまる。
今、涼真が差しだしてくれる長い指に、大きなてのひらに、うっとりする。
「ん」
「えへへ」
熱い頬で、涼真の手をにぎる。
ぎゅ
にぎると、にぎりかえしてくれる。
「……りょーくんと一緒の学校に通えるの、うれしくて、ごめんね」
ぽそぽそ、ささやく遥斗の熱い頬を、涼真の繋がっていないほうの手が包んだ。
「二度と、謝るな」
「でも……!」
ふるふる涼真が、首をふる。
「俺が、ハルと一緒に、いたかった」
やさしい声に、泣きたくなる。
こんなときは、『ごめんなさい』じゃない。涼真のおかあさんが教えてくれた。
「……ありがとう、りょーくん」
鼻をすする遥斗の頭を、涼真の指が、そうっと、そうっと、ぎこちなく、なでてくれる。
やさしい指に、とろけるしあわせに、笑ったときだった。
「遥斗、お弁当、忘れてる!」
父の声に飛びあがったら、つながった指が離れる。
「涼真くん、遥斗をどうぞ、よろしくね」
微笑む父に、涼真はほんのりうれしそうに、うなずいてくれた。
「はい」
照れくさく熱い頬で、遥斗は笑う。
「また3年、よろしくね、りょーくん」
こくりとうなずいてくれる涼真はいつもどおりなのに、ブレザーに包まれた涼真は初めてで、きゅんきゅんが加速する。
また一緒に学校に通える。
もう3年、涼真の隣にいられるかもしれない。
飛び跳ねたいくらい、うれしくて、とくとく鼓動が駆けてゆく。
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