【完結】かわいい彼氏

  *  ゆるゆ

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だめ

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 入学式を終えた遥斗は、クラス分けの掲示板を見に行こうとして、傍にきてくれた涼真に笑顔になる。

「りょーくん、すっごく、かっこよかった!」

 さらさらの夜空の髪が、春の風に揺れる。
 一瞬、まぶしそうに目をほそめた涼真は、ほんのり唇の端をあげてくれた。

 そのちいさな笑顔に、遥斗の胸は、きゅんきゅん音をたてる。

 周りにたくさん人がいるのに、手をつなぎたくなって、こまる。


「クラス分け、成績順なんだって。りょーくんは1組だよね」

 間違いない。

 講堂の正門近くに掲げられた紙を見あげたら、5クラスあるなかで涼真は勿論1組、遥斗は3組だった。

「え、僕、3組なの!? すごくない!?」

 ぴょこぴょこ飛び跳ねる遥斗に、涼真がほんのり笑ってくれる。

「ハル、がんばってたから」

 いつも無口なりょーくんがほめてくれたら、とびきりうれしい。

「えへへ」

 講堂から校舎のクラスに移動する、ほんのわずかな距離でさえ、涼真と一緒に歩けるのがうれしい遥斗の顔は、にやけっぱなしだ。

「天体望遠鏡のある天文部です──! このあたりでうちだけですー! 星に興味のある人はぜひ!」

 突然聞こえた大きな声に、遥斗はびくりと止まった。
 校舎までゆく道のあちこちに先輩が立っていて、チラシを配ったり看板を掲げている。

「ラグビー部だ! きつくて楽しいぞー!」

「いっしょに甲子園に行こう──!」

 大声にびびる一年生に、果敢にビラを渡して勧誘する先輩がすごい。

「天体望遠鏡があるんだって! すごいなあ。りょーくん、星、すきじゃなかった?」

「ハル、陸上?」

 ちょっと沈黙した遥斗は、考えながら口を開いた。

「……僕、もうりょーくんの足を引っ張りたくない。でも頭でりょーくんに追いつくのは、めちゃくちゃ難しい。なら、かけっこならできる、かも……? りょーくんが、スポーツ推薦枠のある大学に行くならの話だけど……」

 近くのスポーツ推薦枠がある高校はそんなに進学校じゃなかったけれど、大学には有名な大学にもたくさんスポーツ推薦がある。

 しかし国公立や難関大学になると、制度としてあるにはあっても、優秀な人が殺到するので非常に狭き門になるだろう。涼真に学力で追いつくのに匹敵するくらい難しくなるに違いない。

 ……幼稚園で一等賞だもんなあ。

 しょんぼり肩を落とす遥斗に、涼真は首をかしげる。

「走りたいから、走るんじゃなく?」

 きょとんとした遥斗は、うなずいた。

「走るのは、いつでも、どこでもできるから。陸上部に入ってがんばるのは、りょーくんといっしょの大学に行くためだよ」

 あまりに当たり前のことだったので、口からこぼれた。

 涼真の瞳が見開かれてはじめて、重かったかもしれないと、あわてる。


「ご、ごめん、まだ3年も先のことだよね。どうなるかわからないし──」

 首をふった涼真の唇が、開かれる。

「ハルといっしょなら、どこでもいー」


「だめ──!」

 叫んでいた。


「りょーくんが、僕のためにランク下げるなんて、もう絶対だめだから──!」

 涙目で叫んでしまった遥斗に、涼真は驚いたように息をのむ。

「……ハル……」


「だめなんだから!」

 涙が、こぼれた。




 だいすきなりょーくんの、重しになってしまうなんて。

 りょーくんの輝く将来を、潰すのが自分だなんて。


 絶対、ぜったい、だめだ。



 そんな幼なじみ、いらない。






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