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だめ
しおりを挟む入学式を終えた遥斗は、クラス分けの掲示板を見に行こうとして、傍にきてくれた涼真に笑顔になる。
「りょーくん、すっごく、かっこよかった!」
さらさらの夜空の髪が、春の風に揺れる。
一瞬、まぶしそうに目をほそめた涼真は、ほんのり唇の端をあげてくれた。
そのちいさな笑顔に、遥斗の胸は、きゅんきゅん音をたてる。
周りにたくさん人がいるのに、手をつなぎたくなって、こまる。
「クラス分け、成績順なんだって。りょーくんは1組だよね」
間違いない。
講堂の正門近くに掲げられた紙を見あげたら、5クラスあるなかで涼真は勿論1組、遥斗は3組だった。
「え、僕、3組なの!? すごくない!?」
ぴょこぴょこ飛び跳ねる遥斗に、涼真がほんのり笑ってくれる。
「ハル、がんばってたから」
いつも無口なりょーくんがほめてくれたら、とびきりうれしい。
「えへへ」
講堂から校舎のクラスに移動する、ほんのわずかな距離でさえ、涼真と一緒に歩けるのがうれしい遥斗の顔は、にやけっぱなしだ。
「天体望遠鏡のある天文部です──! このあたりでうちだけですー! 星に興味のある人はぜひ!」
突然聞こえた大きな声に、遥斗はびくりと止まった。
校舎までゆく道のあちこちに先輩が立っていて、チラシを配ったり看板を掲げている。
「ラグビー部だ! きつくて楽しいぞー!」
「いっしょに甲子園に行こう──!」
大声にびびる一年生に、果敢にビラを渡して勧誘する先輩がすごい。
「天体望遠鏡があるんだって! すごいなあ。りょーくん、星、すきじゃなかった?」
「ハル、陸上?」
ちょっと沈黙した遥斗は、考えながら口を開いた。
「……僕、もうりょーくんの足を引っ張りたくない。でも頭でりょーくんに追いつくのは、めちゃくちゃ難しい。なら、かけっこならできる、かも……? りょーくんが、スポーツ推薦枠のある大学に行くならの話だけど……」
近くのスポーツ推薦枠がある高校はそんなに進学校じゃなかったけれど、大学には有名な大学にもたくさんスポーツ推薦がある。
しかし国公立や難関大学になると、制度としてあるにはあっても、優秀な人が殺到するので非常に狭き門になるだろう。涼真に学力で追いつくのに匹敵するくらい難しくなるに違いない。
……幼稚園で一等賞だもんなあ。
しょんぼり肩を落とす遥斗に、涼真は首をかしげる。
「走りたいから、走るんじゃなく?」
きょとんとした遥斗は、うなずいた。
「走るのは、いつでも、どこでもできるから。陸上部に入ってがんばるのは、りょーくんといっしょの大学に行くためだよ」
あまりに当たり前のことだったので、口からこぼれた。
涼真の瞳が見開かれてはじめて、重かったかもしれないと、あわてる。
「ご、ごめん、まだ3年も先のことだよね。どうなるかわからないし──」
首をふった涼真の唇が、開かれる。
「ハルといっしょなら、どこでもいー」
「だめ──!」
叫んでいた。
「りょーくんが、僕のためにランク下げるなんて、もう絶対だめだから──!」
涙目で叫んでしまった遥斗に、涼真は驚いたように息をのむ。
「……ハル……」
「だめなんだから!」
涙が、こぼれた。
だいすきなりょーくんの、重しになってしまうなんて。
りょーくんの輝く将来を、潰すのが自分だなんて。
絶対、ぜったい、だめだ。
そんな幼なじみ、いらない。
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