【完結】かわいい彼氏

  *  ゆるゆ

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勇気

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 びくりと震える涼真を、ぎゅうぎゅう遥斗は抱きしめる。

「僕、ずっと、ずっと、りょーくんに、酷いことした。ほんとに、ほんとにごめんなさい……!」

 涙と謝る遥斗に、白い毛布がもぞもぞ揺れる。
 遥斗より大きな身体が、ふるえてる。


「……るーくん、なの……?」

 そうっと毛布からのぞく涼真の目が、真っ赤だ。


 ずっと、泣いていたんだ。

 ひとりで。

 真っ暗な部屋で。

 思うだけで、たまらなくなる。


 息がつまる胸で、遥斗は涼真を支えるように抱きしめる。


「僕の恋小説、読んでくれた? りーくんに、気もちを伝えたくて、りょーくんと両想いになりたくて、僕、がんば──」

「そんなわけない──!」

 悲鳴に遮られた遥斗の声が、唇のなかに消える。

 夜空の瞳が、涙に歪む。

「僕のこと、ハルは気持ち悪いって思うに決まってる──! ぬいぐるみやレースやフリルやリボンが、可愛いものが大すきな僕なんて、ちっともかっこよくない、気もちわるいって──!」

 血を吐くような叫びは、涼真をえぐり、遥斗をも裂くようだった。

 ……そうだ。
 遥斗は、かわいいものが大すきな涼真を、きもちわるいと思うと、思われていたんだ。

 かっこいー涼真が大すきな遥斗は、かわいーものが大すきな涼真を、受けいれることができないと。


「思うわけないだろう──!」

 叫んでいた。

 くやしかった。

 涼真に、そう思わせてしまった自分が。
 涼真に、信じてもらえなかった自分が。


 ──どうして。

 こんなに、りょーくんが、だいすきなのに。

 思って、気づく。


 一度も、りょーくんに『だいすき』伝えていない。

 手をつないだだけ。
 
 傍にいただけ。

『りょーくん、かっこいー』かっこよさを、ほめただけ。


 そんなので、遥斗の想いが

 熱く燃えて、切なく揺れて、あふれて止まらない想いが、伝わるわけない。



「僕が『りーくんの恋日記』の感想になんて書いたか、おぼえてる?
『きゅんきゅんした』
『りーくん、かわいい』
『がんばって』
 りーくんが、りょーくんだって知らなかったときからずっと、僕はりーくんが大すきだった──!」

 あふれる涙といっしょに、叫んでいた。

 真っ赤な夜空の瞳が、ふるえる。

「……だ、だって、あれは、オンラインの話だから……実際とは、違う。ほんとに、ぬいぐるみとリボンとレースと絵文字でいっぱいの男なんて、ハルは気もちわるいって……!」

 遥斗は首をふった。
 ぶんぶんふった。

「かわいーって思うよ!」

 のばした遥斗の手が、涼真の涙に濡れた、冷たい頬を包みこむ。

「りーくんの恋日記は、りょーくんの、ほんとうの気もちじゃないの……?
 りーくんがりょーくんかもって思って、読みなおして、僕、泣いたよ」

 あの衝撃と、沸きおこる熱い想いと、くるおしい切なさを思いだすだけで、涙がにじむ。

「りょーくんが、僕を想ってくれてるかもしれない。どきどきして、泣いて、恋小説を書いたんだよ。
 りーくんが、りょーくんなら、両想いだから。
 りょーくんと、両想いになりたくて、だから──」

 ぎゅうぎゅう、涼真を抱きしめる。

「りょーくんと、幼なじみじゃなくなったら、僕、しんじゃうから。絶対言えないって思ってた。
 片思いの僕に勇気をくれたのは、りーくんだよ。
 りーくんが書いてくれた、恋日記だよ……!」

 
 夜空の瞳から、涙があふれた。






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