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勇気
しおりを挟むびくりと震える涼真を、ぎゅうぎゅう遥斗は抱きしめる。
「僕、ずっと、ずっと、りょーくんに、酷いことした。ほんとに、ほんとにごめんなさい……!」
涙と謝る遥斗に、白い毛布がもぞもぞ揺れる。
遥斗より大きな身体が、ふるえてる。
「……るーくん、なの……?」
そうっと毛布からのぞく涼真の目が、真っ赤だ。
ずっと、泣いていたんだ。
ひとりで。
真っ暗な部屋で。
思うだけで、たまらなくなる。
息がつまる胸で、遥斗は涼真を支えるように抱きしめる。
「僕の恋小説、読んでくれた? りーくんに、気もちを伝えたくて、りょーくんと両想いになりたくて、僕、がんば──」
「そんなわけない──!」
悲鳴に遮られた遥斗の声が、唇のなかに消える。
夜空の瞳が、涙に歪む。
「僕のこと、ハルは気持ち悪いって思うに決まってる──! ぬいぐるみやレースやフリルやリボンが、可愛いものが大すきな僕なんて、ちっともかっこよくない、気もちわるいって──!」
血を吐くような叫びは、涼真をえぐり、遥斗をも裂くようだった。
……そうだ。
遥斗は、かわいいものが大すきな涼真を、きもちわるいと思うと、思われていたんだ。
かっこいー涼真が大すきな遥斗は、かわいーものが大すきな涼真を、受けいれることができないと。
「思うわけないだろう──!」
叫んでいた。
くやしかった。
涼真に、そう思わせてしまった自分が。
涼真に、信じてもらえなかった自分が。
──どうして。
こんなに、りょーくんが、だいすきなのに。
思って、気づく。
一度も、りょーくんに『だいすき』伝えていない。
手をつないだだけ。
傍にいただけ。
『りょーくん、かっこいー』かっこよさを、ほめただけ。
そんなので、遥斗の想いが
熱く燃えて、切なく揺れて、あふれて止まらない想いが、伝わるわけない。
「僕が『りーくんの恋日記』の感想になんて書いたか、おぼえてる?
『きゅんきゅんした』
『りーくん、かわいい』
『がんばって』
りーくんが、りょーくんだって知らなかったときからずっと、僕はりーくんが大すきだった──!」
あふれる涙といっしょに、叫んでいた。
真っ赤な夜空の瞳が、ふるえる。
「……だ、だって、あれは、オンラインの話だから……実際とは、違う。ほんとに、ぬいぐるみとリボンとレースと絵文字でいっぱいの男なんて、ハルは気もちわるいって……!」
遥斗は首をふった。
ぶんぶんふった。
「かわいーって思うよ!」
のばした遥斗の手が、涼真の涙に濡れた、冷たい頬を包みこむ。
「りーくんの恋日記は、りょーくんの、ほんとうの気もちじゃないの……?
りーくんがりょーくんかもって思って、読みなおして、僕、泣いたよ」
あの衝撃と、沸きおこる熱い想いと、くるおしい切なさを思いだすだけで、涙がにじむ。
「りょーくんが、僕を想ってくれてるかもしれない。どきどきして、泣いて、恋小説を書いたんだよ。
りーくんが、りょーくんなら、両想いだから。
りょーくんと、両想いになりたくて、だから──」
ぎゅうぎゅう、涼真を抱きしめる。
「りょーくんと、幼なじみじゃなくなったら、僕、しんじゃうから。絶対言えないって思ってた。
片思いの僕に勇気をくれたのは、りーくんだよ。
りーくんが書いてくれた、恋日記だよ……!」
夜空の瞳から、涙があふれた。
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