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しっぱい!
しおりを挟む「ど、どうした……!?」
切ない想像で、目の前のクノワさまを慌てさせてしまったみたいです、ごめんなさい!
あわあわキーアは、ちっちゃな拳をひっこめ、頭をさげる。
「な、なんでもないです、ごめんなさい。えと、入学式の会場に行けばいいですか?」
席とか決まってるのかな?
そうだ、白い造花を胸につけてもらえるみたいだよ。
できたらクノワさまに付けていただきたい……!
一生の思い出になるから!
期待のきらきら光線が出てるといいなと思いながら見あげたら、手元の名簿を覗きこんだクノワは立ちあがる。
「案内する」
「……え?」
きょとんとするキーアに、クノワは告げる。
「キーア・キピアは、案内するよう通達が来ている」
透きとおる眼鏡の縁が、輝いた。
「えぇえ!?」
なになになに?
もしかして、悪役令息の伴侶(予定)は別室にご案内系なの!?
『こいつがあの悪名高きネィト・トリアーデの伴侶(予定)か!』
『ネィトさまに文句がある場合は、こっちに言えばいいんだな!』
『了解した!』
『覚えたぜ!』
『責任とれよ!』
とかそういう話?
もしかして入学式で皆に周知されちゃうの?
BLゲームの世界だから?
悪役令息の伴侶(予定)は、顔も名前も声さえもないモブだけど、文句だけは聞いて、責任だけは取ってくれ?
やだ────!
うるうるの目になったキーアに、眼鏡の向こうで見開かれたクノワの瞳が歪む。
「……俺の案内がいやなら、他の者に──」
ぴょこんとキーアは跳びあがる。
またさみしい想像で、今度はクノワ先輩を哀しませてしまいました、ごめんなさい──!
「ち、違うんです! 案内って、何か怖いこと言われちゃうのかなって、不安で! いつも一緒にいてくれる執事や従僕と離れちゃうなんてなかったし、びっくりして、ごめんなさい」
あわあわ頭をさげたキーアは、ごしごし目をぬぐう。
びっくりしたのと、緊張で、ちょっとほんとにうるっとしちゃったよ。
泣いてないよ!
ひとつ大きく深呼吸したキーアは、顔をあげて、笑う。
「クノワさまが案内してくださるなんて、めちゃくちゃしあわせです」
眼鏡の向こうの藍の瞳が、見開かれた。
「……あ、あの、もしよかったら、花を胸につけてくださいませんか? 一生の思い出にしますから!」
「…………え?」
いつも怜悧なクノワさまが、ぽかんとしてる!
「ご、ごめんなさい! 分不相応なお願いを──」
顔も名前もないモブが出しゃばってお願いしていいことじゃなかった!
深々頭をさげるキーアの前に、長い指がのびてくる。
涼やかな香りが、近くなる。
「……俺で、いいなら」
微笑んだクノワが、白い造花をキーアの胸につけてくれる。
長い指がキーアの胸にふれて、可愛らしい花が胸に咲いた。
「えへへ。うれしい。
ありがとうございます、クノワさま」
ふわふわ火照る頬で笑ったら、照れくさそうにクノワは目を逸らす。
「……いや。……その、敬称は要らない。俺は平民だから。きみは貴族だろう?」
「あ、たぶんもうすぐ貴族じゃなくなると思います」
にこにこして真実を告げてみた。
「……え?」
「何の功績もあげられそうにない残念貴族なので」
両親だけじゃなく、自分もね!
「……いや、でも、きみが頑張れば──」
クノワ先輩のほうが、うろたえてる!
「いちおう頑張りますけど、でも功績は、尽力してもだめなときはだめでしょう? 両親も畑仕事が大すきみたいだし、俺も家庭菜園が楽しいので、皆で自給自足もいいかなと思って」
にこにこするキーアに、クノワがぽかんとしてる。
いつもかっこよくて、凛々しい、クールビューティーなクノワが、薄めの唇を開いて、あんぐりしてるところとか、スチルでも見たことないよ──!
きゃ──!
拝みそうになった体勢を、あわてて止める。
──ああ、そうだ、苦労してきた両親のために必死で身を立てようとしているクノワにとっては、必死に頑張らないで平民落ちうぇるかむは、噴飯ものの話だったかもしれない。
「ごめんなさい、俺、生意気なこと言って。
クノワさまが、ものすごく頑張っておられるのは、ほんとうに素晴らしいことだと思います!」
拳を握ってみた。
あんぐりしていたクノワの凛々しい眉が、思いきり、しかめられた。
涼やかな眉間に、谷が刻まれてる──!
「……きみは平民の俺のことを、どこまで知ってる……?」
めちゃくちゃ不審だったみたいです!
失敗した!
BLゲームの知識チートどころか、マイナス補正だ──!
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