【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

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おねがい

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 近くに寄ってきたキーアに、気分をよくしたらしいハゥザが、満面の笑みでキーアの耳に唇を寄せた。

 きらっきらしてる──!
 まぶしい……!

 でも、わんこだと思えば、結構平気かも?

 ハゥザが秘儀を伝授してくれたら、もしかして、もしかするとキーアにも、ずっとあこがれだった魔法が使えるかも……!?

 わくわく期待するキーアの耳に、低くあまい声が降る。

「精霊さんにお願いしたら、魔法が使えるようになるよ」

 こしょこしょハゥザの吐息が耳をくすぐって、跳びあがりそうになったキーアの口が、ぽかんと開く。

「…………は…………?」

 きょとんとキーアは首を傾げた。


 この大陸には魔素と呼ばれる魔力の源みたいなので満ちているらしいんだけど、それだけだと魔道具を機動することくらいしかできない。

 魔法を使うには、精霊さんに精霊語でお願いして、精霊さんの御力をお借りする代わりに、こちらの魔力を差しだしますという簡易契約を魔法陣で結んではじめて、発動する。

 ロデア大公立学園の入学試験のときに勉強したよ!

 だから、魔法を使う時は
『魔力あげるので、魔法使わせてくださーい! おねがいしまーす!』と叫んでる感じだ。
 気が向いた精霊さんが御力を貸してくれて、魔力をお渡しして、魔法が発動する。

 だから、常にお願いしているわけだよね?
 さらにお願いする?
 
 精霊さんに愛されるというか、なんかもう世界のすべてから愛されすぎてるハゥザ殿下が『お願い!』って更に言うと発動する裏技なのかな?

「叔父上以外には、無理でしょう」

 ルゥイが突っこんでくれた。

「やる前から無理って決めつけるのは、関心しないなあ」

 ぷくりとふくれるハゥザが、かわいい。

 思わず、なでなでしてしまいました……!

 白藍の瞳が瞬いて、ハゥザの輝くようなかんばせが、うっとりしてる。かわいい。

 確かにハゥザの言うことは、もっともだ。


『自分には、絶対できない』

 思ったら、どんなことだって、絶対できない。

『自分にも、できるかもしれない』

 がんばってみたら、なにかが、始まるかもしれない。


 全然できなくったって
 やってみて無理だったって分かったって
『恥ずかし』
『みっともな』
 見たこともない人に笑われたって、そんなの、これっぽっちも屈辱なんかじゃない。


 自分に、期待してあげられなくて

 自分を、応援してあげられなくて

 自分を、信じてあげられなくて


 自分が、みっともなくて、情けなくて、何にもできないって思いこむなんて、自分で自分を潰してしまうなんて、たまらなくさみしいと思うから。


 たくさんの、たくさんの細胞みんなが、自分を生かしてくれてる。

 自分では微塵も理解できない機構で、息をして、鼓動が鳴り、思うとおりに指が動いてくれる。
 それがどんなに奇跡なのか、ちょこっとでも病気になったり怪我をしたら、痛いくらい、わかるから。

 たくさんの、たくさんの細胞、みんなが、力を貸してくれる。

 せっかく生まれてきたから、やりたいこと、ぜんぶ、やってみたい。

 顔も名前も声もないモブに、恥も外聞も、何にもないのです──!

 やってやるぜ!

 キーアはちっちゃな拳を握る。


「闇の精霊さん! 俺、ずっと、ずっと、魔法を使うことに憧れてました! もしよかったら、俺に、あなたの御力をお貸しください! 魔法を使いたいです──!」

 叫んでみました。


 ルゥイが、ネィトが、マェラが、ぽかんとしてるのが見える。
 ハゥザとフィリが、によによしてる。

 ………………え。

 もしかして、嘘だったの──!?

 ぎゃ──!

 は、恥ずかし──!

 あわあわするキーアの視界が、闇に染まった。



「………………え…………?」

 知らない間に、目を閉じた?
 恥ずかしすぎて?

 あるな。


 あわててキーアは目を開いた。

 ……開いた。

 開いてる。


 なのに、目の前には闇があって、ルゥイも、ネィトも、マェラも、ハゥザも、フィリも、ロデア大公立学園もどこにもない。

 指先まで見えないほどの、真っ暗な闇に包まれる。


「……あ、あの……も、もしかして、闇の精霊さん……?」

 そうっと聞いてみました。

 闇が、瞬いた気がした。


「あ、あの、俺、キーア・キピアです。えと、前世は室矢紀太でした。
 この世界と違う世界で生まれて、生きて、死んだみたい? その記憶を持って、キーアとして生まれたみたいです。
 前世のときから、ずっと、魔法にあこがれてました! もしよかったら、俺、精霊さんの御力をお借りして、魔法を使いたいです。よろしくお願いします!」

 お願いしてみました。


『キーぁ?』


 ひそやかな、しずかな音がする。


 真冬の深夜のように厳しい、春の木洩れ日に落ちる影のようにやさしい声だった。







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