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いっしょに
しおりを挟む『……きー、だいじょうぶ……?』
やさしい、きびしい、ふわふわした声が降りてくる。
目を明けても何にも見えない闇のなかで、キーアは顔をあげる。
「……闇さま……?」
『……ぼく……ぼく、ひかり、こわくて……きー、まもって、あげられ、なかった……』
ちいさな声が、ふるえてる。
『……ごめん、なさい……』
「そんな──! 俺が勝手に魔力を渡すって言っただけですから。闇さまが気にすること、何にもないです」
にこにこして手を伸ばしたら、指の先で闇が集束してゆく。
はじめてお逢いしたときは、うさぎさんくらいだったけれど、今は、りすさんくらいに小さくなった、うるうるの涙目な闇さまを、抱きしめた。
「こわくして、ごめんなさい。俺は、だいじょうぶですから。ちょっと寝たらすぐ回復するって」
ふわふわの闇の髪をなでなでして、おっきな闇の瞳をのぞきこむ。
「光さまとお話しましたけれど、ちょっと言い方がきつくて、こわく思えるかもしれませんが、おやさしい方でした。見た目で、こわいって思っても、お話してみたら、やさしくしてくれる方もいらっしゃるんです」
『……そ、なの……?』
「そなのです。ほんとに怖いのは、やさしい顔をして近づいて平気で裏切って踏みつけて財産をむしり取っていくような人ですよ!」
『ざいさん?』
「え、えと、魔力ぜんぶ吸いあげようとするような、こわい精霊さんです」
『きゃー!』
ぷるぷるしてる。かわいい。
「暴力を振るったり、裏切ったり、略奪したり、そういう人も精霊さんもいるかもしれませんが、そういうのじゃなければ、言い方とか、やなことかあったとか、こわく、きつく見えているだけのときもあるんです。皆のなかに、やさしいところと、厳しいところがあるから。闇さまも、そうでしょう?」
『……そ、そかな……?』
「おやさしい闇さまには、あんまり厳しいところはないかもしれませんが、俺のなかには、意地悪なところも、やなところもあって、でも、誰かにやさしくしたいって思う気もちも、ちゃんとあるんです」
『……きー、やさしい』
きゅっと抱きついてくる闇さまが、天使です!
なでなでしたキーアは、ふわふわ笑う。
「それは俺が、闇さまがかわいくて、やさしくしたいなって思うから。でも俺が、闇さまにとって怖い光さまと仲良くしたら、いやな気もちになりませんか? 闇さまにひどいことをしていなくても、俺のことも、ひどいと思いませんか?」
大きな瞳が、さらに見開かれて、しおしおしょげる。
『……こころ? ぎゅーって、したの』
か──わ──い──い──!
きゃ──!
ちっちゃな闇さまをつぶさないように、そうっと、でもぎゅうぎゅう闇さまを抱きしめたキーアは、闇の瞳をのぞきこむ。
「おんなじ俺でも、やさしかったり、いやな人だったりするんです」
首を傾げた闇さまは、ちょこっとうなずいてくれた。
「誰かの、こわいところ、きついところ、いやなところを見るんじゃなくて、あったかい、やさしいところを見つけられたら、自分の気もちが、ちょこっと楽になりますよ!」
『……あったかい、とこ……』
「光さまの、おやさしいところ、あったかいところ、一緒に探してみましょう。光さまがこちらのことを、どう思ったって、いいんです。
誰かの気もちは、自分には、どうすることもできない。
でも、やさしいところがあるんだなって思うだけで、こわいのが、ちょこっと減るんです。気もちが楽になるんです」
『……きー、いっしょに、さがして、くれる……?』
「もちろんです! キピア家でお茶会をするんです。光さまもいらしてくださるって。俺が一緒にいますから、お話してみましょう」
ちっちゃな闇さまの頬を、つつみこむ。
「だいじょうぶ。
俺が、闇さまを守るから」
ぎゅう
抱きしめたら、ふわふわ紅い頬で笑ってくれる。
『きーと、いっしょ、なら、がんばる』
ぴとりと、くっついてくれる闇さまが、めちゃくちゃ、かわいーです!
きゃ──!
もだもだしてたら、闇さまが、キーアの顔をのぞきこむ。
『きー、まりょく、なくなて、しんどい?』
「みたいです。寝てたら治るって」
微笑むキーアに、闇さまはそっと目を閉じた。
『ぼくの、ちょこっと、あげる』
ちっちゃな闇さまの、ちっちゃな唇が、おでこにふれる。
ちゅ
闇の魔力が、噴きあがる。
「わあ──!」
びっくりして飛び起きたキーアに、救護室の医士が化け物を見るような目で振りかえった。
「……あぁ、うん、魔力が人間の領域を超えて回復してるみたいだから、もう動けるんじゃないかな」
ぷるぷるしてる……!
「えぇ……!?」
おっかなびっくり、起きてみました。
身体が、めちゃくちゃ軽くなりました。
「闇さま、ありがとうー!」
一瞬で魔力が回復したので、午後の特別講義にも出られそうです!
やた!
騎士科だよー!
たのしみ!
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