【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

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ルゥイ

だいすき

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 まるで理想の2次元を3次元で体現するようなルゥイに、キーアはあこがれていた。

 立ち居振る舞いも、微笑みも、言葉も、やさしくて、品があって、配慮に満ちていた。


 きらきら輝くルゥイはいつだって完璧で、キーアはうっとり見惚れてばかりだったけれど。

 それはルゥイの絶え間ない、すさまじい尽力の成果なのだと理解したら、かなしくなった。



 ルゥイに感嘆する周りも、キーアも、ルゥイじゃなくて、理想を見てる。

 完璧な大公殿下の子息を。



 今までの自分が、ルゥイを苦しめていたのだと気づいたのは

「……僕は、からっぽなのかもしれない」

 ルゥイが、はじめて心を吐露してくれたときだ。

 虚ろな微笑みは、はじめてルゥイが見せてくれた、ほんとうの気もちだった。



 衝撃だった。

 頭も心も、真っ白になった。

 自分は、今まで、何を見ていたのだろう。

 目の前のルゥイじゃなく、BLゲームの攻略対象のルゥイ、完璧な大公子息のルゥイしか、見てこなかった……?


 そんなつもりなんて、なかった……!

 白々しい自分の言い訳に、吐き気がする。



「そんなことない──! ごめん、ルゥイ、俺……!」

 何を言えばいいのか、わからなかった。
 何を言っても、言い訳になってしまう、ルゥイを余計に傷つけてしまう気がした。

 ルゥイは首をふる。


「キーアにすきになってもらいたくて、キーアがすきそうな人になりたくて……じゃあ、ほんとうの僕は、どこにって……」

 ふるえる声を、抱きしめた。


「ごめんなさい……!」

 ルゥイは首をふる。


「ちゃんと、ルゥイを見るから!
 理想な大公子息じゃなくていい、ほんとうのルゥイを、見せて」

 ルゥイは首をふる。


「……キーアはきっと、幻滅する」

「そんなこと、絶対ない!」

 キーアはルゥイを抱きしめる。


「ルゥイが、すきだから!」

 叫んでいた。


「……ともだちとして?」

 ルゥイの若葉の瞳が、潤んでる。


「ちがう」

 熱い頬で、キーアは首をふる。


「俺には、ほんとうのルゥイを見せて」

 ささやいて、抱きしめた。

 ルゥイのはちみつの髪が、キーアの肩で、ふわふわ揺れる。


「キーアが、ほんとうに、僕をすきになってくれたら」

 ちいさな声が、消えてゆく。


『ルゥイが、すき』

 今のキーアの言葉は、理想のルゥイにうっとりしていたキーアの気もちは、ほんとうのルゥイには、届かない。








 キーアは、はちみつの髪を揺らして、若葉の瞳をやわらかに細めて笑ってくれる、とろけるような理想のルゥイを見なくなった。

 ほんとうのルゥイを探す。

 人目のないところで、そっと吐息するルゥイや、誰もいないところで、ちいさなちいさな声で歌うルゥイ、突然朝早くから逢いにいって、寝起きでぽやぽやした、はちみつの髪をぴんぴん跳ねさせたルゥイ、見つけるたびに、鼓動が跳ねた。

 あまくて、切なくて、燃えて、痛い。

 逢いたくて、もっと知りたくて、ずっと、ずっとルゥイを目で追うようになった。



『次の大公宮舞踏会で、ルゥイが伴侶(予定)を決める』

 噂がロデア大公国を駆け巡る。

 ルゥイへの気もちに気づいたときに、キーアの引責で伴侶(予定)を解消したから、キーアはフリーだ。

 ロデア大公立学園でも、キーアはいつもそばにいるのに。

「おはよう、キーア。今日もかわいいね」

 完璧な微笑みで言ってくれるルゥイに、舞踏会のことを言ってくれないルゥイに、胸がぎゅうぎゅう音をたてる。


『俺を、選んで』

 はずかしくて、傲慢で、言えなくて。

 だからキーアは、ルゥイを見あげる。


 ──今度こそ、届け。


「俺、ルゥイが作ったルゥイじゃなくて、ほんとのルゥイを、見たい。
 ルゥイが、大すきだから」


 ルゥイの瞳が、揺れる。


「キーアが僕を見てくれるのを、僕を想ってくれるのを、ずっと、待ってた。……だめかと思ってたから。うれしい、キーア」

 キーアの肩が、ルゥイの涙で濡れてゆく。

「待たせて、ごめんね、ルゥイ」

「……うん」


 キーアはぎゅうぎゅう、ルゥイを抱きしめる。


 今度こそ、届くかな。


「からっぽなんかじゃない。ルゥイが頑張ってきたことは、ひとつもむだになんてならない。
 俺は、どんなルゥイも、だいすきだよ」


 ささやいたら、若葉の瞳が泣きだした。


「……ま、待って、今、泣きやむ、から……!」

 ごしごし目を擦ろうとするルゥイの手を止める。


「だいすきだよ、ルゥイ」

 涙のまなじりに、口づける。


 耳まで真っ赤になったルゥイの瞳から、あふれる涙を抱きしめた。








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