【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ

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おこです

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「なんだ、その目は。無礼だぞ!」

 コタ殿下の叫びに、ルティは眉をつりあげる。


「おんなじ顔だからって、俺の中身を無視して、伴侶(予定)と引き裂いて、無理やり伴侶になろうとする人は、無礼じゃないのか?」

 低く低く凍てつく声に、コタが目を剥いた。


「な──! ぼ、僕はコタ王国第二王子だぞ! 口を慎め!」

 いつもはきゅるきゅるなのだろうルティの目が据わる。


「振りかざす身分がなくなったら、あなたには何が残る?」

 コタの顔が、歪んだ。


「カティと同じ顔で、何を言うんだ──! カティは……!」

「カティが選んだのは、クヒヤ殿下だ。あなたじゃない。カティは強権を振りかざして言うことを聞かせるような人、大きらいだよ」

 真実を告げてやった!


「な……! そ、そんなわけない、カティは……カティは──!」

 コタの眼球が揺れる。


「選ばれなかったのが苦しいのはわかるけど。それで俺の顔だけ見て伴侶にとか、俺と伴侶(予定)を引き裂くとか、やめてくれる?」

 追い打ちをかけるのは、かわいそうだ。思っても、口は止まらなかった。


「そんなことをする人だから、カティはあなたを選ばなかった」


「……っ!」

 ぐしゃぐしゃになった顔で、コタが叫ぶ。


「不敬罪で、投獄せよ──!」

 コタの命令に衛士が駆けつけるより速く、トトは剣を抜いた。


「死ぬ?」

 コタが、ぽかんと口を開ける。


「……な、何、を……」


「俺、王宮にいる人、皆殺しにできるよ」

 穏やかなトトから、ゆうらり立ちのぼるのは、闘気だ。
 いつもやさしいトトの瞳が、冴え凍る。


「王族がいなくなったら、ルティが自由になるなら、殺す」


「……っ そ、んな、こと、が……」


 トトが、剣を振り下ろす。

 ドガァアアオォオオン──!

 ただそれだけで、王宮の門が真っ二つに割れて、崩れ落ちてゆく。


「死ぬ?」

 首をかしげながらトトが構える剣の刃が、冷たい光を放った。


「ひ、ィイ……!」

 後退るコタを回収したのは、コタをよりきらきらに頭よさげにしたみたいな人だった。

 よく似ている。
 優秀だと評判の王太子殿下らしい。


「弟がひどい真似をしたようで、申しわけない」

 頭をさげた王太子に、目を剥いたのは、コタだ。


「兄上! 平民に頭をさげるだなんて、なんてことを──!」

「ルティくんもトト殿も喜んでいると聞いて、本人に確認しなかった俺が愚かだった。
 トト殿の伴侶(予定)に手を出すなど、お前は国を滅ぼしたいのか」

 王太子の言葉に愕然と目を見開いたコタが、トトを見て泣きそうになってる。


 ──トト、すごい。

 ぽかんとしていたルティは、ぱちぱち拍手した。
 照れたように笑うトトは、いつものトトなのに、王宮の門は瓦礫になってる。


「俺たちは王族として生まれた。貴族として生まれたから、平民として生まれたから。そうして人間を分けて、こうして軋轢を生んで、いいことがあると思うか?」

 王太子の言葉に、コタは声をあげる。

「お、王が統治するから、国は正常に機能するのです!」

「王でなくともよい。次々新しい国が生まれてる。身分制なんて、きっとすぐ古くなる」

 弟とよく似た瞳が、コタを見おろした


「お前が愚かだと言われるのは、自分のことしか見えず、強権を振りかざし、民をかえりみないからだ。
 いつもいつもお前のせいで、頭をさげる羽目になる俺の身にもなれ! 反省しろ!」


 叱られたコタが、しょんぼりしてる。





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