オメガの悪役令息に推しの愛が届かない

  *  ゆるゆ

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ぴんく

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 走馬灯のように展開される前世の記憶に押し流され、倒れそうになった俺を支えてくれたのは、だるんだるんの父だった。

 意外にも父は、やさしかったらしい。

「おい、商品に、きずをつけるな。
 お前のいいところは、その顔と身体だけなんだからな!」

 前言を300%撤回する。

 俺の見た目は、強欲な父のお眼鏡にかなったらしい。だからこうして舞踏会に連れてこられたのだろうが、こんな親父の言いなりになって、薬を使って孕むだなんて、絶対絶対絶対だめだ。金を貢がされるアルファが、かわいそうすぎる!

「俺、帰る──!」

 じゃ、なかった──!

 待て!

 最愛の推しが、発情させられている!

 まったく全然このみじゃないオメガと、とってもぴんくな展開になって、子どもができて、子どもを憎むようになったら?

 最愛の推しの子どもが、推しに憎まれて生きるなんて、絶対絶対絶対絶対絶対だめだ──!

 最愛の推しも、かわいそうだよ!

 な、なんとか救わないと!


 ………………どうやって……?


「親父、強制発情させられたアルファって、どうやったら元に戻る?」

「発情がおさまったら孕めんだろうが! 何を考えている!」

 激おこだよ。

 どうどう、親父。
 闘牛士になった気分だよ。

「いや、発情しっぱだったら大変だろ。戻らないと、他のオメガといちゃいちゃしちゃって、子だくさんになるじゃん」

 たゆたゆの腹を揺らした親父は、考え深げに腕を組んだ。

「ふむ、そこまで考えるとは、お前、実は頭いいな」

「よくねえよ! お前の子だ!」

 自虐じゃなくて、真実だ。
 せつない……!


「ルゼ、お前、突然口が悪くなったぞ。お父様に、なんだその口の利き方は! 足の開き方まで、ガサツになったじゃないか!
 もっと楚々として、アルファに『こいつ犯したい』と思ってもらえるようなオメガに──」

「誰がなるかァア──!」

 鉄拳をお見舞いしたい拳が、ぷるっぷるだ。

 まだ殴ったらだめだ。
 どうどう、俺。


 オメガには、アルファの仕組みとか、アルファの摂理とかが、今ひとつわからない。
 アルファに、オメガの身体がどうなるのか、きっとほんとうのところは、わからないように。


「発情したアルファを止めるには、どうするんだ!」

 真剣に聞いた俺に、おもむろに親父は告げる。

「出せば止まる」

 簡単でした。


「……中じゃなくても?」

「さいあく手だな。出せればいい。
 アルファはな、出したい生きものなんだ」

 親父の目が、せつない。

「お前の母ちゃんも、それはそれは可愛くてな、お前はそっくりだ、ほんとうに可愛い。本人にそんな気はなくても、フェロモンまきちらされて、発情しちゃって、出したらお前ができたんだ」

 母ちゃんの反論が、すさまじい反撃が、めちゃくちゃありそうだが……!

「そういう話は、舞踏会じゃないところでしようか」

 周りから刺さってくる目が、痛い──!

「はじめたのは、お前だろう!」

 そうでした。


「親父、ありがと。ちょっと行ってくる!」

 しゃっと手をあげる俺に、親父が目をむいた。

「待て、アルファを見つけてから──」

「もう見つけた!」

 叫んだ俺は、駆けだした。

 下町でつちかった逃げ足で、舞踏殿をよろめくように出てゆくジークを追いかける。


「だいじょうぶですか? ジークさま。向こうの部屋で、すこし休みましょう」

 舞踏殿を出た廊下でジークを支えているのは、これでもかと発情フェロモンを巻き散らしているオメガだ。


 ぴんくの髪を、ふわふわ揺らして、おっきなぴんくの目で見あげるさまは、間違いない、BLゲームの主人公だ──!





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