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光臨!
しおりを挟むノィユが母に聞いて想像したより、もしゃもしゃしてた。
魔法使いのローブを着てくれたら、間違いなく魔法使いのおじいちゃんだ。
「も、もしかして、あの方が……? わざわざ迎えに出てくださった?」
そうっと聞いたノィユに
「た、たぶん?」
両親が首を傾げる。
一回しか会ってないし、もしゃもしゃしてた印象しかないから、よく解らないのだろう。
緊張したノィユは『どうかどうかいじめられませんように……!』祈りながら、もしゃもしゃなおじいちゃんを見あげる。
長くのばされた、というより放置された髪で、顔はよく見えない。
ノィユは胸に手をあて正式な礼をするため、やわらかに膝を折る。
「お初にお目に掛かります、ノィユ・バチルタにございます。ヴィル・ヴァデルザさまの伴侶となるため、バチルタ家よりまかりこしました」
丁寧に頭をさげたら、微かに息を呑む音が聞こえた。
「バチルタ家当主、ノチェ・バチルタにございます。此度のお話、とてもうれしく、息子とともにまかりこしました」
母がとなりで膝を折る。
「ノチェ・バチルタの伴侶、ノィユの父、ユィクにございます」
父も一緒に膝を折る。
おとうさんは平民だけど精霊の容姿と心根のやさしさ(たぶん)で貴族のバチルタ家当主を射止めて玉の輿! だったはずが、悲惨な貧乏生活に……
両親ともに顔面の使い方を間違った気がしてならないけれど、借金で唸る以外は、いちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃする二人をみていると、これでよかったのかな、とも思う。
僕は正しく顔面を使いたいよ……!
どうか、いじわるされませんように……!
祈るようにノィユはそうっと顔をあげる。
険しい山から吹き下ろす風に、もしゃもしゃの髪が、舞いあがる。
髪に隠されていた藍の瞳が、ノィユの姿に驚いたように見開かれた。
「………………え?」
しわなんて、ひとつもなかった。
それどころか、まぶしい……!
もしゃもしゃしている髪と髭の印象が強すぎておじいちゃんにしか見えなかったが、よく見ると枯れてない。
鍛えあげられた逞しい身体を、細い腰を、高い背を、風が曝した素顔を、まだ3歳のちっちゃなノィユは、ぽかんと見あげた。
まぶしい……!
精霊みたいな両親を見慣れているノィユだが、逞しく凛々しくかっこいい、戦える理想の男みたいなのは、見たことなかった──!
ノィユと両親を交互に見つめた青年が、ノィユの前に屈む。
「ヴィル・ヴァデルザだ」
風がおさまると、いっぺんにもしゃもしゃおじいちゃんぽくなったが、ノィユの目は、輝くかんばせをばっちり憶えている。
ヴァデルザ家当主、ノィユの伴侶になってくれるという、奇特なやさしいおじいちゃん、じゃなくて、ものすごくかっこいー青年だ!
ぽかんと、ノィユは口を開けた。
礼儀がなってないとか、一瞬で頭から吹っ飛んだ。
頭のてっぺんからつま先まで、ヴィルを凝視する。
「……おじぃちゃんの要素は、髪と髭……?」
呟くノィユの口を塞ごうと、母と父がばたばたしてる。
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