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ヴァデルザ家のおでかけ
しおりを挟む字の勉強をするためにも、ヴァデルザ家にある本は宿屋に着いた時に読むものとして何冊か持ってゆき、馬車に乗っている間はヴィルとロダが先生になって教えてくれることになった。
「あの、砦に誰もいなくなっちゃうけど……」
心配するノィユに、ロダもヴィルも何でもないことのように、うなずいた。
「敵が、攻めて、きても、二人きり。どうしたって、終了、だから」
確かに!
砦の意味が皆無だ!
「残念ながらヴァデルザ家に御用の方はいらっしゃいませんので……」
さみしげに微笑むロダの周りにだけ、秋風が吹いてる!
「皆で、行こう」
微笑んだヴィルが、鋼鉄製らしい馬車を片手で持ってきてくれる。
「………………は!?」
…………馬車だよ?
乗り物だよ?
手で運べる自転車じゃないよ?
僕たち5人も乗せて運んでくれるものだよ?
しかも鋼鉄製の、ものすごく重そうな馬車なのに、片手なの──!?
にこにこするロダが、巨大な白馬っぽい何かを2頭、厩舎から連れてきてくれた。
「………………え…………?」
「可愛いでしょう、額に月のように白い毛が生えている子がツー、星のように白い毛が生えている子がホーです」
『そ、そのネーミングセンスは、どうなのかな!?』
突っ込んだらだめなことは理解してる。
ブルルルン!
いななくところは馬っぽいけど、え、でも絶対、馬じゃないよ、ね……?
茫然とするノィユと両親をよそに、見あげるほど巨きな馬っぽいのをなでなでしたヴィルとロダが頑丈で重たそうな馬車に繋いでくれる。
「さあ、行こうか」
微笑むヴィルが、あまりに日常っぽいので、硬直している両親の代わりに、ノィユが口を開いた。
「……あ、あの、その馬車は……?」
「王都にゆくなら、魔物の闊歩する森を抜けるのが一番の近道なのです。多少の魔物の体当たりにも耐える、ヴァデルザ家自慢の馬車です!」
ロダが誇らしそうに胸を張ってくれる。
よ、よかった、バチルタ家からヴァデルザ家へ向かう道には、魔物がいなくて──!
真っ青になった両親もカタカタしてる。
「……そ、その、巨大な、ツーとホーは……馬、です、か……?」
そうっと聞いたノィユに、ヴィルは首を振った。
「魔物」
仰け反るノィユと両親を安心させるようにロダが微笑む。
「ヴァデルザ家で代々飼われている魔物です。ふつうの馬では怖がって魔物の森に入ることさえできません。この子たちは、多少の魔物の襲撃なら蹴散らして軽快に走ってくれるのです」
ぽふぽふツーとホーの首をたたくロダが大変誇らしそうだ。
ロダに褒められたツーもホーも、うれしそうに鼻を鳴らしてる。
つぶらな黒い瞳で、初めて見るノィユを不思議そうに覗き込んで、ふんふんしてる。
……かわいい。
魔物だけど、ツーもホーも、かわいいよ!
「ツーとホーが止まるほど強い魔物が出たときは、わたくしとヴィルさまで対処いたしますので、ご安心ください。走っていると、多少ガウンガウン魔物が当たってきますが、どうぞお気になさらず」
笑顔だ──!
すんごい笑顔だよ!
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