【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ

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愛しかない

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 ぽくぽく軽やかな蹄鉄の音をたてて、地上をふつうに駆けてくれる馬さんに、ノィユは思わずほっとしてしまった。

 飛んでない。
 胃がひっくりかえらない。

 うれしい。

 いや、ツーとホーはめちゃくちゃ可愛くて、ものすごく頑張ってくれたけど!
 めちゃくちゃありがたいけど!
 ごめんよ!

 思わず泣いて謝ってしまった。

 向かいの席で、すべてを理解したようなロダがにこにこしてる。



「詐欺じゃないって言うんだよね?」

 エヴィの追及は真剣だ。

 最愛の兄に寄ってきた借金まみれ伴侶なんて、あやしさ全開どころか斬って捨てたいレベルだと思う。

 ほんとうに申し訳ない。


 それでもヴィルの伴侶は譲れない!


 発言の許可を貰ったものとして、ノィユは深く頷いた。

「僕は、誠心誠意ヴィルに、ヴァデルザ家にお仕えし、その繁栄に貢献したいと心から願い、尽力するつもりです」

「お兄さまを下位貴族が呼び捨てにするなんて!」

 きぃいいいイイ──!

 ハンカチを噛むエヴィに、トートがちょっとうれしそうだ。
 ロダがによによしてる。


「俺が、呼んでほしいと、言った」

 ほんのり朱い眦で告げるヴィルに


「ぎぃいいぃイィイイ──!」

 愛くるしいエヴィのかんばせが、凄まじいことになってる。


「エヴィ、お義兄さまの御前だから、その顔は」

 トートにぽふぽふされたエヴィが

「は!」

 あわあわ天使なかんばせに戻った。

 ロダの肩がふるえてる。



「……俺は、見慣れて、るけど。変わらないトートに、ありがとう」

 ヴィルは見慣れてるんだ!


「い、幾らお義兄さまとは言え、僕のほうが家格が上なのですから、呼び捨てにするなんて……!」

 真っ赤な耳で抗議するトートの声がちいさくなる。


「……うれしぃ、じゃ、ないです、か……」

 デレた!


 ロダがによによして、エヴィの唇が尖る。


「トートも、お兄さまがすきなんじゃん」

「ぐ──!」

 否定しないよ!


「ちょっとそこの! によによしてないで、どうして借金が凄まじいことになったのか、ちゃんと説明しなさい!」

 火の粉が戻ってきた!

 わたわたしたノィユは、慌てて姿勢を正し、バチルタ家の借金事情を説明した。

 

「あんぽんたんなの?」

 エヴィの感想に、バチルタ家一同で項垂れる。


「……誠に、申し訳ございません……」

 家族皆で、頭を下げた。


「まあでも親友のくだり以外は、情状酌量があるかなあ。あんぽんたんだけど」

 あんぽんたん光線に刺された両親が泣いてる。


「お兄さまに借金の迷惑は掛けない、ヴァデルザ家の財産目当てじゃないっていうのが、きみたちの主張?」

「……え、えと、あの……ご飯を食べさせて戴けるということで、大変、大変に喜んでしまいましたが……」

 涙目な母が弁明してる。

「お、お肉を恵んでくださって、あまりの歓喜に号泣しました、そ、それは財産狙いということになってしまうのでしょうか……!」

 父も泣いてる。

「僕、ご飯を食べるために、身売りするつもりだったんです、ごめんなさい──!」

 ノィユも深々と頭をさげる。

 あんぐり口を開けそうになったエヴィとトートが、慌てたように口を押さえた。



「ヴィルにお逢いした後は、愛しかないです!」

 拳を握って宣言した。


 頭のうえで、ヴィルの耳がほんのり赤くなってる。かわいい。






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