【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
29 / 152

到着だよ

しおりを挟む



 馬車には当主が乗っていることを示す意匠の家紋が掲げられていて、王宮に近づくとすぐに衛士が鋼鉄の門を開いてくれた。

「ネァルガ家当主さま、ご来臨!」
「ヴァデルザ家当主さま、ご来臨!」

 ぱっと見て、しゃっと言える衛士の皆さんが、すごい。

 ネメド王国には電話も携帯もないけど、魔法が発達しているので『ネァルガ家当主が来ました』というのはすぐに上に伝わるらしい。


「……呼んでないけど?」

 馬車寄せまで迎えに来てくれた年若い侍従さんらしき人のデカすぎる態度におののくノィユをよそに、馬車から降り立ったトートが、ふんと鼻を鳴らす。

「大切なお義兄さまが伴侶契約をなさるから、付き添いだよ、付き添い!」

 エヴィとヴィル、ロダと両親がこうべを垂れているのに、あわててノィユも頭を下げた。


 若くて侍従さんみたいな質素な白い服を着てるのに、たぶん、めちゃくちゃ偉い人っぽい。

 馬車寄せにまで偉い人が来るなんて、王宮、こわい。


 とりあえず、会う人すべてに頭を下げておけば、いいんじゃないかな!
 王宮の侍従さんはたいてい貴族だからね。ということはバチルタ家よりは絶対えらいからね!

 丁寧に頭をさげたノィユのつむじに、声が降る。


「へぇえぇえ。ヴァデルザ家当主を落とすなんて、どんなのかと思ったら、これはこれは」

 楽しげな声がした。


「おもてをあげよ」

 涼やかな若々しい声に、そこはかとなく漂うのは、威厳だ。

 堂に入った『おもてをあげよ』があまりにも熟練で、ひきつる。


 …………あの、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ偉い人なんじゃ……?

 ノィユの隣で、両親もカタカタしながら顔をあげた。


「うわ、紫の目だ」

 顔をあげたノィユのすぐ前に、青年の顔があった。
 あざやかな空の長い髪の向こうで、透きとおる空の瞳が閃いた。

 ヴィルには負けるけど(正直でごめんよ)涼やかな凛々しいかんばせに息をのむ。

 いや、近いから!
 珍しいからって、そんなに目を覗き込まれても──!
 近い近い近い──!
 
 仰け反るのも失礼だし、内心わたわたでヒクヒクするノィユの隣から、低い声が降る。


「ザイア陛下」

 …………………………。

 へいか。

 へいかって、陛下?


 きゃあぁあぁああ──!

 卒倒しそうになりながら踏ん張るノィユの顔をしげしげと覗き込んだザイアがつぶやく。

「ふぅん、透ける肌に月の髪に、精霊の瞳かあ。……魔物の目とも言うけどね。
 ぷっくりほっぺも、ちっちゃな手足も、とっても美味しそうな、月の精霊と陽の精霊の子どもね。
 これはこれは、我が国の最高峰だな」

 ザイアの目が、ノィユの瞳を覗きこむ。


「ヴィルを落とすんだから、ただしく魔性か」

 なでるようにノィユの身体をたどる視線が

「陛下」

 ヴィルの低い声に離れてく。

 王に謁見するときも、もしゃもしゃのままの髪と髭のヴィルを見つめたザイアは、とてもとても楽しそうに唇の両端をあげた。


「なるほど。ヴィルはちいさな男の子が大すきだったんだな。
 ……すまなかったな、今まで全く趣味にあわぬ縁談を勧めて」

「違う──!」

 叫ぶヴィルの雪の髪が、逆立ってる。

 とても申しわけなさそうに眉を下げるザイアの目が、最高に楽しいものを見つけたように輝いてる。







しおりを挟む
感想 335

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

処理中です...