【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ

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 ネァルガ邸で朝起きたら、うさぎでした。

 ノィユは茫然と目を瞠る。
 鏡に映る自分が、まっしろな長い耳に、紫の瞳の、うさぎさんだ。

 手が前足になって、もふもふしてる。
 足が後ろ脚になって、もふもふしてる。
 お鼻が、ぴこぴこしてる。
 おひげが、ほわほわしてる。
 お耳が、ながーいよ! 前足で、てしてしできるよ!

 ひげは憧れだったけど、こうじゃなかった!

『はぅあー! ヴィル、ヴィル、僕、うさぎになっちゃったよ!』

 隣でくぅくぅ眠っているヴィルの頬をてしてししてみた。

「……ん……ノィ、ユ……?」

 寝ぼけたままのヴィルが、ぎゅっと抱っこしてくれる。

 至福。

「……ふあふあ……」

 くぅくぅ寝たヴィルが、がばっと起きあがった。

「ノィユ──!?」

『ヴィル、僕、うさぎになっちゃった!』

 さがる眉毛が、ちょこちょこした毛だよ。鏡で見ても、困ってるのかわからない!

 うさぎのノィユをそうっと抱きあげてくれたヴィルが、ノィユの目を覗き込む。


「……ノィ、ユ……?」

『僕だよ、ヴィル!』

 きゅう

 もふもふの前足で抱きついてみた!

 ヴィルのまなじりが、ほんのり紅くなる。


「……ノィユだ……」

 解ってくれるヴィルが、すごすぎる!




 うさぎなノィユを抱っこしたヴィルに、エヴィの蒼の瞳がまるくなる。

「お、お兄さま!? う、うさぎ……? ど、どうなさったのですか?」

 ヴィルとうさぎを見つめるエヴィの頬が、ふわふわ朱い。

「ノィユ」

「……………………は?」

「ノィユ」

 もふもふの前足をあげてみました!
 うさぎなノィユの目を覗き込んだエヴィが、息をのむ。

「……紫……精霊の瞳……うそ、ほんとにノィユなの!?」

 こっくり頷くノィユに、エヴィの目が遠くなる。

「え、ちょっと待って? 3歳児とよりは、うさぎと伴侶になるお兄さまのほうがいいかもってちょっと思ったんだけど、僕、どこか間違ってる……!?」

 うろたえてる!

「ちょ──! うさぎになっちゃうなんて、どういうことなのノィユ! かわいいじゃないか──!」

 真っ赤なエヴィが、うろたえている!


「おはようございます、お義兄さま。
 うわー、ノィユ? ほんとに? うさぎになってる!」

 目をまるくしたトートが、頭をなでなでしてくれる。

「ちょ……! さわらないでよ! ぼ、僕だって……!」

 さわる?

 首を傾げるノィユの長い耳が、ほわほわ揺れる。


「ぐ──!」

 エヴィはうろたえている!

 前足をのばしてみた。

「くぅ──!」

 ちょこんと伸ばした手で、前足を握ってくれた。


「はぅあ──! ほ、ほあほあ……! きゃ──!」

 エヴィはうろたえている!


「エヴィが可愛すぎて鼻血が──!」

 ノィユが出せないハンカチを、ヴィルがトートに差しだしてあげてる。やさしい。


「何か、知ってる?」

 低いヴィルの声に、トートは頷いた。

「なんか魔の塔の奥で秘法を研究してる人が、お義兄さまが伴侶を持ったのが血涙が滝になるほど悔しいから『伴侶を一日だけ可愛くしてやる』って言ってた、らしいです」

 ぽかんとしたヴィルの隣で、エヴィが親指を立ててる。

「あの人、最高だ──!」

 ヴィルの藍の瞳が剣呑に細くなる。


「ちょっと、絞めて、くる」

『だ、だめだめ、僕、苦しくないよ、ヴィル、だいじょうぶだから! ヴィルが取られちゃったみたいで、さみしくて、哀しかったんだよ。僕、きもち、わかる』

 きゅう

 抱きついて見あげたら、真っ赤になったヴィルが、頭をなでなでしてくれる。


「……ノィユが、そう、言う、なら」

「………………え、お兄さま、ノィユが何て言ってるか、解るんですか」

 エヴィの言葉にこくりと頷くヴィルに、トートが拍手してる。

「さすが伴侶!」

「く──!」

 くやしそうなエヴィに、前足を差しだしてみた。


「ぐぅうぅう──!」

 エヴィはうろたえている!


 きゅ

 前足を握って、頭をなでなでしてくれました。


「……うさぎなノィユは、お兄さまにくっついててもいい」

 真っ赤なエヴィが、拗ねたみたいに呟いた。


 ぷうぷう、うれしい声がこぼれて

「な、なんだこの可愛い生き物は──!」

 ぎゅうぎゅうエヴィに抱っこされたのを、ヴィルの腕がさらう。



「ノィユは、俺の、伴侶、だから」

 真っ赤な頬で宣言してくれた。









────────────

 読んでくださって、ありがとうございます!

 四葩様のリクエストで『魔法効果が かかってしまい、ノィユが1日もふもふになる』お話でした!

 楽しんでくださったら、とてもうれしいです。


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