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しゅっぱつです!
しおりを挟む「こ、こら! お兄さまの前だから!」
トートに腰に抱きつかれて、わたわたしてるエヴィが、ちょっとうれしそうにほっぺが赤い。かわいい。
「図書館では大変な目に遭ったね、エヴィ。僕が傍にいられなかったことが悔しくてならないよ。僕のかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい──」
「もういいから!」
真っ赤なエヴィが止めてる。自分のことを言われてるって解ってるみたいだよ。かわいい。
「かわいいかわいいかわいいかわいいエヴィに暴言を吐いて、ネメド王国で息ができると思わないでほしいな」
いつもやさしげなトートの目が、絶対零度だ。
「他国にまで追いかけて潰さないんだから、感謝してほしいよ」
さすがネァルガ家当主、こわい。
「そういうわけでかわいいかわいいかわいいかわいいエヴィを慰めて慰めて慰めますので、どうぞお義兄さまはバチルタ家領へ! ヴァデルザ家領のことはエヴィと一緒に僕も見ておきますから」
にっこり微笑むトートが、エヴィとふたりきりになりたいらしい。
察したのだろうヴィルはこくりと頷いた。
「わかった」
「お兄さま!」
「傷心、伴侶に、慰めて、もらうのが、いいと、思う」
ヴィルのごつごつのてのひらが、エヴィの頭をやさしく撫でる。
「ひどい、こと、言われても、殺さなかった。エヴィ、がんばった」
「お兄さま──!」
感動で抱きあってるふたりの後ろで、ノィユと両親がカタカタしてる。
エヴィに酷いことを言うと、ふつうは次の瞬間首が飛んでるみたいだよ!
ツーとホーがヴァデルザ家の馬車を牽いてバチルタ家領に連れてってくれることになりました!
「いやいやいや、僕たちの馬車、ふつーだから。追いつけないから!」
一緒に行こうと来てくれたニィハが青くなってる。
「皆で、乗ろう」
ヴィルの言葉に、エヴィ以外の皆があんぐりしてる。
「え、ちょっと待って?」
「ヴィル、ロダ、バチルタ家3人、ニィハ、ゾホ、メィファ、俺、9人も乗ったら動かないぞ?」
「馬が可哀想だ!」
「……!」
皆の抗議を受けたヴィルは、首を傾げる。
「魔物、いない。平地、ふつーに走る。ツー、ホー、しんどい?」
「ブルルルン!」
『は! 余裕だぜ!』みたいに鼻を鳴らしてくれるツーとホーが、かっこいー!
「…………え、この馬、魔物と闘えるの……?」
「いや違う、ふつうの馬じゃないんだ──!」
「……そうか、ヴァデルザか……」
「ヴァデルザだったな……」
「………………」
皆の顔が青い。
「あ、あの、ツーもホーもやさしいいい子です! でもほんとに9人もだいじょうぶ?」
心配するノィユに、ツーもホーもたてがみを揺らして頷いてくれた。
トートがエヴィとどうしてもどうしてもどうしても二人きりになりたいらしいので、エヴィはお留守番だよ。
「お兄さまに変なことさせないでよね。何かあったらすぐ飛んでくから!」
「エヴィさまとトートさまが安心していちゃいちゃしてくださるよう、ヴィルと一緒にがんばります!」
ぴしりと立ってお辞儀してみた。
両親も一緒に頭をさげてくれてる。
「しあわせに」
微笑んだヴィルに、真っ赤になったエヴィが泣きだしそうに瞳を潤ませる。
「お兄さまも!」
ほんのり赤くなったヴィルが頷いて、ノィユの手を握ってくれる。
とろけて笑うノィユを、トートが親指を立てて見送ってくれた。
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