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舞踏会編
はじめまして
しおりを挟む透夜とよい子の隠密団のおかげで、無事に帝宮に着きました!
「でっか!」
仰け反るノィユを、ヴィルが支えてくれる。やさしい。
リトたんと、ジゼさまとは、ここでいったんお別れみたいだよ。さみしい。
「また、すぐ、逢えゆ、でし!」
ぽふぽふしっぽで見送ってくれた。やさしい。
しかしネメド王国に帰ったら、リトたんいないんだよ? 萌えがなさすぎてしょんぼりしそうだよ。
「ネメド王国よりヴィル・ヴァデルザさま、ノィユ・バチルタさま、ロダさま、ご来臨!」
衛士が槍とネメド王国の旗を掲げてくれる。
風にひるがえる旗を彩るようにラッパが鳴って、魔法の光が降ってくる。
「わあ……!」
指先に燈った光が、弾けて消える。
「これはこれは」
ロダの唇も、ほころんだ。
「歓迎、ありが、とう」
ヴィルが微笑んで、きらきらな衛士長ルゼがネメド王国式の敬礼をしてくれた。
「勿体ないお言葉、ありがとうございます。どうぞこちらへ。
謁見の間で、陛下がお待ちです」
ぴょこんとノィユは跳びあがる。
「陛下! あ、あの、お招きくださったのは、帝太子ルァル殿下だと伺っていたのですが」
ルァル殿下もすごいけど、陛下よりは緊張しない気がする……!
そうっと聞いたノィユに、ルゼは微笑んだ。
「ネメド王国からの使者ですから、陛下がお逢いになるのは当然かと」
ひぃい!
ふつう、敵国の使者がいきなり謁見できたりしないよね!?
大陸最強らしいヴィルがいるのに──!
でもドディア帝国には透夜とよい子の隠密団がいる。ヴィルを押さえて、敵国の使者と自国の民を守れる自負があるからこそ、謁見が許されるのだろう。
「……すごいね」
ノィユのつぶやきに、ヴィルもロダもうなずいた。
「ザイア陛下が、敵対なんて無理って泣いちゃうの、よくわかる」
国境から帝都まで、ずっと見てきた。
農地を、治水を、民の暮らしを、民の笑顔を。
広大なのに辺境までよく統治された国だ。
学ぶところが、たくさんある。
敵対より、親善を。
願う気もちは、ザイア陛下もノィユも、きっとヴィルもロダもいっしょだ。
「がんばろうね、ヴィル!」
手をのばしたら、ごつごつの手で包んでくれる。
「ノィユと、一緒、なら」
はにかむように、笑ってくれる。
控えの間に通してくれたルゼが、うやうやしく手を胸にあてる。
所作のひとつひとつが、きらきらしてる。すごい。
絶対に攻略対象だと思うんだけど……! きらっきらだよ!
仰け反るノィユに、ルゼは微笑んだ。
「こちらでしばらくお待ちください」
退室したルゼの後を継ぐように従僕さんがお茶とお菓子を出してくれて、かぐわしい香りに目をほそめた。
「食べて、だいじょぶかな」
「わたくしが」
微笑んだロダが、鑑定魔法を使ってくれる。
「問題ございません」
よかった。毒殺とか、ドディア帝国がせこいことしないと思うけど、暗殺者がまぎれこんでて、毒を入れられて死亡で開戦とか、絶対だめだから!
食べて大丈夫なら、うれしい。
お菓子まで、きらっきらだよ!
「ロダさん、ありがとう!」
さっくさっくのクッキーに、ふわっふわのケーキに、ほっぺがとろける。
「ついてる、ノィユ」
くちびるをぬぐってくれるヴィルが、やさしくて、かっこよくてとろけます!
「きゃ──♡」
もだもだしてたら、呼ばれました。
……もうちょっとヴィルと、いちゃいちゃしたかったけれど。
帝王陛下に、謁見です!
どきどきしながら、ヴィルと手をつないで、ノィユは謁見の間に足を踏みいれた。
どれだけ金銀宝玉でビカビカなんだろうと思っていたけれど、大陸の覇権をにぎるとうたわれるドディア帝国の謁見の間には、樹々と花々が揺れていた。
ノィユは目をみはる。
室内だ。天井を確認した。
確かに屋内なのに、樹々が緑の葉を茂らせ、花々があまい香りをくゆらせる。
ぼうぜんと見つめたノィユは、気づいた。
あれは、北の地にしか咲かない花、あれは、南の砂の地にしか生えない樹、あの白いのは春の花、あの青いのは冬の花、すべてが一斉に咲き誇り、たえなる調和を奏でていた。
大陸を統べる帝国、その名にふさわしい謁見の間に、息をのむ。
ヴィルも、ロダも、樹々と花々の価値がわかったのだろう、目をまるくしている。
あざやかな細工の真白な玉座に腰かけているのは、驚くほど若くうるわしい青年だった。
「ようこそ、ドディア帝国へ」
微笑んで、立ちあがってくれた。
敵国の使者を迎えるために。
ノィユは、自然に頭がさがるという感覚を、はじめて味わった。
国力の差を誇示しない、声高に叫ばない、ギラギラの装飾なんて、ひとつもない、おなじところまで降りて、微笑んでくれる陛下に、頭をさげる。
「ネメド王国より参りました、ノィユ・バチルタにございます、ドディア帝王陛下」
「ヴィル・ヴァデルザ、です」
「ヴァデルザ家の執事ロダにございます、陛下」
皆で敬礼したあと、そっと顔をあげたノィユは、ふかく、こうべを垂れる。
「ネメド王国との親善を嘆願いたしたく、まかりこしました」
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