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舞踏会編
ちっちゃい
しおりを挟む天を揺るがすような豪快な羽ばたきの音とともに、ヴァデルザ家の馬車の前に、巨大な闇龍が降りてくる。
「わあ──!」
恐怖より、前世で夢見たファンタジーな龍とのご対面に大歓喜したノィユを、ヴィルが抱っこしてくれる。
「あぶない」
「そうですよ、ノィユおぼっちゃま。ちょっと間違ったら殺されますからね」
ロダも心配してくれました。
そうでした! やさしい龍さんの場合でも、ちょこっとした行き違いで死んじゃうほど、強いのでした!
ぷるぷるするノィユの頭を、ヴィルがなでなでしてくれる。
見あげる巨大な龍の背から、黒衣に身をつつみ、藍の髪の少年を抱っこした黒髪の少年と、きらめく月の髪をなびかせ、ふわふわもふもふの獣人の少年を抱っこした少年が降りてくる。
きゃ──!
耳と、しっぽが、真っ白で、ふあっふあだよ!
なにあの可愛い子!
生きてる!
動いてる!
生獣人、初めてみた──!
きゃ────!!
もだもだするノィユを、わたわたヴィルが抱っこしてくれる。
「あぶない」
そ、そうでした、敵国の人なのでした、大歓喜して抱きついたりしたら、国家間問題かも! ごめんなさい!
月の髪の少年と獣人の少年を守るように、音もなく降り立った少年たちがしずかに布陣を敷いた。
そのあまりの気配のなさと、動きの速さとなめらかさに、ヴィルが凛々しい眉をあげる。
「ばけもの、ちっちゃい」
ヴィルの呟きに同意するように、隣のロダも、あんぐりしてる。
ヴィルとロダの警戒が見たことないくらいすごかったから、ものすんごいガチムチな人々が来るんだと思ってたのに、皆ちっちゃい。
お子さまだよ!
びっくりして思わずヴィルにしがみつくノィユの前で、真っ白なふわふわの耳と、ぽふぽふのしっぽを揺らす、もふもふ獣人の少年を地におろした少年の月の髪が、ひるがえる。
「ドディア帝国筆頭侯爵ジェディス家次期当主、ジゼ・ディオ・ジェディスにございます」
あざやかに白い衣をひるがえし、手を胸に膝を折ってくれる。
とても洗練されてなめらかなそれは、ドディア帝国ではなく、ネメド王国の敬礼だ。
「ドディア帝国帝太子殿下のご下命により、ネメド王国ヴァデルザ領領主、ヴィル・ヴァデルザ殿と、その伴侶であられるバチルタ家次期当主ノィユ・バチルタ殿をお迎えにあがりました」
ジゼに続くように、すこし足を引きずりながら、もふもふ獣人の少年も、藍の髪の少年を地におろした闇の髪の少年も、他のちびっこたちも、皆でネメド王国の敬礼をしてくれる。
そのあまりのなめらかさと洗練に、ノィユは思わず拍手した。
「わあ! 練習してくださったんですか! ありがとうございます!」
ぽわぽわ熱い頬でヴィルの腕から降りて、ぺこりとお辞儀したノィユは、あわあわ戻ってから、やわらかに腕をひき、膝を折る。
「初めてお目にかかります、ネメド王国バチルタ家次期当主、ノィユ・バチルタにございます」
ザイア陛下に教えてもらったドディア帝国の敬礼を披露したノィユに、かすかに蒼の瞳を瞠ったジゼが、微笑んだ。
「ご配慮をありがとうございます、バチルタ殿」
「バチルタ家は皆バチルタなので、どうぞノィユと」
微笑むノィユに、ジゼの笑みが返る。
「ではノィユ殿、ならびに、ヴィル・ヴァデルザ殿、此度は我らの誤解で警鐘を鳴らしてしまったこと、また更なる誤解で戦端を開こうとしたことを、心よりお詫び申しあげます」
深く膝を折ってくれるジゼとともに、皆で膝を折ってくれる。
ちっちゃなもふもふ獣人の男の子がよろけて、さっと伸びたジゼの手が支えた。
「リト、無理するな」
「ジゼしゃま、ご、ごめなしぁ」
ふわふわの耳としっぽを、ぺしょんとしたリトが、うるうるの光の瞳で見あげてくれる。
ぎゃ──!
か──わ──い──い──!
抱きついたら、だめなのはわかってる!
ぷるぷるこらえるノィユの頭を、ヴィルのおっきな手がぽふぽふしてくれる。
「し、失礼、いたし、ましあ」
ジゼに支えてもらいながら、深く膝を折ってくれるリトに、ヴィルが首を振る。
「無理、しなくて、いい。やさしい、気もちを、ありがとう」
もしゃもしゃの髪と髭の向こうで、ヴィルが微笑む。
「ヴィル・ヴァデルザ、ネメド王国ヴァデルザ領、領主だ。こちらは、執事のロダ。
ドディア帝国の招待と、迎えに、感謝、する」
「きゃ──! ヴィル、かっこい──!」
今度はこらえきれずに抱きついてしまいました。
敵国の使節の前なのに!
ぽかんとした皆が、ほんのり微笑んで、ヴィルが笑って抱っこしてくれました。
3歳の暴挙ということで、おゆるしください。
中身30代ですけど!
見た目3歳なので!
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