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ちょっとだけ
しおりを挟む「どうどう、兄貴。
兄貴の頭の血管が切れたら、大変だからな。
俺に領地の経営なんて、絶対に無理だからな……!
ゆりちゃんにも、たぶん、むつかしいからな!」
ロドお兄ちゃんを、なぐさめてくれるサザお兄ちゃんが、自分のことも、僕のことも、大変よくわかってくれています。
「血管を大事にしてね、ロドお兄ちゃん!」
きゅっ。
両手を、にぎってみました。
「う、うん!
僕、ゆりちゃんのために、がんばるよ……!」
涙目のロドお兄ちゃんが、こくこくしてくれました。
3人の中で、唯一の頭脳担当なロドお兄ちゃんです。
ロベナ王国では優秀な人が家督を継ぐから、生まれた順番とかジェンダーとか全く何も関係ないんだけど、ロドア家の次期当主となれるのはロドお兄ちゃん一択なのです!
脳筋なサザお兄ちゃん(強い)と、ちっちゃい、よわよわ悪役令息な僕……!
あんぽんたんの子疑惑のある僕……!
きゃ──!
………………。
こ、このままではいけないんじゃ……!?
悪役令息の道まっしぐらなんじゃ……!?
………………………………。
……いけないと思うんだけど、治癒魔法は、魔法にとってもあこがれてるから、がんばろうと思えるんだけど、領地経営はできる気がしない……!
ちがう、がんばれる気さえしない……!
ごめんね、ロドお兄ちゃん……!
「お、応援は、がんばるからね!
僕にできることがあったら、何でも言ってね、ロドお兄ちゃん!」
きゅっ。
両手をにぎってみました。
ロドお兄ちゃんが、うるうるしてる。
「ゆりちゃんが存在してくれるだけで、お兄ちゃんは、がんばれるんだよ……!
ゆりちゃん天使──!」
ぎゅむぎゅむ僕を抱っこしてくれるロドお兄ちゃんが、天使だと思います!
「うふふふふ」
ちょっと闇っぽいけど。
「……そろそろ、ゆりさまに魔力を注いでもよろしいでしょうか」
カイが飽きてきちゃったよ!
ずっと見守ってくれていたカイのお顔が、無になってる……!
「よぅくよぅく気をつけて、ほんのちょこっとだけ注ぐのですぞ」
すっかり飽きていたらしい魔導士おじいちゃんが、うむうむしてる。
「かしこまりました」
微笑んだカイが、僕をそっと抱き寄せる。
「ゆりさま」
とろけるように甘い声で、名を呼んでくれる。
カイの香りに包まれて
カイのぬくもりに包まれて
首に、ちゅうされました。
ちゅ
あまやかに鳴る音に
うなじにふれる、ふわふわのくちびるに
頬が燃える。
めまいがする。
きゃ────!
もだもだする僕の首から、ひんやりした、やさしい魔力が、ほんのすこしずつ、やさしく、やさしく流れこむ。
──カイの魔力は、カイに似ている。
ひんやり冷たくて、ほんの小さな粒を混ぜるだけで世界で一番硬いダイアモンドさえも切り裂く力があるのに、やさしくつつみこんで癒してくれる水みたいだ。
人は、水がないと生きられない。
僕もきっと、カイがいてくれないと……
「ゆりさま、くるしくありませんか?」
やさしい声に、僕はそっとカイの胸に頬を寄せる。
「……きもちいー……」
ぽそりとこぼれてしまった声に、耳まで燃えた。
きゃ──!
は、はずかしい……!
「ゆりさま……!」
むちゅっと首に口づけて、魔力を注いでくれようとするカイの頭を
「おしまいですじゃ──!」
魔導士おじいちゃんが、ぽこぽこしてる。
「ぐぬぬぬぬぬ…………!」
ロドお兄ちゃんのかっこいい顔が、すんごいことになってる。
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