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えぇえ!
しおりを挟むよれよれだった僕は、カイの魔力と、のーすちゃんの魔力で、ふっかつしました──!
「なんだか、いつもより元気な感じがするのです」
次の日も僕の部屋まで様子を見に来てくれた魔導士おじいちゃんにお話したら、ちょっと首をかしげたおじいちゃんが、長いおひげをしごいた。
「ふむふむ。ユィリおぼっちゃまは、魔力の修練を全く行っていなかったので、体内へ取り込める魔素が極端に少ないのでしょう。
この世界で、すこやかに生きるためには、適度に魔素を体内に取りこむことが大切なのやもしれません」
「おぉう」
おさぼりは、健康にも、よくないんだね!
僕、しょんぼり。
「その足りなかった魔素が、カイとノゥス殿下の魔力で補充された。体の中で魔素が正常に巡るようになってきたのかもしれませんのう」
「おぉ!」
「これから頑張って修練を続ければ、体内にちょこっと魔素を取りこめるようになるやもしれません」
にっこり笑ってくれる、おじいちゃんに、きゅっと僕は両手をにぎる。
「僕、がんばります!」
「よいことですじゃ。結果はついてこないこともありますがの、ざんねんな結果のほうが多いですがの、それでも何かを一生懸命するというのは、ただそれだけで……いや、それこそが、素晴らしいことですからのう」
しわのお手々で頭をなでなでしてくれるおじいちゃんが、やさしいです。
「ああ、では魔力の感覚をつかむためにも、わたくしが魔力補給のお手伝いを」
とろけるように、あまい笑みを浮かべるカイに、おじいちゃんが、もしゃもしゃの白い眉毛をつりあげた。
「だめに決まっとるじゃろうぅうウ──!
またユィリおぼっちゃまを、たっぷたっぷにする気かぁあア──!」
魔導士おじいちゃんに全力でしかられたカイが、しょんもりしてる。
どんな顔をしても、どんな言動をしても、かっこよすぎるカイ、すごい!
「ではちょっとずつ、お一人で魔素の修練を頑張りましょうかの。
ノゥス殿下に手伝ってもらうのも、だめ! ですからの! 絶対に──!」
きびしいお顔をして注意してくれるおじいちゃんに、僕はこっくりうなずいた。
のーすちゃん、忙しいからね。
まあまあ遠いところに住んでるからね。
そんなに会える機会もないと思うよ。
注意するのは、とってもやさしくて、つい僕の修練を手伝ってくれようとするカイだけかな!
「じゃあ僕、ひとりで頑張ってみますね!」
両手をにぎった僕は、世界の魔素を身体に取りこむように、いめーじ!
この間カイと、くーちゃんが魔力を注いでくれて、治癒魔法が使えたのは会心の一撃だったと思うんだ。
あの感覚。
僕の身体の中にある魔力と世界の魔素を融合させて、僕の身体を巡らせる、あの感覚をなぞるように僕は意識を集中させる。
「……おぉ……!?」
なんかちょこっと上手になってきた気がするよ!
「おぉおぉ、ほんのちょこっと、上達されましたのう!
よきかな」
魔導士おじいちゃんが、拍手してくれました。
「僕、がんばったよ、カイ!」
「素晴らしいです、ユィリおぼっちゃま!」
涙ぐみながらカイが、ぎゅうぎゅう抱っこしてくれました。
「えへへへへ」
すぐにほめてもらいたい僕。
悪役令息ムーブが止まらない僕……!
……ちょっと危険……?
どきどきしてたら、お勉強中の僕の部屋に、従僕さんが来てくれました。
「ユィリおぼっちゃまに、お見舞いが」
「……え? どなた?」
おともだちなんて、ひとりもいないよ!
首をかしげる僕に、従僕さんが、もごもごつぶやく。
「ノゥス殿下と、クゥス殿下と、第二王配殿下と…………王陛下です…………」
……──!?!???
きゃ────!
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