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変わった?
しおりを挟む「…………え…………」
変わったって、僕……?
悪役令息じゃなくなりたいから、いいことなのかな……?
で、でも突然人格が変わった不審者って、やばくない……?
それを国王陛下に突っこまれるってどうなの──!?
きゃ──!
「……え、えと、僕、ちょっと記憶が混乱してて……」
冷や汗でだらだらの僕をかばうようにカイが前に出てくれる。
「畏れながら申しあげます、陛下。ゆりさまは、あなた様のご子息の一方的な伴侶(予定)契約破棄のせいで衝撃を受けられ昏倒され、1週間もの間、昏睡され、記憶の混濁まで起こされたのです。
セゥス殿下ご本人から契約を破棄したくなかったと、うかがっております。
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圧倒的な被害者である、ゆりさまに向かって、あまりにも心ないお言葉──」
『ちょっと、しんでみる……?』
カイの心の声が聞こえた気がしたよ……!
きゃ──!
「陛下はお見舞いと称され、当家にケンカを売りにいらっしゃったのですかな?」
おかあさんの顔から笑みが消えて、ものすんごく、いかめしいお顔に──!
きゃ──!
「売られたケンカは喜んで買いましょう」
ゴゴゴゴゴゴ──!
いつもやさしいおとうさんの目が切れあがって、地震が──!
きゃ──!
「ゆりちゃんを傷つけるものは許さない──!」
ロドお兄ちゃんの背中から、ものすごい闇が──!
ま、待って、ロドお兄ちゃん、ブラコンなの──!?
……え……? 今更? だ、だってこれ、僕を悪役令息にさせるための強制力なんじゃ……
………………強制力なだけで、ちっとも気持ちがなかったら、僕、泣いちゃう……!
「ゆりちゃんを泣かせるなど、万死に値する──!」
サザお兄ちゃんが、剣を抜いちゃったよ──!
きゃ──!
「……え、いや、俺、『変わったな』って言っただけ──」
陛下の凛々しい頬が、ひくひくしてる。
「問答無用!」
切りかかろうとするサザお兄ちゃんを止めたのは、僕です──!
「待って待って待って! 僕、びっくりしただけだから! だいじょうぶだから!」
僕が割りこむと、へにゃんとした家族みんなが止まってくれたよ。
よかった……!
「……いや、母上の言動は、あまりにも、ゆーりに対する配慮が欠けていると思う」
待って、のーすちゃんが、おかあさんな陛下を、さらに窮地に……!
「おかーたま、ぼくの、もっちもっちに、ひどいぃい──!」
くーちゃんが、ギャン泣きだよ!
「うちの天使たちがユィリちゃんに伴侶(予定)になってくれませんかってお願いに来たのに、どうして一人でケンカ売ってるの……?」
ノクさまの背中からも闇が噴いてる──!
「あ、あの、僕、だいじょうぶですから──!」
あわあわ叫ぶ僕を見つめた陛下が、うなだれる。
「……ほんとうに、すまなかった。
きみに、謝りたくて、来たんだ」
陛下が胸に手をあてる。
飛びあがった僕は、ぼうぜんと国の頂点に君臨する人を見つめた。
ロベナ王国の国王として、個人に対して謝罪することは、あってはならない。
だから王宮に呼びつけるんじゃなくて、個人として、僕の家までお見舞いに来てくれたんだ。
──ただ僕に、謝ってくれるために。
にじむ涙で揺れる視界で、僕も胸に手をあてる。
「伴侶(予定)契約の破棄は、至らなかった僕のせいです。
僕の家まで来てくださったことに、王陛下のおやさしいお言葉に、心より感謝申しあげます」
涙の瞳で笑ったら、陛下の陽の瞳がぼうぜんと見開かれた。
「……ユィリ、ほんとうに、変わったな。……天使みたいだ」
ぽつりと落ちたつぶやきに
「はぁあアアアア──!?!?!
ゆりちゃんは生まれる前からずっと天使なんですけど──!」
家族みんな(カイ含む)が、ぶちぎれてる。
きゃ──!
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