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ずっと
しおりを挟む鉄は、熱いうちに打つのです!
……いや、ちょっと僕は打ったことないけど。
打てる人って、すごいと思うけど。
ちがった!
つらいことや、いやなこと、したくないこと、めんどくちゃいことは、さっさとしてしまうに限るのです!
だって、いつかはしなきゃいけないんだよ。
『……あ~……謝りに行かないと~……』って、ぐしぐししてる暇があるなら、速攻、謝りにゆくのです!
そのためには!
「お熱を下げるのです!」
ふにににに……!
こういう時こそ、治癒魔法の出番だよ!
ちょこっとしたすり傷しか治せないのは、わかってる。
それでも、ちょこっとは、お熱が下がる助けになってくれるかも。
カイからもらった水の魔力と、のーすちゃんからもらった光の魔力、世界に満ちる魔素と、ちょこっとある僕の魔力を身体のなかに巡らせる。
ひかりの脈が、指を、腕を、胸を、足を、巡ってゆく。
ふうわり、僕の身体が輝いた気がした。
やわらかに、緑の光が舞いあがる。
「ユィリおぼっちゃま……!?」
あわてたようにカイが駆けつけてくれて、抱っこしてくれようとするのを、ちっちゃな手をあげて止める。
『だいじょうぶ』
唇だけを動かした。
僕の身体を、カイの魔力が、のーすちゃんの魔力が、世界の魔素が、巡ってゆく。
やさしい力が、指先まで満ちてくる。
ふしぎな感覚だった。
ほんのりあたたかい……ひんやり冷たい……? やさしい力が僕の身体の奥からきらめいて、舞いあがる緑の光につつまれる。
泣いたこと
傷ついたこと
びっくりしたこと
うれしいことも
僕の身体と心に負担をかけつづけたすべてが、やさしく癒されてゆくようだった。
ちいさな、ちいさな、緑のひかり。
ないと思っていた、僕の魔力。
ないと思っていた、僕の才能。
ちいさくて、ちいさくて、見えないくらいでも。
それでも、ずっと、そこにいて。
僕が、がんばる日を、ずっと、ずっと、待っていてくれたんだね。
緑の光につつまれた僕は、知らない間に眠っていたらしい。
起きたら、カイが泣きだしそうな瞳で、のぞきこんでくれた。
「ゆりさま、お加減はいかがですか……!」
瞬いた僕は、そうっと身体を起こしてみた。
「……おぉ……?」
からだが、かるい……?
お熱が下がっているっぽいよ!
あの熱が出てる時の、関節が痛くて、だるくて『……うぅうぅう……』っていう感じがなくなってる!
「僕、お熱下がった?」
こつんと、おでこをためらいなくくっつけてくれるカイの、かっこよすぎるかんばせが、近すぎます……!
きゃ──!
「……確かに、お熱は下がられたようですね」
心配そうに目をのぞきこんでくれるカイの、かっこよすぎる顔と、吐息がふれるほどの近さのくちびるに、目がくぎづけなんですけど……!
きゃ──!
火照る僕の頬に、カイの凛々しい眉がさがる。
「やはりまだ、お熱があられるようです」
「ち、ちがうの、これは、かっこいいカイが、近すぎるから……!」
あわあわ離れようとしたら、抱き寄せられる。
「……どきどき、する……?」
とろけるようなあまい声で、ささやかないでください……!
きゃ──!
耳が、とけそうだよ……!
ぎゅうぅうぅ
離れるどころか、カイの胸に顔をうずめた僕は、カイの涼やかなのに、ほのかにあまい香りで胸を満たす。
僕の髪をなでてくれる長い指が、いつものとおりやさしいです。
「……あ、あの、僕また、たくさん寝てた……?」
「今回は1日くらいです。
でもゆりさま、ご無理をなさりすぎです。この間から、倒れられたのはこれでもう3回目です。
わたくしの心の臓が壊れます」
ぎゅう
抱きしめてくれるカイに、抱きついた。
「目が覚めたらね、カイがいてくれるの、めちゃくちゃうれしい」
ぽわぽわ熱い頬で笑う。
「ゆりさま……!」
ぎゅむぎゅむカイが抱っこしてくれた瞬間
「ゆりちゃん、目が覚めたんだね、よかった──!」
爆速で扉を開けるロドお兄ちゃんが、今日もふしぎです。
「ロドお兄ちゃん、僕、学校行きたい!」
手をあげる僕に
「…………えぇえぇええ…………」
お兄ちゃんのテンションが低すぎる件について!
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