悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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よわよわ

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「ほんとうに、ほんとうに、ごめんなさい!
 教科書、弁償します!
 慰謝料とか、できる限りのことをさせてもらいます!
 あ、あの、出世払いの分割払いでお願いしてもいいですか……!」

 よわよわ悪役令息の僕です。

 うるうるの涙目な僕に、きょとんとしたアーシェは、澄んだ鈴のようにきらきらした声で笑った。

「じゃあ今度、ケーキをおごってください」

「喜んで!」

 それくらいなら、ロドお兄ちゃんがくれる、お小遣いでなんとかなるかも!

 両手をあげた僕に、アーシェのぴんくの瞳が見開かれる。

 周りの人たちが(カイ含む)不思議そうに首をかしげた。


「……けーき……?」


 ……──!?!?!!

 やらかした……!?


 あわあわする僕を、アーシェのぴんくの瞳が凝視する。

「…………もしかして……転生者……?」

 ちいさな、ちいさな声だった。


「え、えと、あの……」


 ………………これって、打ち明けてもいいものなのかな……?


 僕、めちゃくちゃオンライン小説を読んでたんだよ。

 他のお話を読みすぎちゃって『鉄板BL』がどんなお話なのか忘れちゃうくらい読んだんだよ。

 いろんな主人公を見てきたよ。

 転生者って打ち明けた途端に、豹変しちゃう主人公とか見たことある……!

 すんごい怖い性格になったり、悪役も真っ青な感じになったり、恐ろしいお話をいっぱい見たよ……!


 ど、どどどどどどどうしよう────!

 あわあわする僕をかばうように、カイが前に出てくれる。


「誠に申しわけございませんが、ユィリおぼっちゃまは病みあがりでいらっしゃいます。先日昏睡が明けられたばかりなのです。記憶も混濁があられるままでございます。
 それでもあなたに謝りたいと、病床を押して登校なさいました。
 本日はこの辺りで失礼させていただいてもよろしいでしょうか」

 流れるような言葉と、僕をかばってくれるカイに、ぴんくの目が見開かれて止まる。


「……何、この、めちゃくちゃかっこいい人……!」

 ぽかんとしてるアーシェと、顔の趣味が一緒です!

 しばらく沈黙したアーシェが、ささやいた。


「もしかして、異世界転生あるあるで、頭を打って前世の記憶がよみがえっちゃった?
 それで突然、自分の所業を反省して、急に僕に謝りに来てくれたの……?」


 う、うぅ打ちあけてもいいものなのかな……!?

 どどどどどどどうしよう──!


 決められない、よわよわな僕を守るように、カイが背にかばってくれました。


「誠に申しわけございませんが、ユィリおぼっちゃまの体調が、もう限界のようです。
 本日はこれで失礼いたします」

 しゃっと、僕をおひめさま抱っこしてくれようとするカイを、アーシェの手が止める。


「謝りに来てくれた君を信じるなら、僕はたぶん、敵じゃないよ」

 静かな声だった。

 僕は、抱っこしようとしてくれるカイの腕のなかから、おそるおそるアーシェを見あげる。


「……ほ、ほんとうに……?」

 ちいさな、ちいさな声に、アーシェが笑う。


「僕にケーキおごってくれるんでしょ」

 ぴょこんと僕は飛びあがる。


「う、うん!」

 ちっちゃな両手をにぎって、笑った。






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