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がんばるよ
しおりを挟むじっと僕は筋肉さんを観察してみた。
つやつやしてる──!
もりもりしてる──!
すごい!
じゃなかった!
ていねいに筋肉を……身体を見回してみたけれど、眠り王子には、セゥスさまやトトラみたいに、真っ暗なもやが見えたりしない。
ただ、やすらかに眠っているように見える。
呼吸も心音も脈も問題ないみたいだ。
だからこの世界の医士も、どこがわるいのか、わからなかったのだろう。
元第一王子の寝台のそばに座った僕は、そっとたくましい手をにぎる。
目を閉じた僕は、僕の体の中にある魔力と、世界に満ちる魔素を混ぜて、ちいさなちいさな緑のひかりをつくってゆく。
眠る王子の魔力を邪魔しないくらい、僕の魔力はちいさいから。
きっと、そうっと、入りこめる。
つないだ手から、そっと、そっと、魔力を流した。
痛くないように。
苦しくないように。
のーすちゃんが、してくれたみたいに。
僕のちいさな緑のひかりが、そうっと王子の指に入った。
ぴくりと、無反応だった王子がふるえる。
「お兄ちゃん!?」
声をあげたトトラを止めてくれたのは、カイだった。
「ユィリおぼっちゃまが大変集中なさっています。
大変大変大変めずらしいことです。
どうか、ゆりさまのお邪魔をなさらないでください」
………………。
めずらしいに、大変が3回もついてたんだけど!
気になって集中が途切れるんだけど──!
助けてくれてるのか、邪魔してくれてるのか謎なカイ──!
ちょっとしょんぼりしつつ、僕はふたたび意識を集中した。
ちいさな、ちいさな緑のひかりを、王子の指先から、そうっと、そうっと、痛くないように気をつけながら、王子の身体を巡らせてゆく。
王子の魔力を邪魔しないように。
そっと、そっと、寄り添うように。
目を閉じた僕の視界が、王子の身体の魔脈になる。
きらきらする陽のひかり、あぁ、のーすちゃんと同じ、セゥスさまと同じ、光の魔力だ。
……13年そばにいた僕がいちばんよく知ってる、いちばん僕になじみの深い、光の魔力だ。
──いや、ここで、『炎とか地とか闇の魔力の方が、なじみ深いだろ』というつっこみは、聞こえないのです──!
ほら、気もちね。
『炎や地や闇を知りたい!』っていう気もちと、『光の魔力を知りたい、そばにいたい』っていう気もちと比べると、わかってくれるよね……!
──うぅ、なんか自分で自分をえぐってる気がする……
きゃ──!
「ゆーり、だいじょうぶか?
病みあがりなんだ、無理するな」
のーすちゃんの声に意識を取り戻した僕は、あわあわ魔力探索を再開する。
外傷がないなら、身体の中の病気か、魔脈に問題があると思うんだよね。
病気なら、真っ暗なもやが見えると思うんだけど、見えないから。
魔脈に問題があるのかなって──
「あぅうぅう……」
よわよわ悪役令息な僕の魔力が切れました……!
え、本気で魔力がちょっぴりなんですけど……!
魔力探索さえできないなんて……!
しょんぼりする僕のお背なを、トトラが、ぽんぽんしてくれました。
「魔力が少なすぎてびっくりしたけど、がんばってくれてありがとう!
お兄ちゃんも、きっと喜んでるよ!」
トトラはやっぱり、真実を告げて、ちょっと僕をおこにしちゃう天才みたいです?
「僕ちょっと魔力が少ないみたいで、また回復した明日やってみてもいいかな?」
ちょこっとおこになりながら聞いてみました。
「もちろんだよ、ありがとう!」
トトラが両手で僕の手をにぎってくれました。
わるぎは、ちっともないみたいです?
「魔力なら、わたくしが補充しましょう」
カイが、とろけるように笑ってくれる。
「じゃあ、俺も」
のーすちゃんが、やさしく肩を抱いてくれました。
ただ単に魔力補充のためとは重々わかってるけど、それでも両手に花とか、おかしくない……??
僕、ちっちゃいだいふくな悪役令息だよ?
主人公は、向こうの可愛いアーシェくんです!
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ずっと読んでくださって、ほんとうに、ありがとうございます!
ちょっと肩が痛くなったので、無理はひかえめにと(笑)ずうっとストック0なユィリが1日1回更新になったのですが、みなさま、きんにくひめ、おすきですか??(笑)
びっくりなことに、一瞬だと思うのですが24hポイント1位、だいふくユィリが!(笑)
返り咲いたのは初めて?(笑)かもしれなくて、ユィリと皆といっしょに、めちゃくちゃうれしいです、ありがとうございます!
お気に入り、いいね、エール、ご感想のおひとつおひとつが、応援してくださるお気もちが、とても、とてもうれしいです。
心から、ありがとうございます!
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