悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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うなれ!

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 あわあわしつつ、魔力を補給してもらった僕は、手をあげる。

「ありがとう! もう大丈夫! 再開します!」

「……もう?」

 つまらなそうにとがるセゥスのくちびるに、ちゅうしたくなって、こまる。


 熱い頬で、僕は魔力を集中する。


「ふににににに──!」

 全力で、魔力の糸を、最高速度で、最高圧力で、同じところに叩きつける。


 カツン──!

 カツン──!

 カツン──!

 弾かれていたのが

 コツ……!

 グ……!

 ぐぅ──!

「おぉお! ちょっと入るようになってきたよ!」

 しかし魔力は、カラカラです!



「魔力補給お願いします!」

 目を明けて手をあげる僕に、カイが微笑んでくれる。

「かしこまりました、ユィリおぼっちゃま」

「待って、そんなにつづけて魔力を補給したら──!」

 僕を心配してくれるセゥスに、微笑む。

「僕はもう、よわよわじゃなくなるんだ」

 僕はそっと、息を吸う。


「あなたに、ふさわしくなるために」


 ささやいて、ちいさく笑った。


「でも、きんにくひめのことは、僕の欲じゃなくて、僕の真心でがんばるから!」

 むん!

 力こぶを盛りあげてみた!


 ぽよん

 なんか、ぷにぷにしてた……


「……ぶ……!」

 ふきだすトトラを、セゥスさまと、のーすちゃんと、カイとサザお兄ちゃんが、ひかりの速さでぽこってる。


 ちょっと鼻をすすった僕は、がんばるのです!

「魔力の補給をお願いします!」

 がんばりたくても、補給してもらわないと、タンクがカラカラな僕。

 せつない……!


「苦しくなったら、すぐにやめて。
 ラディのためにユィリが倒れるなんて、絶対、絶対、絶対、絶対、だめだから」

 泣きだしそうなセゥスに、抱きしめられる。

 広い背に腕をまわした僕は、セゥスの香りを吸いこんで、笑う。


「セゥスさまを、泣かせないように、がんばるね」

「そうして。ほんとに泣くから。また胃の腑に穴が開くから」

 ぎゅうぎゅう僕を抱っこしてくれるセゥスの肩が、ふるえてる。


「ユィリおぼっちゃま、無理なさらないでくださいね」

「ゆりちゃん、無理は絶対、だめだから!」

「苦しくなったら、すぐに言うんだぞ、ゆーり」

「倒れそうになる前に止めるんだよ」

 カイが、サザお兄ちゃんが、のーすちゃんが、アーシェくんが、心配してくれる。


「……お兄ちゃんは、きっと、ユィリくんを倒れさせてまで、たすかりたいって言わないよ。……だから、無理、しないで」

 涙のにじむ瞳で、トトラが微笑んでくれる。



 悪役令息な僕には、ともだちなんて、ひとりもいなくて、僕のことを心配してくれる人なんて、ひとりもいないと思っていた。


 心配をかけてしまうのは、とても心ぐるしいけれど。

 とびきり、うれしい。



「えへへ。ありがとう。無理しないように、がんばるね。
 魔力をお願いします!」

 カイと、セゥスさまが、僕のうなじに口づけてくれる。

 やさしい魔力が、からっぽな僕を満たしてくれる。


「いきます!」

 ほそい、ほそい、糸みたいな魔力でも。


 何十回、何百回、何千回と全く同じところに当てれば、きっと。


 ザシュ──!


「開いた──!」

 ちいさな、ちいさな僕の魔力が、きんにくひめの大きなコブに、ちいさな、ちいさな穴を開けた。










────────────────


 ずっと読んでくださって、ほんとうにありがとうございます!

 がんばるユィリの魔法の動画をつくろうと思ったら、蚊取り線香みたいになって(笑)きんにくひめが、ぜんぜんきんにくひめじゃなくなったのですが……!(笑)

 もしよかったら、プロフのwebサイトからどうぞです!




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