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第一声!
しおりを挟む…………うぅん?
ちょっと待ってね。
僕、きんにくひめの王子さまじゃないよね。
よわよわ悪役令息なんだけど……! 今は!
これから、つよつよ元悪役令息になる予定だけど──!
僕は、セゥスさまのものだから。
ごめんね、きんにくひめ!
じゃなかった!
おひめさまを目覚めさせるのは、運命の王子じゃないの??
……僕でいいのかな……?
だいじょぶ?
もしも、万一、僕のちっちゃな治癒魔法が奇跡を起こして、きんにくひめが目覚めて
『ああ、きみが救ってくれたんだね! この筋肉こそ、運命だ! 運命の王子! 伴侶になろう!』とかならない……??
た、たいへん……!
僕は、セゥスさまと伴侶に……!
きゃ──!
もだもだしたら、セゥスさまが何かを察したらしく、背中から抱っこしてくれる。やさしい。
「ユィリ、だいじょうぶ?」
やさしい声に、こくこくうなずいた僕は、覚醒した!
そうだ、べつに治癒士が、運命の王子じゃなくていいよね?
運命の人が多過ぎて、治癒士さん困っちゃうよね!
アーシェくん、たいへん!
というわけで、だいじょぶそうなので、続行です!
いめーじ!
こう、お団子に刺さった串が、ぶっとくぶっとくなるイメージ!
お団子がちっちゃくなって、串が太くなる、いめーじ!
お団子の欠片が、魔脈に流れないように、串が吸い取ってゆく、いめーじ!
「ふにににに──!」
がんばる僕の魔力が、手のひらからあふれてく。
かったい、かったいのに開いた穴が、ちょっとずつ、ちょっとずつ、僕の魔力に食べられるように広がってゆく。
「……はにゃー……ちょっと、きゅーけい……」
「ユィリ、とってもがんばったよ。えらいえらい」
セゥスさまが、抱っこして、なでなでしてくれる。
しあわせすぎて、こわい……!
きゃ──♡
「僕もお手伝いできたらいいのに、ごめんね」
眉をさげるアーシェくんに、首をふった。
「僕のしてるの、まったく、全然意味がないかもしれないけれど、でもがんばってみるね!」
カイとセゥスさまに魔力を何度も補給してもらいつつ、かったいコブが、ちっちゃくなるまで、がんばりました!
コブがちっちゃくなったら、きんにくひめの魔力が流れようとして、コブを流してしまいそうになってる……!
「あー! 待って待って待って! コブの欠片を流しちゃったら、また詰まっちゃう!
きんにくひめの魔脈の流れを、一時的に止めるには──!?」
叫んだ僕に、のーすちゃんが、カッと陽の瞳を見開いた。
「衝撃だ! トトラ、ちゅうしろ──!」
のーすちゃんに叫ばれたトトラが
「むちゅう──!」
ちゅうしてる……!
きゃ──!
「今だ、ゆーり!」
のーすちゃんが仕切ってくれてる!
ありがとう!
僕、がんばるよ!
「ふににににぃいいいい──!」
僕の魔力、最大出力──!
トトラのちゅうに、びっくりして流れが止まってくれたみたいな、きんにくひめの魔脈の中の、かったいのを包みこむように、膨張する──!
あんなにかったくて、カツンカツンしていたのが、僕の魔力につつまれて、やさしく溶けてゆく。
最後の力を振り絞って、かったいのに塞がれて圧迫されていた魔脈の壁を、治癒の緑のひかりでやさしくなでた。
「今までよく耐えてくれて、ありがとうね」
きらきら、やさしい光が、舞いあがる。
「よし、撤退……!」
糸みたいに戻った僕の魔力を引きあげる。
きんにくひめの魔力が、脈打った。
輝くひかりが、舞いあがる。
ずっと堰き止められていた、ラディの魔力がめぐりはじめる。
長い陽のまつげが、かすかに動いた。
「お兄ちゃん……!」
むちゅう……!
トトラのちゅうが、止まらない……!
きんにくひめの、まぶたが、ゆうるり、ひらいてく。
「……トトラ……お兄ちゃんが寝てる間に、ちゅうするのを止めなさい……」
ひと月ぶりに起きた、きんにくひめが、疲れてる──!
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