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いやいやいや
しおりを挟む「…………え…………いやいやいや、海って……!」
あわあわする僕に、かっこいい青年が笑う。
「見る?
あんまり身を乗りだすと落ちるけど。
ロベナにもラゼンにも海がないから、めずらしいでしょう」
そうだよ!
ロベナ王国もラゼン王国も内陸にあって、海なんてないんだよ。
初めて見たよ!
前世の記憶には、海あります。
波打ち際で、ひとりでぱちゃぱちゃして『きゃー♡ つめたーい♡』ひとりでやって、ひとりで貝殻を拾った記憶はあります……!
水着で彼氏と、いちゃいちゃした記憶は、ない──!
さみしいことを思い出した……!
「ど、どどどどどどどうやって、こんなところに……!
っていうか、僕ふつうに寝ただけなんだけど──!」
こんな状況、ないよね!?
楽しそうに髪をかきあげた青年が、かがむ。
つやつやの闇の髪が、僕の前で、さらりと流れた。
「知りたい?」
「ぜひ!」
うなずいたら、薄めの唇が、吊りあがる。
「素直だなあ。
敵とお話をする時は、もうちょっと警戒して、きちんと取引しないと。
損しちゃうよ」
にっこり笑う海の瞳が、全く全然笑っていない。
──敵……!
……こわい……!
たすけて、カイ──!
セゥスさま……!
のーすちゃん……!
サザお兄ちゃん……!
思ってしまった僕は、間違いない。
──よわよわ悪役令息だ。
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そう、立派な主人公のように!
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どんなに自分が、いるのか、いないのかさえわからない、モブみたいに思えても。
どんなに自分の人生が情けなく、つまらなく思えても。
……それでも自分の人生の主人公は、いつだって僕だ。
僕の今までは、変えられない。
でも僕のこれからは、きっと僕が──僕だけが、変えられる……!
ふるえる手を、ぎゅっと、にぎる。
顔を、あげる。
「ど、どうして僕を、こんなところに連れてきたの……?」
頑張ってだした声は、ふるえてた。
涙目だよ。
うるうるだよ。
泣いちゃいそうだよ。
でもちゃんと僕、お家に帰るからね!
カイに、セゥスさまに、のーすちゃんに、家族のみんなに『僕、帰ってきたよ!』ひとりで立派に言えるようになるからね……!
ぷるぷるな拳の僕に、青年は告げる。
「君をさらう理由なんて、ひとつしかないでしょう」
「……もっちもっち……?」
「違う──!」
つっこみが素早いです。
「……誰か、くるしい人がいる……?」
そうっと聞いた僕の前で、青年の少し長い髪が潮風に揺れる。
「……弟の命が、危ない」
絶望の声だった。
「手荒な手段を取ったことは謝る。
でも正式に交渉して、君を派遣してもらえるとは思えない。
君は国が秘匿するだろう、稀代の力を持つ治癒士だ。
俺たちのような小さな島国が懇願したって、莫大な金を請求されるか、不利な条件で通商条約を結ばされるかだ。
……そんな交渉をしている間に、弟は……!」
嘆きと、痛み、くるしみの声だ。
僕へと向けられたのは、きっと、最後の希望だ。
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ずっと読んでくださって、ほんとうにありがとうございます!
ご心配おかけしてごめんなさい!
ユィリは無事です!
昨日書くの忘れて、今日もちょっと忘れてて遅れましたが!(笑)おじいちゃんとユィリの動画ができました!(笑)
もしよかったら、プロフのwebサイトからどうぞです!
どうやってユィリをさらったのかは、ちょっとしばらく秘密かもしれません? たぶん?(笑)
無事なので、ご心配なく、楽しんでくださったらとてもうれしいですー!
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